見出し画像

【短歌日記】また会おう(もう会わないと思うけど元気でいてね返信不要) 2023/01/22-2023/01/28


1/22 日曜日暗いオフィスで伸びしてる部長のボクサー蛍光ピンク

新卒で配属された部署には休日出勤が月1くらいでありました。家を出てオフィスに辿り着くまで、ずっと休日の街の浮きだったような様子に対する呪詛でいっぱいでしたが、なんだかんだオフィスは人がいなくて快適でした。

同僚もラフな私服だったり昼休みをこっそり15分くらい延長したり突然ジブリのLo-Fiミックスを流し始めたり、みなそれぞれにオフィスに休日を持ち込もうとしていたものです。それこそ下着も蛍光ピンクだったかも。知らんけど。

1/23 あかね空スズメすずなり木に集う まってぼくまだここにいたいよ

うたの日「雀」応募作。

全然関係ないのですが、ここ数日穗村弘『短歌という爆弾』を読んでいました。

前半部分、東直子と一緒に初心者の短歌をばさばさ添削するところは、自分と同じレベルの人々の作品が並ぶこともあって参考になりました。「気持ちのいい慣用句(「しんしんと降る雪」とか)を安易に使うな」とか。

が、後半の短歌論がさっぱり分からず、「ファウル」「ホームラン」の作例として挙げられる短歌の数々は全部同じくらいの出来栄えに見えるし、あとがきに書かれている穗村弘が一番最初に作った歌はすごい洒落てて落ち込むし、極めつけに「これを読んだら勘のいいひとはすぐ短歌を作れる(大意)」とあって、つまり私は短歌勘が悪い……? と一瞬思い悩んだのですが、その後レビューを見ていると「全然分からない」と書いている人が多く胸をなでおろしました。己の小物さたるや。

私が読んだKindle版には無かったですが、小学館文庫版だと枡野浩一氏の解説で「これは初心者向けじゃない」と書いているらしいので文庫も手にしてみたいところ。『短歌という爆弾』、絶対的にこちらの鍛錬が足りないので修行後立ち返りたいです。しばらくはひたすら歌集&短歌の入門書をたくさん読もうかな。

1/24 アン、ドゥ、トロワ、ターンをせずに伏した君 それも振付? もう目開けてよ

うたの日「踊」応募作。

引き続いて俵万智『考える短歌——作る手ほどき、読む技術』を読んでいます。

基本的には読者投稿を添削していくという形式です。副詞はあんまり考えず使ってしまいがちだけど本当に必要かよく考えよう(穂村弘の「気持ちのいい慣用句を使うな」にも通じます)、動詞が4つ以上あると詰まりすぎかも、というようなノウハウが詰まっており、即実践しやすい印象でした。

私も副詞「ふと」、めちゃめちゃ考え無しに乱用してたな……

1/25 「じゃあまたね」直後に頰が痛み出す 口角ずっと上がってた夜

基本的に引きこもって人と話さないので、友人と数時間電話したりすると表情筋が筋肉痛になります。それだけ話しながらにやにや笑っていたということで、この表情筋痛はよき兆候。

1/26 三日月・上弦・満月の形にうごめくリップ合コン更ける

一方こちらはあんまり嬉しくない表情筋痛を産み出す口の動きを詠んだつもりです。「そうなんですね~」「すごい~」の相槌を打つときの笑み。

うたの日「笑」応募作。

今日は岡井隆『今はじめる人のための短歌入門』。

1980年代後半の連載を書籍化したもので、前掲2書に比べるとややいかめしいというか、背筋を正さねばならぬ文体です。

印象に残っているのが、「メモ帳とエンピツがあれば短歌なんてすぐできる、という人がいるが、やはりちゃんとした原稿用紙で一文字一文字清書するのが一番だ」というような内容。清書することで自分の作品を検討・批評できるのだから、という理由です。確かに一回自作を客観視するいいプロセスなのかも。

とはいえそれは1980年代、デジタルの選択肢がない時代の話。現代では皆さんどうしているんでしょうか。

私はLINEの自分用のグループにとにかく思いついた歌を投稿し、コピペしては修正してまた投稿し……としていますが、ノートに手書き派、あるいは短歌専用のエディタとか使ってる人いるのかな。気になります。

あと、近代短歌の作品にももっと触れようと思いました。ドクトルまんぼうのお父さんとしてしか認識していなかった斎藤茂吉とか。

1/27 「また会おう(もう会わないと思うけど元気でいてね返信不要)」

うたの日「会」応募作。

LINEなりTwitterのリプなりを返すのが壊滅的に苦手です。特にLINEの既読、そろそろ10年以上使ってるのにいまだに慣れません。弾丸に打たれたみたいに何も考えられなくなり、社交辞令的な何かを返してしまう自分への嫌悪感があります。

枡野浩一の『かんたん短歌の作り方』を読み始めました。

1990年代の少女漫画誌の連載を基にしたものです。少女漫画誌で短歌の連載があったこと自体がすごい。

1/28 信号機うちの前からどこまでが同時に赤に変わっているの

はじめて対面のオンライン歌会というものに参加しました。「うたの日」で何度か評をいただいたりしたことはあったものの、面と向かって互いに感想を述べあう、ということは初めてです。

結果的に、共感してもらったという嬉しさのほかに、考えてもみなかった読み方をしていただける喜びも発見したよい機会でした。「うたの日」も音符の数が少ないと「今日も伝わらなかったな……」とか思ったりはしますが、よりダイレクトな反応がくると嬉しいです。あと、自分の歌について話されている場だとものすごくにやにやしてしまうなあということが分かりました。

逆に、自分の読みがかなり粗く、歌の第一印象から自分でなかなか抜け出せないし、第一印象もそもそも浅いということも分かりました。「ある作品を面白いと思えない時は、大体自分が面白くないことが多い」という講師の方の言葉がとても刺さります。岡井隆も前掲書で「短歌を読むこと・批評することは作歌の一プロセスだ」と書いていたのを思い出しました。修業せねば……

「信号機……」の歌は、オンライン歌会終盤の題詠(「通行」)で読んだものです。4分くらいで作ったやつをみんなでばっと見せ合うのも楽しいものですね。

オンライン歌会、色々開拓したいです。おすすめ等あったら教えてください。

前週の短歌日記はこちら

次週の短歌日記はこちら


この記事が参加している募集

#今日の短歌

39,052件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?