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2018年のカルチャー日記

割と自分のためでもあり、なんか話のネタでもあり2018年の振り返りというのをやっておこうと思います。
例年は音楽の話だけとか書いてますが、今年はなんかもっとラフにいろんなジャンルの印象に残ったものについて振り返ってみます。
なので、平均点は高くてみんな通っておくべきだよね的なのは外してもう少しパーソナルな面において印象に残ったことを各分野について絞って書いてみようと思います。なんとなく、パブリックな情報や年間ベスト的な売り上げやブログのスコアをまとめれば自然と見えてくるものみたいなものはもうみんな飽き飽きしてると思います。
今年の自分のテーマとしては、世間的な流行とは距離を置いて制作だったり作戦を立てる時期にしようというものがあり、そもそもあまり見たい映画やライブなどは少なくなってきているように思えるしそんなに充実した印象ではないです。それは、年齢のせいでもあるけどもう少し開き直りというかダサい部分を少しづつ意識的に表現に取り入れられそうな予感もありつつ、最先端みたいな感覚というのはもう分からないなーという感じもありつつでつまりはそんな感じです。
ただ、そんな中で内にこもっているわけにもいかないので意識的に何かを探しにウロウロしていたりもしたのでした。
今年はもっと開き直りたい。

MUSIC編

中村佳穂
いいことないし、嫌な人もいるしさ、いいんじゃないか、そうとも限らないか。
軽いステップ、フォーキーな前作から変わっていろんな音楽の影響が感じられる。インタビューではJames Blakeのライブで衝撃を受けたと語っている。そんな、音作りのこだわりも感じられる。そして、なによりもパーソナリティーがころころと変わる、軽やかさを見せたかと思えば情念を見せる、傷つきやすさとその開き直りで胸張って生きていこうとすること、忘れっぽい天使という曲で描かれるどこかにいる知らない女の子、そんな小さな無数の優しさの中で私たちはなんとか存在出来ている、ゴスペル的なサウンドは心の奥であなたとわかりあっているようだ。


七尾旅人
優しく聴きやすく、ヘンテコでポップで七尾旅人の作品の中でも一番好きなアルバムになった。ビートも面白い、メロディーや歌詞のすっと寄り添うような魅力もあるが、Rollin' Rollin'のやけのはらやとの共作、またfoodmanを積極的に評価する姿勢などから汲み取れるジュークやベースミュージックの影響もさりげなく入っていて曲に活力を与えている。
それは、隙だらけの音楽で弱くて笑えてしまうものだけどそれだからとてもよく響く。友人の家で忘年会のあとに朝方聴くものがなくなり流していたらみんな染みると言っていた。多くの人に届く可能性を持った真摯でありながらポップな傑作だと思う。

MOVIE編

オルタードカーボン
ガチガチのハードな装いを持った期待のSF作品でありながら、探偵ものでもある。マトリックスなどでおなじみの東洋武術、を学んだ中身はアジア人の青年。それに、今回は未来の技術で肉体への精神のアップロード?のようなことができてマッチョな白人(元警官)に外見は変わっている。そのことで、見た目むきむきイケメン、中身はアジア人の武闘家みたいな最強スペックの男がある殺人事件の謎を解き明かそうと奮闘する。東洋武術的なものって割と精神性も鍛えるみたいなイメージでアイアンフィストとかでも使われてるけど大抵主人公はすぐブチ切れる。netflix友達は4話くらいで挫折したと言っていたがそれもわかる。1話まるまる拷問みたいなシーンだったりするからだ。ただ、そこを乗り越えると結構面白い、AIホテルだとか、未来の金持ちの娯楽としての殺人、あらゆるバッドセンス、ダークさが描かれていく、その中でAIや精神を破壊された女の子、恋人を亡くした警官が団結して立ち向かっていく、何よりも、依頼者の妻が最高にエロいというかやばかった。


