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厳選パキスタン・アフガニスタンの考古遺物の見どころ


土器やガラス、石製品は腐ることがないので、後世に残りやすい性質を持つ。また、パキスタン・アフガニスタンをはじめとする西南アジアのような乾燥した気候帯では、そうした古の品が優れたコンディションで現存する。今回は、そうした地域で発掘された古代の品々を厳選して紹介していく。以前にもこの手の品々は紹介してきたが、今回は時間がない人のために見どころを簡潔な形で説明したい。特に最後に紹介する銀化ガラスは美しく、世界的にも評価が高い考古遺物であるので、撮影した写真だけでも眺めていってほしいと願う。


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パキスタン バローチスターン地方
前2200〜前2000年頃
土器

クッリ文化と呼称されるパキスタンのバローチスターン地方に存在した人々が遺した土器。動植物の影絵が器に描かれているのが特徴で、同時代に栄えたインダス文明と共通した様式を一部持ち合わせている。両文明が互いに影響し合っていたことは確かだろう。連続する山羊文やネコ科の動物の図が神秘的だ。


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パキスタン バローチスターン地方
前3500〜前3000年頃
土器

プレインダスと称される、先インダス文明期の土器。今から5000年以上前に造られた、気が遠くなるほど古い考古遺物である。窓枠の中に格子を描いたような文様、魚をついばむ鳥、規則的な幾何学文など、不思議な図像が描かれている。副葬品の一種で、その図柄は彼らの宗教観を表していると推測される。


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パキスタン モヘンジョダロ
前2600〜前1800年頃
滑石

インダス文明期に造られた印章。これらを総称してインダス式印章と呼ぶ。印章に描かれる図像は様々だが、一角獣は主要な題材とされる。また、彼らが使用したインダス文字が刻印されている。背面にツマミがあり、ここに孔が空いているため、紐を通すことができる。持主は首からぶら下げていたのだろう。


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アフガニスタン マザーリ・シャリーフ
12世紀頃
土製

12世紀のアフガニスタンで造られたオイルランプ。共通して青緑の美しい釉薬がかけられている。無駄な装飾を排したシンプルで洗練された造り。機能性を優先した日用品で、ランプは電気がまだない当時は闇を照らす生活必需品だった。暗闇に光を灯す性質から宗教的にも重要視され、死者と共に副葬された。


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アフガニスタン マザーリ・シャリーフ
10〜11世紀頃
土製

10〜11世紀のアフガニスタンで造られた香水瓶。薔薇香水と呼ばれる、薔薇から抽出した香水が入れられていた。ガラス製で、器の表面が銀化している。長期間地中に埋まっていたために起きた化学変化である。共通して頸部が窄まった造りになっている。これは内部の香水が気化するスピードを遅らせる工夫。


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アフガニスタン マザーリ・シャリーフ
10〜11世紀頃
ガラス製

中世アフガニスタンの水差し。口縁は三葉形と呼ばれる、特殊な形状を有している。古代ギリシアの酒器オイノコエに影響を受けた造形である。ローマ時代のシリアで吹きガラスの製法が登場して以来、人類は安価でガラスを製造することが可能になった。その技法は中東にも伝わり、独自の工芸を発展させた。


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アフガニスタン マザーリ・シャリーフ
10〜11世紀頃
土製

アフガニスタンの銀化ガラス片。生活用品としてのガラス製品は当時から安価であり、割れてしまうとただのゴミで、粗雑な扱いを受けた。割れてしまったガラス片は、井戸などに乱雑に打ち捨てられた。だが、長い時を経て地中で化学変化を起こしたガラス片は、虹色の輝きを放つ神秘な姿に変容して現れる。


今回はパキスタン・アフガニスタンの考古遺物の中から厳選し、簡潔な形で紹介した。日本ではまだまだマイナーな分野の考古遺物ではあるが、その素晴らしさは他文化に引けを取らない。古代文明と言えば、古代エジプト、古代ギリシア・ローマがメジャーどころではあるが、それらと同時代もしくはずっと前の時代にも他地域で行動な文明が発達していた。教科書や一般書籍では紹介されづらいマイナーな文明こそ、積極的に紹介したいというのが願いである。これを読んだ誰かが、ほんの少しでも悠久の古代文明に思いを馳せ、興味を持ってくれれば、それ以上の望みはない。


Shelk 詩瑠久🦋

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