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男の人生は、圧倒的にオジサンでいる時間のほうが長い。

「白髪、ふえたね」

むしエビを食べながら奥さんが言った。平たい新幹線が、自慢気にお寿司を乗せて、視界の横を走っていく。

さいきん仕事で苦労が多いからか、仕事帰りにジムへ足が向かず、夫婦で回転寿司を食べにきた。あしたは2人とも休日だ。

5年前よりも、あきらかに髪に白い部分が増えた。マスクをすると、口元が隠れるので、男性も何歳かは若く見てもらえる。しかし、白髪だけは隠しようがない。

「そうだよね。やだなあ、白髪染めをしなきゃなあ」

と、コハダのにぎりを食べながら答えた。

ふと、実家の父親を思い出した。60代の父親は、いまだに総髪だが、わたしが中学生のころから白髪だらけだった。

当時はそれがいやで、「黒くしてよ」とよく訴えていたが、父親はまったく聞く耳をもたず、いつまでも染めなかった。

めんどくさがり屋なんだな、と思っていたが、いざ自分がその歳になると白髪だらけのままでいるほうが、なにかをあきらめ、覚悟を決める必要があることが分かる。

男の人生は、圧倒的にオジサンでいる時間のほうが長い。

それでも、エネルギッシュで自由だった若かりし時代を、いつまでも忘れられないオジサンは多い。きっとわたしもそのうちのひとりだ。

いつまでも未練がましく、黒髪にこだわるべきか。

それとも、いっそのこと、白髪を美のかんむりとして、堂々と生きていくべきか。

今月で41歳になった。
今後の進むべき道をかんがえながら、横に停まった新幹線からヤリイカを取った。

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