小さな山の中で家具職人をしている若者の話【12】シショーという上司
前の話↓
私がどうしてこんな過酷な生活を続けているのか。
職場環境は劣悪で、ハードワークに安月給。
一人地元を離れて山の中で頑張る理由。
その理由の一つにシショーの人柄が好きだということがある。
もちろん、仕事内容が面白いとか、自分が成長できるとか、色々な理由があるのだけど、一緒に働く人がどんな人か、というのはとても重要な問題だ。
前の会社でも先輩、上司を始め同期のことも大好きで、辞めた今でも仲良くさせてもらっている。とてもありがたいことだ。
人運は良い方で、人に恵まれ、人に助けられて沢山の壁を乗り越えてきた。
初めて東京で一人暮らしをする時も、ほとんどの家電を先輩がくれて、今でもそれを使っている。
大失恋をして生きる気力を失くした時も、友達が毎日連絡をくれたり、約束をドタキャンしても家まで押しかけに来てくれた。
自分を大切にしない事は、自分を愛してくれる人の事を大切にしていないのと同じ事だと学んだ。
シショーは私と二回り年齢が離れているのに、全くその差を感じない。
カルチャーにも敏感だし、最新機種にも詳しい。
オジサンだけれど清潔感があってお洒落な人だ。
シショーとは音楽の趣味が合う。
出張の際、車で長旅になることはよくあるのだが、シショーのハイエースには良いスピーカーがオプションで付けられていて夜中の移動になってもメチャ楽しい。
90年代のポップスから現代のシティポップまで、誰々の新譜が良いとか、このフェスのメンツはアツいとか、音楽トークは尽きない。
シショーと同じ年代で、最近のシーンの音楽に興味がない人は多いだろう。
もしもシショーがその類いの人で、カーステレオから流れてくる音楽がずっと懐メロだったら、私はいつか発狂するかもしれない。
もちろん懐メロも好きなの、中森明菜もドリカムも、尾崎豊も好き。
でも出張には、tofubeatsやiriやTENDREでアゲていきたいのさ。
そんなシショーは滅多に怒らない。
仕事として注意されたり、指摘されることは多いけれど、怒鳴ったり荒い言葉を使ったりしない。だから好きだ。
人へのフォローも欠かさないし、女性への配慮もある。人から好かれるタイプだ。
シショーがいるのでここで頑張ろうと思うことが出来る。
迷惑ばかりかける生意気な私だけど、今日まで見捨てないでいてくれてとても感謝している。
上司のために頑張りたいと思える職場で働いていたい。
部下の私たちは尊敬する上司を見つけ、上に立つ人間は下の者の為に動く。
仕事の上下関係はウィンウィンが良い。
雇用主が偉くて、従業員が弱いだなんてことはない。対等でいたい。
同じ方向を向いている事、それがとても大切だと思う。
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