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小さな山の中で家具職人をしている若者の話③電波無し、水道無し、トイレ無しの家具工房。

前の話↓


新幹線、在来線を乗り継ぎ工房の最寄駅まで到着した私はシショーと出会う。

シショー、私の師匠となるこの人は長髪を後ろで束ね、長い顎髭を生やし、丸眼鏡をかけている、小柄の男だ。
工房へ行くのに車で迎えに来てくれた。
シャンパン色の自動車に乗り込み挨拶を済ます。

シショーは実年齢よりも大分若く見える、優しそうな口調なので私はほっとした。

「ここから工場までは30分くらいかかるしな〜。それにしても東京からよお来たなあ。」とシショーは笑う。

自分でも自分のフッ軽具合には驚く。

車の窓からどんどん田舎の景色になっていく外を眺めていた。

「この集落を抜けてあの山の方やねん。川を渡ってくすごいとこやけど。」
と指差す山に入っていく。

あ、ガチの山だ。

道はどんどん荒くなり、狭くなり、家は無くなっていく。

「夜になると鹿とかおんで〜」
『まじすか』

「あと電波無くなるし気をつけてな〜」
『まじすか(?!)』

何に気をつけろと言うのだろうか。
とりあえず急ぎの連絡は無いので良かったが、

ちょっと不安になった。


そして川が現れた。

…ここを通るの?


川を渡るというのは橋で渡るのではない。
ガチの川、水の上を走るのだ。


ガチの山、ガチの川。


なんだかすごいところに来てしまった気がする…。
不安は増していくばかりだ。


初めて水の上を走った時はちょっと怖かった。リアルインディジョーンズか?毎日がジャングルクルーズなのか?


そしてもう一度川を渡り(今度は橋の上を)目の前に工房が見えた。


山の中の工房なので、ログハウスみたいな見た目を想像していたのだが、現れた工房は壁にトタンと銅板が貼られていて

なんか、イケてる

と思った。


「あとトイレ無いねん。」
『え!そうなんですか?!』

もう何個目の衝撃か覚えていない。



続き↓

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