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わたしが厨二病だったのは、やっぱり中二のころだったと思う。

わたしの中学生時代は、ちゃんと厨二病だった。

わたしが中学2年生だった1994年の当時は、ヴィジュアル系バンドが全盛期。そして、少年マガジンや少年サンデーは「ヤンキー、不良」マンガにあふれていた。テレビゲームではドラクエやファイナルファンタジーがシリーズ4作目だの5作目だのをヒットさせていて、世の中にはRPGゲームが量産されていた。

多感な中学生だったわたしは、それらすべてにあこがれていた。バンドマンにも、不良にも、勇者にもなりたい、いやなれる!と信じて生きていたなあ。

厨二な思い出 その①
中学2年生にもなれば、小学生っぽさも抜け、学ランも身体になじんでくる。当時の不良は短ランが主流。短ランというのは、学生服の上着の「丈(たけ)」を短くしたものだ。

少年サンデーに連載されていた「今日から俺は!」の主人公・三橋貴志は、まさにこの短ランを着こなしていて、それにあこがれていたわたしは、おばあちゃんが買ってくれた超まじめ仕立てのトンボ学生服の丈を「内側に折って自分で縫って」短くしていた。はっきりいって、こんな恥ずかしいことしてたヤツ、いないと思う。

とうぜん、着ていった1日目から先生に呼ばれ「なんだその制服は」と怒られるわけだが、このとき先生は「短ラン」に対して怒ったというより、上着の丈を内側に折って縫ってるという「謎の学ラン」に困惑していたんだと思う。その場でハサミで糸をピン、ピン、と切られたっけ。

厨二な思い出 その②
魔王や魔物と戦うための「剣」なんかは、30本くらい発案していたと思う。授業中は「剣」を書く専用のノートを広げて、ひたすら自作の剣を描いていた。

当時はこれを本気でカッコいいと思っていたので、1本描いては、隣の席の女子に見せて感想を求めるという迷惑行為を繰り返していた。

いまでも覚えているのは、剣に黒い魂が巻き付いている「怪刀セイギノミカタ」。これは伝説の勇者が魔王に負けてしまい、その魂が怨念となって宿った剣。

これを手にした者は、勇者と同等の力を手に入れることができるが、魔王に恨みを持って魔物たちを殺しつづけてしまうという…コンセプトも名前もゾッとする。恥ずかしくて。

厨二な思い出 その③
バンドマンにもあこがれていた。当時、高校生になったら県外に出てバンドを組みたい、とギタリストの夢を本気で追いかけている2人のトモダチがいた。2人とも、中学生なのに金髪に染めて、学校には行かずにギターの練習ばかりしていた。

たまに、先生と親と3者面談をするために学校に来ると、後輩の女子が「あの金髪の2人かっこいいよね」と噂をするので、小学生からトモダチだったその2人は誇らしかったっけな。

でもある日、3年生の不良グループから呼び出されてしまう。「なまいきだ」ということで、いわゆる「シメられる」ことになってしまった。

小学校の裏手に森があって、そこに3人で向かうと、12人もの3年生が待っていた。向かう途中は3人とも「オレはやったるよ!」「オレも!」「オレも!」といきごんでいたが、あっという間に3人は1人ずつ別の場所に連れ出され、ボカボカと殴られてしまった。

そのとき、比較的なまいき度が低かったわたしの相手は2人だった。反抗的な態度を見せながらも、実際に手は出せなかった小市民のわたし。マンガやゲームの主人公のようにはいかなかった。

12人のなかでも、ケンカの強さに定評のある「てっちゃん」と呼ばれている人が相手だった。

おなかにボディーブローを入れられ、くの字に曲がるわたしの身体。「てっしゃん」はすかさず、手のひらをアーメンと祈るときのように組み合わせ、「ケンカはこうやんだよ!」と、わたしの背中に打ち下ろした(実話)。

正直、どちらもそんなに痛くなかったのだが、そのシチュエーションに酔っていたわたしは、その2連コンボに「うう!」「ぐはあ!」と派手に声をあげたのを覚えている。同時に(これはベジータの技といっしょ…!)とわけのわからないことも考えていた。

3人がおのおのシメられ終わって、元の場所に集められると、先輩たちは「一回シメたら、もう仲間だから」とよく分からない理屈でタバコを分けてくれた。

もともと吸っていたトモダチの2人は「?」となりつつも「はあ…」と受け取って吸っていたが、なんかちょっとそこに迎合するのがいやだったわたしはささやかな反抗で「オレは吸わない派なんで」と断った。

3人で学校に戻ると、数人の女子が「大丈夫だった!?」「先生に言ってこよっか!?」と心配してくれた。

結局、大したキズもダメージもなかったのに、まるで口の端っこから血が流れている気分。それを手の甲で拭き取る仕草をしながら「いってえー…」「でも、余裕」と、ケンカしてる(してないけど)自分に酔って強がっていたな。

ああ、中学生2年生って、なんでこんなに夢と希望と空想に、あふれていられるんだろうなあ。




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