あなたが明日生きるのに必要な3人の人間


人は、今日を生きたいと思いながら生きるために、3つの人が必要だと思う。それは、突いたら血を噴く友人、自分を優しく抱いてくれる人、苦しみながら輝くスター。この3人だ。


血の触感

裁縫用の小さな針でプスっと突くとその一点から鮮やかな血潮が噴き出す人。そんな友人が1人でもいれば、世界そのものすら張りのある、緊張感と誇りで漲ったものになる。この考え方は、中目のクマちゃん氏を引用したものだ。


血の匂いは、目と言葉から香る。視線の運び方と瞳孔の呼吸、そしてパロールが、彼の精神の張りを伝える。精神に張りを与えるものとは、使命感である。変革の意志である。これを己の隅々まで走らせ、体と脳を動かす。そんな、精神的エネルギーを運ぶものとして、体において化学エネルギーを運ぶ血液を比喩で用いているわけだ。


友とは自分の写し鏡だ。互いに体に血を漲らせ、頭のニューロン細胞から爪先までを、己の望む世界の実現のための道具として働かせたい。今日の自分は、過去の自分が膨らませた精神の袋を持て余していないか。ブヨブヨになっていないか。それを友人との体当たりで、確かめるんだ。

愛の香り

サザンオールスターズの大名曲、『真夏の果実』の歌い出しをご存知だろうか。

「涙が溢れる哀しい季節は誰かに抱かれた夢を見る」

https://www.uta-net.com/song/4273/

桑田佳祐は、抱かれたいんだ。抱きたいんじゃない。普通、男が女を「抱く」ものだという認識ではないだろうか。でも、今は男女平等の時代でしょ。顎を肩に置いて、頸に優しさを嗅ぎたい。これがわからない人は、Madam Wooでtwerkしているお尻を気が済むまで札束で叩いたあとに家で疲れ果てるまでデリヘル嬢をFuckすればいいと思う。だいたい、Fuckすべきなのは不条理な世界なのであって、女の子ではない。女の子を犯して喜ぶ奴というのは、自分のコンプレックスを見出す社会をその女の子に投影してしまった哀しい男だけだ。いや、男に限らないか。

そもそも愛とは(恋ではない。)、跳ね返ってくるものだと思っている。それはちょうど、何かを抱けば、その抱え込む動作の圧の反作用があるのと同じように。だから、抱くことは抱かれることで、抱かれることは抱くことになる。

別に理解をされたいわけでも、体に快感をもたらして欲しいわけでもない。ただ、優しく抱いてほしい。どうせ人と人の関係性も郵便的なものなんだ。理解しようとしてお互い疲れてしまう前に、ただ優しく抱きたい。抱かれたい。

スターの光

現代人にとってスターは、古代ギリシア人にとっての神々みたいなものなのではないか。少なくとも自分にとってのスターはほとんど西海岸の人たちなので、その物理的距離感も相まってそう感じる。ゼウスは、神々の王でありながら、自分の国の美人の女性と不倫しているし、遠い祖先であったりもする。自分の美しさを人間の王に認めさせるために2千年後にも語り継がれる大戦争を始めたりもする。嫉妬、承認欲求、色欲。人間と同様にくだらない感情機構を持っていながら、その能力で畏れられ、祈られ、憧れられる存在。ゴシップお騒がせに事欠かず、でも作品で人間を鼓舞し、涙を流させる現代のスターたちは、実在しているのかしていないのかよくわからないような印象な部分含め、古代ギリシアの神々みたいなものである。

しかし、同じ存在であるはずの人間にここまで惹かれるというのも人間の面白い性質ではないか。古代ギリシアの神々が人気なのは、人間ほどくだらないからだし、昔の人は、唯一神にスター性をもたらすために、人間イエスを神の子イエス=キリストにしてしまった。自分と同じように欲望し、涙し、怒る人間が、それらと葛藤しながら、神(ここで言う神は唯一神の神)から授かった才能(gift)を作品に昇華する。そこに美しさと魂の動きを見出すのだ。崇高さではない。崇高でないくだらない人間の輝きは美しい。

魂の先導者としての役割を引き受けた姿、くだらない存在が生み出す美しい作品。これらが放つ眩い光が、自分が等身大のまま、堂々と生きていいことを教えてくれる。

機嫌良さそうに微笑んでくれたye。声をかけたら少し顎と口角を上げながら手を伸ばして握手してくれたCyber Rui。人は朝起きるたびに何度でも生まれ変われる。と繰り返し熱く語りかけてくれたSwizz Beatz。クールでいけてる格好で大盛り上がりのパフォーマンスをしてくれたA$AP Rocky。みんなスター、星だった。光ってた。彼らの存在が、素朴に、日常を生きることを肯定してくれる。でも、yeは自分の繊細さと病気が世界と折り合いつかず、愛した人にも世界にも裏切られ心労の中来日していた時だった。Cyber Ruiはデビュー前からの勢いの失速、同世代フィメールラッパーに対しての遅れとアンチからの罵声の中でもいい作品を作っているタイミングだった。A$AP Rockyは、身重なパートナーを配慮しながら、そして彼女を守るためのライブ体制への不満と怒りを抱えながらもそれを一才見せまいとするパフォーマンスだった。僕たちと同じように感じ、望み、苦しんでいる中でも見せてくれる彼らの光るスター性が日常を照らしてくれる。

朝、いつか夢のような瞬間の中で見たスターの輝きで目を覚ましたい。昼、血潮漲らせながら、世界の探究と仕事に打ち込みたい。そして夜、優しく抱かれながら柔らかい腕と胸の中で眠らせてほしい。

気をつけなきゃいけないのは、三つの関係性を峻別することだ。スターは自分を抱いてくれなくていい。抱き合う人から血の香り(比喩です)はしなくてもいい。友人は輝いてはいなくてもいい。泥臭く燻みながらも精神の張りを感じさせてくれればいい。

どの関係性でも、相手個人へのリスペクトと、それ以上に、「相手との関係性」に対するリスペクトを持って、生きたい。

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