結婚契約とパートナーシップの行く先について考えてみた。
久々に結婚の話をしようと思う。
パートナーシップについて、以前『パートナーシップ3.0』へのアップデートが必要だという記事を書いた。
<まとめ1>パートナーシップ3.0とは
<前回のまとめ>
⑴改姓に際して親への忖度が絡み、結果的に96%が男性側に変えている。背景には内面化された家制度と家父長制の価値観がある。(パートナーシップ1.0の名残)
⑵一方で親世代もパートナーシップのあり方が劇的に変わっていく時代の当事者だった。1度価値観はアップデートされている。(パートナーシップ2.0)
⑶今はさらに社会構造も価値観も新しくなり続けている。私たちは家制度と決別し、個人の信頼関係に基づいたパートナーシップを認め、同じようにアップデートするべきだ。(パートナーシップ3.0)
<まとめ2>パートナーシップ3.0が掲げる価値観
また、次に思考実験を通して『パートナーシップ3.0』がどんな価値観になるのか、より言語化を重ねた。
<前回のまとめ>
パートナーシップ3.0の時代の結婚契約の役割
今までのこの整理を経て、次に、結婚契約に何ができるのか?そして、ブライダル企業は、このパートナーシップ3.0の時代をどう生き抜くのか?について考えたい。
それまで恋愛関係など、ほぼ友人の延長線上で対等に生きてきたカップルが「結婚」という枠組みに規定される。その瞬間に発生する社会的な関係性の変化を感じたことはないだろうか。法的には財産分与だったり、相続権、共同親権など色々と発生する権利と義務があるが、それらが結婚したからと言って周りに明らかに意識されるわけではないと思う。「あ、結婚したんだ」という、「何か一区切りつけた感」はなんなのだろう。
それでは、結婚とは何を意味するのか。仮に法律上の効果を無視した場合ー例えば事実婚や同性婚、まだ籍を新たに作っていない(俗に言うまだ入籍していない状態の)夫婦にとって、結婚は恐らく、「互いの信頼と互恵関係にあることを確認する状態」であり、かつ「当人以外からもそれを確認することができるよう区別された状態」なのではないかと思う。
区別をつけた状態なのだとすれば、当然社会的な関係性は変化する。仮にパートナーシップ3.0がライフステージによって可逆性を持っていたとしても、そこまで強固な信頼・互恵関係は他人と容易に築けるものではないのだから、時間軸を点で見れば不可逆性が高い。だとすれば、やはり「区別をつけた」ことに対して社会的なエクスキューズは必要ではないか。それが、伝統的な結婚式の果たす本質的な役割ではなかっただろうか。もしかするとこれからの結婚式というものも、この「区別をつけた」関係性を承認し、さらに祝福を与えることがコアバリューになるかもしれない。
結婚式の本質は「承認」と「祝福」
日本の結婚は元々、両家を含めて社会に認められる形で成立する別姓文化だった、もしくはそもそも姓の概念が曖昧だった(家系図で「女」とだけ表記されたり)ということが言われていたりするが、つまり結婚するということは姓の有無に関わらず、「夫婦の関係に区別されること」を意味していたし、それを周囲の関係者が承認、祝福することで成立したはずだ(誰からも認められなければいくら当人たちが結婚していると主張したとしても結婚は成立し得ない)。
だからこそ、結婚式は「承認」と「祝福」の機能を持っている。神や人が証人となって関係を承認し、「おめでとう」と肯定することで祝福を与える。
だとすれば、ブライダル企業が持っているコアバリューは「必要としている人に承認と祝福を与えること」ではないか。それは必ずしも結婚式の形でしか実現できないものではないはずだ。マッチングアプリと結婚事業会社のM&Aのニュースは非常に得心がいく。ブライダル企業は何も挙式ビジネスだけで縮小市場を生き残る必要はない。(実際に事業を多角化させていこうとする業界の先駆者はすでに出てきている。)
↑適当に作ってみた。個人的な所感としては、「承認」のための事業が今業界ではまだ事業として伸び代があると思っている。色々思うところがあるがまとまっていないのでここでは割愛する。
コアバリューを活かすために取り払うべき壁
