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キタキツネ、ポール・オースター死去

湖の近くに、何かの花が咲いているみたいな情報があって、全く何も調べずに車で向かった。
正直、どんな花が咲いていてもどちらでも良いと思っていた。
花を愛でるのは嫌いじゃないけど、なにより道東の外は未だにしっかりと寒くて、外に出たくは無いんだけど、何かの目的地、そして動く動機があった方が奥さんも納得するはずである。

15分ほど車を走らせ、その湖の駐車場に着いた。
花は一輪も咲いていなかった。
奥さん曰く「9月頃に咲くって書いてたよ」というので、なるほど、ちょっと4ヶ月ほど来るのが早かったんだと思った。

じゃあ、どっか行こうかと思っていたら、一匹のキタキツネがすたすたと車に近づいてきた。
どう考えても、誰かがエサをやってしまい、人間からおこぼれをもらおうとしているのは明白だった。
大体5mくらい。これがキツネが感じた人間との適切な距離らしい。

なんも無いよ。ってか、あってもあげないし」と一応言ってみた。
でも、キツネはこっちを見ていた。

なんだかこれ以上、人間が近くにいることに対して、キツネが更に緊張感が無くなってしまうのは良く無いなと思い、すぐに車を動かしてその場を離れたら、キツネは諦めたようでまた駐車場の奥に消えていった。

晩御飯を食べ、北見市内にある、とあるバーを目指した。
数年前に来たときに、その方の店に寄らせてもらったが、現在は斜里に移転していたのをその時に知った。

じゃあ、とりあえず、さっぱりしたものを飲みたいなとウロウロとし、結局近くのバーに入って、ジントニックを飲んだ。
奥さんとふわふわと話をしていたら「そういえば、ポール・オースター死んじゃったね」と言われた。

一応、なるべく世の中の情報を知っておいた方が良いなと思って、毎朝くらいはネットニュースを見るようにしていたのに、数日前に彼が逝去したことを僕は知らなかった。
知らなかったし、旅先の知らないバーだし、数日前のことだったからというのもあって、とても悲しくなった。

何度も繰り返し読む小説って、人によってその数に違いはあるだろうけど、どれだけ引越しをしたり、無くしたりしても何度も買い直して読んだりしていた。
映画「SMOKE」も変わらず大好きだし。
今日くらい、煙草吸うかなと思ったけど、やめておく。

ご冥福を。

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