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スタートアップの企業価値=将来の期待値ー「日経NEXTユニコーン」の読み方

2019年11月3日に「日経NEXTユニコーン」が発表されました

急成長を目指す新興企業をスタートアップと呼び、スタートアップの中でも時価総額が10億ドル(約1,100億円)を超えている企業を「ユニコーン」と呼びます(本来、存在しないはずのため)。ユニコーンに乏しい日本では、「ユニコーン」候補を「NEXTユニコーン」と呼びます。

「日経NEXTユニコーン」のランキングは、2017年、2018年に次ぐ3回目ですが、スタートアップの企業価値の仕組みはまだあまり知られていません。

そこで、今回の「フィンテックに詳しくなるノート」では、「日経NEXTユニコーン」のランキングを読む際に注意するべきポイントを解説します。

(1)ランキングに載っていない優良スタートアップもある

私がCEOを務めるウェルスナビは、今回は7位にランキングされました。新しい産業を創るべく日夜努力を重ねているスタートアップの一員として選ばれ、とてもうれしく思います。

その一方で、「実力値よりランキングが高く出たな」というのが私自身の肌感覚でもあります。

株価が日々変動する上場企業とは異なり、スタートアップの企業価値は資金調達を行う時にだけ変動します。企業価値は、資金を必要とするスタートアップと、スタートアップに出資する投資家(ベンチャーキャピタルなど)の間との交渉によって決まるからです。

このため、例えば、創業当初から黒字で、資金調達を行う必要がなければ、そももそも企業価値は算定されません。また、手元の資金が十分で資金調達の必要がなければ、たとえ事業が急成長していても、企業価値は増えません。

このため、「日経NEXTユニコーン」のランキングに載っていない優良スタートアップや、事業が急成長しているのに企業価値が低いままになっているスタートアップがある印象です。

(2)スタートアップの企業価値は、上場企業の企業価値とそのまま比べられない

赤字覚悟で先行投資を続けて急成長していくスタートアップには、当然、リスクがあります。そこで、スタートアップへの投資では、二重、三重に投資家の権利を保護する「優先株」が使われています。

例えば、ある投資家が100億円の企業価値で投資したスタートアップが1年後に100億円で大手企業に買収されたとき、企業価値は100億円のままですが、投資家にはそれなりのリターンが出るような仕組みになっていたりします。

このため、スタートアップと上場企業の企業価値を単純に比較することはできません。

(3)スタートアップの企業価値=将来への期待値

「日経NEXTユニコーン」のランキングは、客観性を担保するために、直近の資金調達で発行された株式(多くの場合、優先株)の価格から企業価値を算出しています。

しかしそこには、上記(1)(2)の通り、スタートアップならではの特殊性が潜んでいることに注意が必要です。

スタートアップ経営者としては、企業価値はあくまでも、私たちウェルスナビのチームのミッションやビジョンの実現に向けた期待の大きさだと受け止めています。

「スタートアップの企業価値とは期待である」というのは、ファイナンスの観点からも正しい認識です。期待が大きくなれば企業価値も高まります。また、過剰すぎる期待は禁物です。

スタートアップ経営者としては、大きな期待に応え、日本を担う新しい産業を作り出していけるよう、一歩一歩、着実に歩んでいく覚悟です。長期的な目線で見守って頂けたら幸いです。

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