見出し画像

他者の労働を軽視する送料無料は、自分にかえってくる

 毎日ろくなニュースがないが、さらに不快になるのは、一般人の意識の低さが露呈する問題である。例えば送料無料だ。担い手不足で物流が滞る2024年問題を前に、政府もやっと本腰を入れて対策を論じ始めた。

 課題の一つが、ネット通販における送料無料という表示である。以前から、配送を担う現場から疑問の声が出ていたものの、問題として取り上げられることはなかった。売り手側にしてみれば、送料無料の訴求力は非常に大きいからである。

 送料無料表示は麻薬のようなもので、一度使い始めたらやめられない。他社が送料無料を謳う中、送料を表示すればそれだけで不利になる。それを避けたい売り手側はこの問題に手をつけたがらない。これは一斉にやめるしかない問題なのだ。

 その送料無料表示が、ついに課題として上がってきたのである。しかし、これを伝えるYahooニュースについたコメントを見て、私は驚いてしまった。多くが「それは荷主と配送業者が協議する問題であって、消費者は関係ない」というものだったからである。

 確かにそういう問題もあるが、送料無料が定着しているために、配送業者が十分あ利益を上げられず、配送を担うトラック運転手が、荷役も含む過重労働を強いられ知えるのだ。何より彼らの労働が可視化されない。消費者も他者の労働に対する敬意を持てない状況にある。

 私はここが一番の問題だと思う。社会が他者の労働によってつながり、回っていることが忘れられている。そして回り回って、自分の労働が軽んじられるようになるのだ。こんなんだから、社会が分断されて劣化するのである。ITでいつでもどこでもつながっているはずなのに、孤立感が蔓延している。

 通販に依存し過ぎている生活のあり方も、考え直したらどうか。街中は空虚になり、東京近郊には巨大物流センターが並んでいる。殺伐とした光景だ。これも不可視状態に置かれているから、見ようとしない人間にしか見えない。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?