性命双修

 仙道の行法は第一段階の斎戒と第三段階の練丹は身体を、第二段階の内観と第四段階の坐忘は精神を対象にしています。このように身体を対象とするものを命功と呼び、精神を対象とするものを性功と呼びます。
 仙道の行法は身体と精神の両方から道にアプローチしていくものです。双修と書いているので身体面と精神面で双方を習得するように思いますが、そうではなくこれらを両輪として片方の体得をもう片方にフィードバックする形で相互の体得を助け合います。これを並進兼程と呼びます。

 また、人間の生命活動は目に見える身体と、目に見えない精神という二つの要素が影響しあって織りなされています。ですので、例えば導引術のような単純な身体の運動に見えても、その中で一緒に精神も鍛えて行かなければなりません。特に八段錦や太極拳などはその動きに心を奪われやすいですが、同時に意識(意念)や精神の鍛練でもあります。そうしてはじめて動功としての意味を為し、行法になるのです。
 仙道では身体も精神も同一の気から発生した、道(dao)が具現化に他ならないのですから、この二つは別々のものではなく、一つのものとして捉えなければなりません。
 
 そしてこれは、行法の時だけではなく、日常の生活の上でも必要な事です。食べる時、何となくTVを見ながら目をそちらに向けて食べていませんか。それは五感のうち、視覚と聴覚を食事に集中していないことになり、満腹感を下げてしまいます。どんな味のするものを何回噛んで食べたか。密教僧のように集中して行わなければなりません。また、通勤、通学も同じルートだからと頭を半分停止して行っていませんか。たとえ見知った道でも、どのように手足が動いているか。どのように感情が変化しているか。天地の様子、天気や道路の様子はどうなっているか。全ての変化をよくよく咀嚼しながら歩くようにして下さい。それだけで変化を楽しむことができ、溌溂とした人生を歩むことができるのです。
 常日頃から身体の動きと精神の動きを合致させる。これは仙道の行法以前に、健康や効率の面でも大事なことです。

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