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かわいい君の凶暴な爪

猫ってかわいい。


かわいいだけでできている、といっても過言じゃない。

私は近年、猫に思いをはせてきた。
いつか、猫と暮らすことを夢見てきた。

命を飼うというのは大変だ。
猫を迎えるということは、その猫生をずっと幸せで終わらせないといけない。
そうじゃなきゃ無責任だ。一緒に暮らす資格もない。

とまあ、かなり重い愛を持って猫に思いをはせていた。
好きだからこそだ。

私は人間の子供を見ても
「かわいい~」
とは思わないが、猫を見ると
「かわいい~!」
と思う。

自由で、わがままで、言葉が通じなくて、たまには甘えてくる。
なんといっても見た目がかわいい。しぐさがかわいい。

まあ全部妄想。
猫と暮らしたことがないからね。

とにかく猫をかわいいと思っていて、
一緒に暮らしてみたいと思いながらも
安易な気持ちで迎えてはいけないと考えてきた私の夢は

思わぬ形で目の前に現れることになる。

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「きゅうべえ だよ」

にゃーん。


きゅうべえ。
それはアプリでマッチングしたお相手が
一緒に暮らしているふくよかな猫だった。
白地に茶トラ模様。ピンク色の肉球。

まさか「私の夢」を「日常」としている人が
こういう形で目の前に現れるなんて。

いくつかきゅうべえの写真と動画を送ってもらう。
可愛すぎて涙が出た。

それから定期的に、きゅうべえを「供給」してもらうこととなった。

さて、長くなったがここまでが前置きである。

この後、きゅうべえの下僕(飼い主)であるお相手とは
恋人同士になる。

これまで写真や動画でさんざん思いをはせてきた猫、きゅうべえに、
夢見てきた猫との暮らしに、
間接的に触れる機会が訪れるのである。

夢と現実がつながる。
その瞬間は少なからず必ず、ギャップが生じる。
それをわたしもまた例外なく、まざまざと感じることになった。

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きゅうべえはそれはそれはかわいい猫であった。


初めてあった時などは、玄関でお出迎えをしていたのである。

私という人間の8分の1くらいの小ささ。(猫はみんな大体そうであるが)
首輪の鈴を鳴らしながら歩く姿。
もふもふの毛。白と茶トラの境界線。
ぽってりとした豊かなお腹。

その要素のすべてが「かわいい」で構成されていた。
私はかわいいかわいい猫と触れ合いたいという強い思いがあった。
撫でまわし、抱きしめて。そのもふもふを堪能してみたい。

しかしどうだろうか。
実際きゅうべえを目の前にしてみると、「触れ合うのが怖い」のである。

それは、「恐れ多い」という感情もあったが
たんに「怖い」という感情がほとんどであったのだ。

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かわいい君の凶暴な爪

きゅうべえはむやみやたらに触ろうとすると怒った。
きゅうべえは「シャー!」とはいわない。
「みゃあ!」と言いながらひっかいてくる。

まあ初対面の人間に触られるのはいやだよな。

私もひっかかれたり、かまれたりするのは嫌だった。
痛いからである。

徐々に仲良くなるぞ~。と意気込んでいた。が。

なかなかこれが難しい。
ていうか下僕(飼い主)にのみにしか心を開いてないな?

私は猫島に何度か通っていたのだが、そこの猫たちは
かなり人なれしている。

島民が餌付けしているためである。

なので近づいても逃げないし、触らせてくれる子が多い。

きゅうべえはかなり繊細というか気難しい猫なのかもしれない。
飼い主でもたまに怒られているからな。(触りすぎで、だが)

そういうわけで、妄想通りとはいかなかったわけである。

写真や動画で見るたびに今度会ったら、いっぱい触れあうぞ!と思うのだが

実際目の前にすると怖気づいてしまう。
一定の距離を保ってしまう。

人間関係より難しくね?

ともかく私にはこれが大きなギャップであったのだ。

SNSの影響か、猫が撫でくりまわされる様子ばかり見て
それが普通なのだとばかり思い込んでいた。

猫も犬も、映像で見る分にはとてもかわいい。
けれど、実際に目の前にしてよくよく見てみると
その凶暴な爪や牙に恐れてしまうのだ。

自分が思ったよりも怖がりだったことにも気づいてしまった。

深く関わるということは、仲良くなるということは、それまでの過程に傷つく可能性がある。
それでも、傷を負ったとしても、理解し合い許し合うことで仲を深めるのだろう。

わたしときゅうべえがそうなのだろう。
そして人間同士もそうなのだろう。

ところで、つい昨日のことだ。
下僕と共に本土に帰ってきていたきゅうべえ(と犬のこた)に会った。

生で見るとかわいすぎて泣けてくる。

わたしはまず自分のことを思い出してもらうために、においを嗅いでもらう。

下僕がそうしているように、人差し指を差し出して。
それはいつもの流れであった。
しかし少し、これまでとは違った(気がする)。

指のにおいをかいだきゅうべえが、
頭を押し付けてくるのだ。
(今までも多少その動きはあったのだが、今回は明確に、力強く)

まるで撫でろと言わんばかりに。

わたしは興奮と動揺で上手く撫でられなかった。

もしかして…ちょっと認められた…ッ?!

嬉しい。
ああもっと傷つくことも恐れず触れ合う強さが自分にあったなら…!

きゅうべえはほんとうにかわいい猫だ。

この後1時間くらいきゅうべえ(と犬のこた)と同じ空間で過ごした。

きゅうべえおいで!ここおいで!
ってやってたら、
なんと隣の椅子に座ってくれた。

そして膝の上を歩いて行った。
(鎮座してもらえなかったのがとても残念だ。)

嬉しい、嬉しい。
気分はまるで、恋するクラスメイトと話が盛り上がって喜ぶ16の乙女のようだ。

長くなったが、そろそろこの記事を締めくくろうと思う。
最後に、きゅうべえのInstagramを開設したので紹介させてほしい。

ひとんちの猫のアカウントを作るイカレ人

きゅうべえがどれだけかわいい猫なのか?
それをぜひその目で確認していただきたい。

それでは。

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