見出し画像

【短歌日記】ふたりともたがいを看取ることはできない 2023/06/25-2023/07/01

2023/06/25 くちづけたあなたとわたし ふたりともたがいを看取ることはできない

うたの日「限」。

切れかけていた床用ウェットシートを補充するなど、細かい生活のメンテナンスをする日だった。大変にまっとうだけれど、健全な日こそ「私はこの先誰を看取るのだろう」という考えが脈絡もなく頭をよぎっては通り過ぎていく。


2023/06/26 昼は児を夜は盛った猫を模し いつも飽かずにうみねこは鳴く

うたの日「いつ」。

ここ数カ月、うみねこが近所に飛来している。鳴き声を聞き、彼らが「ねこ」である訳が分かった。昼も夜も鳴きっぱなしで、彼らはいつ寝ているのだろうと思う。


2023/06/27 両親は律儀に「!?」だけまっかにしてる文法のごと

うたの日「⁉」。

完全に偏見だが、それなりに年配&普段絵文字を多用しない人でも感嘆符と疑問符だけは律儀に絵文字にするケースが多い気がする。わりと質実剛健な文面に赤い「!」が顔をのぞかせるのは結構好きだ。


2023/06/28 L+Windowsキーをカン!と押す 花摘みにゆく序の舞として

うたの日「踊」。L+WindowsキーはWindowsPCで画面をロックするショートカットキーだ。

ずっとWindowsユーザーだったのだが、新しい職場で支給されたのがMacで、よろよろショートカットキーを覚え始めている。なんでMacはスリープのショートカットにQが入るんだ、あと^がcontrolなのはどういうことだ、⌘とか知らん知らん知らん。

外国語で舌がもつれるように指が回らない。さながら異国への留学だ。


2023/06/29 雪あられ雨雹ついに青空もつらぽよな歳 ちょい曇りよろ

うたの日「青空」。

天気がくるくる変わる日が続く。雨で肌寒い日、ただただ直射日光が辛い日、くもっているが湿気のせいで常に額に汗がにじむ日。

その上、職場はエアコンで極寒だし、退社後はわざわざ30度前後に暖めたジムでホットヨガに励んでいる。矛盾だ。ホットヨガ、運動不足を解消すべく最近始めたのだが、身体が一日で味わう気温差が大きくなりすぎて不健康な気がしてくる。


2023/06/30 その「いち」が長すぎるって忘れ去る「あといっぽ」って言う奴みんな

うたの日「あと」。

「あと一歩」の距離は、いつも捉えるのが難しい。上司が言う「あと一歩」はもちろん、自分が自分に向けるものすら果てしなく縮んだり延びたりする。


2023/07/01 ダイヤルがぴったりならば聞こえるの? 言外をいつまで経っても受信できない

一人で遠出する。学校を卒業してからは初めてかもしれない。身軽で楽しい。

古本屋兼貸本屋みたいなところが併設された宿だったので、夕方チェックインした後は観光にも出ず、角田光代『なくしたものたちの国』や柚木麻子『伊藤くんA to E』を借りて読みふける。こもって本を読む、普段とまったく変わらない行動を楽しく過ごす。

『なくしたものたちの国』、半分夢だと自覚している夢のような世界で、手のひらからこぼれてしまったいろいろなものを拾い集めるような話。ショーン・タンの絵本『Lost Things』を思わせる。

『伊藤くんA to E』、美形かつ実家が太いが自意識過剰な青年のクズっぷりをあざ笑う内に、同じクズさが自分からもひたひた染み出してくることに気づくスリラー。


この記事が参加している募集

今日の短歌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?