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小さな山の中で家具職人をしている若者の話【11】愛車はサンバーの軽トラ

前の話↓

山の中にある工房へ行く手段は限られている。
バイクか、車か。

水上を走るということさえなければもう少し幅も広がるだろうが、あそこを歩いて渡るのはかなり厄介。

毎日長靴かしらね。


更に工房があるのは、小さな集落の奥の山。
工房から徒歩15分ほどの場所にバス停もあるけれど、本数はとても少ない。


私は原付も持っているので、暖かい季節は原付で通ったりもする。
ちょっと増水したらもう無理だけれど。


ここで働く事が決まり、会社からは軽トラを与えられた。
スバルのサンバー。
社用車を通勤のために貸してもらっている。
納品でも時々使うもの。


この軽トラ、かなりオンボロ。


傷だらけだし、凹んでいるし。
ワイパーをつけると変な音がする。

アゥーアゥー!

みたいな。変な声。  


窓の開閉は手動のハンドルで、鍵も直接挿すタイプの、古いボロボロの軽トラ。

これでも私は年頃の乙女。
これでスーパーに買い物も行く自分がなんだか可笑しい。


納品先が遠方の場合は、こいつを高速でブッ走る。すぐに息切れしちゃうこいつが愛車。


1年半程したある日、高速を降りたところで急にアクセルが反応しなくなった。
全開で踏んでも減速していくばかり。
やばい、ついに壊れた!とめっちゃ焦った。

とても酷使していた時期だった。
現場と工房の行き来、高速を使いながら片道2時間ほどを往復する生活を続けていた。

その時はすぐに直ったが、そろそろガタが来ているのかもしれない。


この軽トラは会社が中古で買ったものだ。
買ってから気づいたらしいがどうやら事故車だったっぽい。
前のライトが片方、中身がイカれているらしい。
次の車検は通らないと言われた。


結局私が使うようになってから二年ほどで廃車にすることに決まった。


私と激動の二年間を一緒に駆け抜けた相棒との別れである。


軽トラの後任はジムニー。
マットブラックに塗装され、車高が通常より高めの、これまたイカついジムニー。

会社のボスの趣味だ。
こだわりカスタマイズされたジムニーはとってもイケてる。

鍵はボタンで施錠、窓もボタンで開閉、ワイパーも静か。


最高でしょ?



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