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小さな山の中で家具職人をしている若者の話②面接に行った二日後に…

前の話↓



今の会社はインスタで見つけた。
#スタッフ募集 を検索して、カフェや美容室や様々な業種の投稿がある中から偶々。
我ながらよく見つけたなと思う。

工房はA市にあるが、事務所は東京にもあるということで、とりあえず面接をすることに。

A市は西の観光名所。私も一度旅行で行ったことがある。憧れの街だ。
そんな街なら一人東京を離れても素敵ライフが待っているかもしれない。
少し胸が躍った。


面接で確認したかったことは三つ。

一、会社内の雰囲気
二、労働時間
三、給料

どれも譲れない項目ではあるが、当時の私は一文なしに近かった。

というのも、前職で忙しく働き、心が疲れ切っていた私はとても働きながら転職をする気力がなかった。

更に辞めるタイミングでちょうど世界はコロナになり、最後の月の給与も大分少なかった為、次の職場を探しながら自宅でできるバイトをし、小銭を稼ぎながら残高が減っていくのを眺めている日々を送っていたから。

平日は終電まで働き、毎日の食事はコンビニ。
土日は渋谷や青山へ繰り出し友達と日頃の鬱憤を晴らす。社会人二年目の終わり、貯金などしている筈もなかった。

だから正直早く決めたかった。


面接で分かったことは、労働時間はどうやら長そうだ、そして給料は少ない。
けれど仕事内容は面白そうだし、実績もしっかりある。私は修行の身、当分は我慢もしなくちゃいけない。お金は生活に困らなければ十分だ。


面接をしてくれた東京支部長は

「給料はこれくらい出せるようにがんばる。働いていけば増やしていくし。(大嘘)」

と言ってくれた。


私は

『生活できれば大丈夫です。(大嘘)』

と返事をした。


面接というのはお互いに良く見せようとしてまうのが性。


「工房はA市にあるけどそれは大丈夫?山の中にあってびっくりするかもしれないけど、前に川が流れてて良いところだよ。」

『はい、大丈夫です。(むしろそうしたかったんです!)』


「ちょうど来週東京で納品があるから、現場見に来なよ。先にA市に行って向こうの雰囲気確認して、一緒に東京に戻って納品手伝ってくれたら嬉しいな。」


おっと、なんか急に話が進み出したぞ。
でも納品のお手伝いか、それはしたいな。
正式に決める前に仕事の雰囲気を見れるのはありがたい。

『分かりました。よろしくお願いします。』



面接の二日後、私は新幹線に乗っていた。

何かが始まる気配がした。

期待と不安でドキドキする胸を押さえて、

東京支部長が言うように、山奥で驚くことになるとも知らずに。



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