「すっとこどっこい」の語源とは。
となりのチームの上司が、入社3年目くらいの部下に「アイデンティティーがだいじだよ」と説いていた。
個性をのばそう、といったたぐいの会話だった。上司は懸命にアドバイスをしていたが、なぜか最後に「…ということで、あなたには、みうらじゅん原作のアイデン&ティティという映画をおすすめします」とおどけた。
20代の女子がポヤンとした表情で「は〜い」と返事をしていた。たぶん、なんのことか分かっていない。だって、わたしも分からないもの。
そのやり取りを見ながら、なぜかわたしの頭に「すっとこどっこい」ということばが浮かんできた。
「すっとこどっこい」ってことばは、なにが由来なんだろう?
おそらく「おたんこなす」や「とうへんぼく」などと、同じ引き出しに、なんとなーくしまっている方も多いのではないだろうか。
ちなみに「すっとこ」ということばは、「ひょっとこ」が原型らしい。
「ひょっとこ」は、みにくい顔の男が裸でおどる姿をあらわしていて、それはじつは江戸の世界では相手をバカにすることばとして使われてきた。
だから本来は「この、ひょっとこどっこいが!」が正式な表現。
日本語あるあるだけど、長い年月をかけて、いつのまにか「ひょっとこ→すっとこ」に変化したんだね。
じゃあ「どっこい」はなにか。
これは、ただの「かけ声」。
「ソーラン節」でいえば、「ヤーレン ソーラン」のあとに「ハー ドッコイショー ドッコイショ!」のように、合間に合いの手を入れる意味のないかけ声だ。
つまに、盛り上げるためにくっつけることば。
「この、すっとこが!」だけでは、相手をなじるパワーが足りないと考え、これに「どっこい!」を添えることで、まるで「マジきもい」のように、よりなじりたい気持ちを強調したんだね。
でもね、この「すっとこ&どっこい」は、すでに説明したとおり「顔の醜い男=ひょっとこ」をモチーフにしている。
容姿を欠点としてあげつらって、相手をさげすむことばだから、令和という時代にはそぐわないね。
みなさんも、うかつに使わないようにしましょう。
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