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あのころはなぜ窓辺でラーメンを食べていたのだろう。

わたしが中学生のころは、しっかりと厨二病だった。

いま、車で流れているCDはB’zの「RUN」というアルバム。

これはわたしが中学生のころ、人生ではじめて買ったCDだ。発売は1992年。約30年前だ。買ってから10年くらいは聴いていたが、それ以降はさっぱり聴かなくなった。

ところが、ひょんなキッカケで、20年ぶりにこのCDを聴いている。するとえらいもんで、中学生当時の記憶がよみがえってくる。

中学1年生のころ、好きな人の通学路が、わたしの自宅の前だった。

だからよく、窓辺でインスタントラーメンを食べていた。

1階の路地に面した部屋がわたしの部屋だった。好きな人の帰宅時間を狙い、偶然を装ってラーメンを食べている姿を見せたかった。

窓の「さん」に腰掛け、あかいラーメンどんぶりと、箸を抱える。

「おお、いま帰り?」
「あ、しばいぬくん。ここ、しばいぬくん家なんだ。でも、なんでラーメン食べてるの?」
「ああ、ちょっとお腹へっちゃって。食べる?」
「いらないよ笑」

みたいなやり取りを、夢見ていた。

それに意味があるのかないのかといえば、大人のいまでは自信を持って「ない」といえる。

しかし、当時のわたしは、必死で「会話するきっかけ」を作りたかったのだろう。

来る日も来る日も、具なしラーメンを食べつづけた。だが、一度もその子がやってくることはなかった。

ランドセルをカチャカチャ鳴らした見知らぬ小学生が「ウヒャヒャヒャ」と、はしゃぎながら通り過ぎてゆくだけだ。

その子は吹奏楽部で、帰宅時間がいつもバラバラだった。

ラーメンを食べる時間は15分がいいところだ。最後までタイミングを合わせることができなかった。

次第に母親から「夕飯前にラーメンたべるんじゃないよ!」と怒られて、やめた。

2年生になると「好きな人を守りたい」という気持ちから「かかと落とし」をマスターしようとした。

日々、2段ベットの「はしご」に足をかけて伸ばしていた。最初は「はしご」の下から5段目に足をかけて伸ばした。それをクリアできたら6段目、7段目と高さを上げていく予定だった。

しかし、そもそもその「好きな人」は、わたしの片思いだった。

付き合ってもいないのに、勝手に「守りたい」と熱く胸に誓うという、中学生ながらそれはまさに益荒男の発想だった。

その後、2ヶ月も経たないうちに「どうやらサッカー部の3年生に告白したらしい」という噂を聴いた。

「うそだろ!?」と疑いながらも、ある放課後、浅黒い肌色のさわやかなサッカー青年とうれしそうに帰宅しているその子の姿を見つけた。

その日から世界でいちばんしょうもない「かかと落とし」の修行は終了した。ちょうどはしごの7段目にさしかかろうというところだった。

いやはや、甘酸っぱい思い出だ。

B’zの「RUN」というCDは、そんな時代によく聴いていたのだ。

アルバムには「ZERO」という曲が入っている。

「ゼロがいい♪ゼロになろう〜♪もう1回!!」

という稲葉さんのシャウト。

昔もいまも、染みるなあ。




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