見出し画像

言葉にできない、そんな夜。#24[5/9放送分]

前回放送分はこちら↓

当記事ではEテレの番組「言葉にできない、そんな夜。」について書いていきたい。
この番組では、上手く言語化できない瞬間をどう言い表すか模索していくが、それに倣って私も各テーマの言語化を試みるものである。

なお、番組の詳細については公式ホームページをご覧いただきたい。


1.感動した!以上の気持ち

全てがスローモーションのようで、それでいて一瞬に過ぎ去っていくようで、私はこの出来事をとにかく網膜に焼き付けようと必死だった。
「感動」なんてちゃちな言葉では陳腐になってしまう程、私はただひたすらに虜になってしまっていた。

たちばな朱音

あまりに感銘を受けたときって、一瞬のような、それでいて永遠のような気持ちになることがあるので、それを表現してみた。

番組内で紹介されていたものだと、永井紗耶子さんの文が好きだ。

目の前に立った時
しんとして音が、時が止まった。
怖いくらいの真っ白い静けさの中に
取り残された。
私だけが、揺れて動いて息をしている。
同化するように息を繰り返すうちに、
それでも暴れる私の心に気付く。

永井紗耶子 番組書き下ろし

他の文章は暴力的な感動を表す表現が多かったが、永井さんの感動はしん、としていて対照的だった。
仏像を見たときの感動という話を聞いて納得した。その場の体験を邪魔しないよう、同化するように息をするという感覚も、静かにしていても暴れる心を感じるというのも、すごくよくわかる。


2.ここまで来ている!けど思い出せないとき

机の隙間に落ちてしまったカードを取ろうと懸命に足掻く

たちばな朱音

隙間に落ちてしまった紙って大がかりな家具の移動をしないと取れないから、場所によっては無くしたのと同義だよなあと思って書いた文だ。

番組で出てきた表現だと、MC小沢さんの文に共感した。

記憶の小骨

小沢一敬 番組書き下ろし

思い出すまで、妙に喉にひっかかる感じはよくわかる。
そして、思い出したときのすっきり感も。

なお、ジャニーズWESTファンとしては「ジパングおおきに大作戦」というワードが出てきた瞬間に爆笑した。ニッチすぎる。


3.腹をくくって、立ち向かうとき

ええい、こうなったら自棄だ。どうにでもなれ。
さっきまでもだもだしていた自分を振り切り、崖からえいやと飛び降りた。
そりゃ現状維持のが楽だ。ここにいれば温い安全に浸っていられる。敵に遭遇することもない。
けれど、今の私は新たな一歩に心が逸っている。その感情だけをお守りに、私は先に進み出したのだ。

たちばな朱音

私自身は、何かに立ち向かうときは「よし、行こう」と腹をくくるというより、「どうにでもなれ」という感じで飛び降りる方が多いので、そのような趣旨で書いてみた。

紹介されていた中では、宮下奈都「羊と鋼の森」で、女子高生・和音がプロのピアニストになると宣言した瞬間の文章が格好良かった。

「ピアノで食べていこうなんて思ってない」
和音は言った。
「ピアノを食べて生きていくんだよ」
部屋にいる全員が息を飲んで和音を見た。
和音の、静かに微笑んでいるような顔。
でも、黒い瞳が輝いていた。

宮下奈都「羊と鋼の森」

ピアノを食べて生きていく、という表現に脱帽である。
自分が食らいついていっていこうという気概を感じて、その意気込みにハッとさせられた。


次回からはゲストのメンバーが入れ替わるということだ。
今回のメンバーが面白かっただけに寂しさもあるが、明日からの回も楽しみにしたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?