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【手紙】私が恋したあなたたちへ

私はずっと恋をしてきました。

幼馴染の寡黙な一つ年上のあなた。
泣いていた私に一番に声をかけてくれたあなた。
私を楽し気にからかってくる隣の席のあなた。
歴史に出てきた切れ者で生きざまの素敵なあなた。
みんなに愛されることによって成立する創作上のあなた。
吹奏楽部でみんなのあこがれの男勝りなあなた。
すこし変わり者だけど私よりもうんと多才で頭もいいあなた。
バイト先で意気投合した不器用で優しいあなた。

私は自分のアイデンティティに迷子になりながら、
尊敬と恋慕を混同しつつも、
年齢や性別、身近であるか否かにかかわらず、沢山のものに惚れこみ、恋してきました。

恋するたびに「あなた」に近づきたくて、
沢山の努力もしました。

書道教室に通っていると聞けば、字もうまくないのに教室の門をたたきました。
本が好きと聞けば、共通の話題が欲しくて、休み時間はあなたの隣で読書もしてみました。
伝記があると聞けば、祖父にねだって図書館まで借りに行き、読めない漢字を調べながら読みました。

あなたの隣で演奏したくて、楽譜も読めないのに、学校が閉まるまで練習しました。
知的なあなたの話しについていきたくて、苦手な数学や化学も勉強しました。
あなたにかわいいと思われたくて、もさかった髪を切り、化粧も覚えました。

私はずっと「あなた」に恋をし続けて、
沢山の原動力をもらいました。成長の機会をもらいました。

私より前に生まれたあなたは、私のことを知らないかもしれません。
喧嘩別れしたあなたは、私のことなんて嫌いかもしれません。
憧れのあなたは、さらに高みを目指して輝き、私のことなんて忘れているかもしれません。
私が泣くほど好きだと告白して付き合ったあなたは、離れていった私を恨んでいるかもしれません。

思い返せば「あなた」と離れてしまったことを寂しく思う時があります。
でも、私は今でも恋をしたことを後悔しません。
「あなた」が私を成長させ、苦しくも輝かしい青春時代をくれました。

すべての「あなた」が愛しく、今も健やかであってほしいと思っています。
ありがとう。

二度と交わることがなかったとしても、時々「あなた」を思い出し、
幸せを祈っています。

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