ブライダル企業のコアバリュー「承認」「祝福」を事業としてフルに活かすために、どうしても今取り払う努力が必要な壁がある。仮にここでは、「パートナーシップ2.0の壁」と呼ぼう。
「結婚式」「ブライダル」という言葉のイメージには、すでに旧パートナーシップ(パートナーシップ2.0:恋愛結婚の時代、ポスト家制度)の色が染み付いている。そもそもパートナーシップを段階に分けて捉えようとすると、明らかに「結婚式」のイメージからかけ離れた層があることに気づく。
私の頭の中の「これまでの結婚式を挙げるカップルというもの」はこんなイメージ。もちろんそれ以外で挙式するカップルの事例はあるし、異論は認める。
細かく考えていくと、パートナーがいる状態から挙式まではこのくらいハードルがあるんじゃないかと思う。その結果が、ブライダル総研が発表している「挙式するカップルが49%しかいない」という数字だ。
結局図示するとこんな感じ(個人の主観)。結婚式を挙げるカップルのマジョリティイメージは、パートナーシップ2.0までのカップル。つまり、家制度に適合し、関係者に「承認」「祝福」をしてもらうための説明コストがより低いカップルだ。私のような事実婚希望者や同性婚、或いはこの先浸透するかもしれない「性愛関係に基づかない、純粋な互恵関係を契約するパートナー同士」は結婚式の様式に則らないため、挙式のハードルが非常に高い。
なぜなら、結婚式は多くがいまだに「パートナーシップ2.0のカップルのためのパッケージ提案」だからだ。結婚式で多く取られる形は、至る所に旧バージョンの価値観を反映している。パートナーシップ3.0の価値観を持つカップルにとって、この形の結婚式を挙げることを通して得られる「承認」「祝福」は、当人たちにとって本意ではない形で「承認」を受けるということであり、つまりそれは祝福にもなり得ない。パッケージ提案であるがゆえに、ここから外れようとすると逸脱となり、説明コストが発生するため、この話し合いの過程は相互理解にもなるが、かなりの負担となる。
上記に挙げたのはほんの一例に過ぎない。ちなみにこれを枠組みの中で敢えて打破する試みをされた横田祐美子さんの記事は本当に勉強になったし、私も結婚式は挙げたいので非常に参考になった。
このパートナーシップ2.0の壁がある限り、というか、顧客になる層に対してイメージされている限り、ブライダル企業が「誰でもウェルカム!」と呼び掛けたところですぐに顧客は「私もこのサービス受けたい!」とはならない。或いは、そのイメージが従業員に染み付いている限り、「誰でもウェルカム」な事業運営ができるとは思えないのだ。
今のままだと、ブライダルの市場はパートナーシップの捉え方が変わる潮目で縮小していくが、「承認」と「祝福」をコアバリューとした時には事業の多角化の可能性が見えてくる。しかし、そのためにはパートナーシップの捉え方を2.0から3.0にアップデートしなければ、社員も顧客も昔のイメージから脱却できない。だからこそ今業界に求められているのは、そもそも「一体顧客はどんなパートナーシップの悩みを抱えているのか」「どんな理想を持っているのか」把握することだと思う。マッチングビジネスや、場合によっては離婚相談を受け付ける弁護士法人とのと業務提携も可能かもしれない。あまり考えられていないのでここでは深く掘り下げないが、ブライダル業界にこそDXが必要だと感じることがここ最近増えてきた。
まとめ
まずは、パートナーシップ3.0が存在するという認識を持つこと、そしてサービスの内容をそこに合わせて大きく追加・アップデートしていくことが重要ではないか。その先に、私たちの新しいパートナーシップの形を承認・祝福してくれる世界が開けている、と思う。
そして私自身がそんなパートナーシップ3.0のあり方について考え続け、実践していきたい。(近いうちに事実婚で結婚式を挙げてみたいと思っている。)一連のnoteを書いてから、非常に興味深い相談をしていただけることも増えてきたし、勉強できていないことも多いので、そういった議論もぜひ積極的にしていきたい。
何かあればぜひ思考に付き合わせてください。待ってます。
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