パトレイバー(テレビ版)
これは、年末からNetflixで配信開始されたので見てみた。とにかく、面白い。まだ10話ぐらいだが。いわゆる80年代的な組織のモラルや、現実感っぽい続いていく範囲での日常みたいなものはある。(例えば、デビルマンなんかは1話ごとに世界の情勢が変わっていくぐらい目まぐるしく破壊的なものに向かっていく)
レイバー自体のデザインの可愛さ、外国製のレイバーもまた可愛い、車両の描き方もきちんとデザインされていて可愛い、その上で、それぞれの人間もちゃんと活き活きとしていてその掛け合いを見ているだけでハッピーみたいな状態になれる。日本の土着的な話題を切り口に出すのは、堤幸彦のトリックなどの作品のようでもあるし、登場人物の配置の仕方も面白い。主人公はロボット乗ってますみたいなものとは、違う配置の仕方をしていて感心しました。
Netflixにアーリー版も含めて上がっているのでこれから見るのが楽しみです。

BOOK編

ゲームの王国
本自体は2017年に出たものだけど、日本SF大賞を受賞したのをきっかけに読んだ本。あまりに面白いので2回通して読んだ。装丁は同僚の有馬ともゆきくんでかっこいい。
カンボジアのクメールルージュ(ポルポト)の時代を生き抜いていく少年の話から、下巻では脳波を使ったゲームの制作、また新しい政権下になったカンボジアの様子が描かれていく。
これを読みながら主人公ムイタックは俺だと思った。
全ての不条理な状況に対して何かしらの方法で切り抜ける人たちにとっては自分の物語だと思えるのではないだろうか。
また、主人公のムイタックとヒロインであるソリヤはあるゲームをする。それぞれ突出した頭脳を持ったもの同士、普段のゲームではわざと手抜きをしていたが初めて対等に全力を出して楽しむことを知る。
そして、その後に人生でそれぞれがその体験を求めて彷徨っていく事になる。


Rhetorica  #4
棲家という主題で作られている、同人誌。とにかく、同時代性を感じることができて勇気付けられた。哲学や批評についての記述、現代思想の最近の号と合わせるとなんとなくマークフィッシャーとかニックランド のようなダークが今後のテーマにもなりそうな気がした。棲家とは、ものを作るエネルギーのような(そんな単純ではないだろうが)ものが醸成される場所のことで、それは実際の場所であったりあるサービスだったりするのだろう。
そして、これを作っている彼ら(私たち)はそんな棲家がなくなりそうな危機感であったり、新たな場を作る必要性を感じている。本格派になる前の意見交換、そして大事なのはその手前の何かが生まれる可能性や予感を秘めた場所に私たち自身が身を寄せていることだ。

EXHIBITION編

ゴードン・マッタ=クラーク展
自由に生きていきたい、そのためには自由な視点を持つこと、都市空間を捉える目を養う、アメリカの80年代ストリートの空気感。
木の上でぶら下がるエクササイズの映像の美しさ、COSMIC WONDERのようなエコロジカルでありながら肉体的なはつらつさ。
展示の空間自体も打ちっ放し系の最後という感じで、細かいところまでかっこよかった。


続々 三澤 遥
自身の過去作を並べるのではなく、展示という機会を新しいアイデアを試すという姿勢に現れている通り全く過去に興味がないというか現状に満足していない感にまず凄みを感じた。
グラフィックデザインだとかメディアアートだとか線引きをしようとしなくてもやる奴はやる。プロダクトデザインの事務所出身という出自から分かるように、物体を扱うことに抵抗はなく自然にクロスオーバーしている、というより近年そちらの方向により自覚的になっているのだろう。Nerholというアートユニットをやっている田中義久のスタンスに近いものを感じる、彫刻とデザイン、それは表現の面でもそうだし、思考の部分においても大きく関わってくる部分だろう。
どこで勝負をするのかというのは自由なんだと改めて思わせてもらった。

GAME編

Dead Cells
ピクセルダークソウル、このゲームを通してダークソウルの魅力がわかった気がする。
ディアブロ的な大げさなリアクション、HYPER LIGHT DRIFTERの美しいピクセルアートと物理エンジンの融合。毎回生成されるダンジョン。
一度死んだら、最初の場所に戻るハードな設定。作戦を立てれば、時間をかけてやれば次第に攻略ができるようになる。
音とタイミングと難易度の気持ちの良いバランス。


MARBLOID
2018年はこのゲームと、BROKEN REALITYでVapor Waveの息吹を感じられて最高だった。
今年は自分としてもインターネットカルチャーというものの終わりだった。そういった意味でこのゲームの完璧なマナーは集大成として感じられた。
Vapor Waveは新しいパンクだった。
その衝動は最後にはゲームになったのだろう。さあ、どこへ行こうかしら、世界はきっと広大なはず。

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