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小さな山の中で家具職人をしている若者の話④建物というか、半分外
前の話↓
なんか、イケてる
と思った工房は、単管で作られており、よく見ると一部壁がブルーシートであった。
単管にブルーシートを紐で括り付けただけの壁。
風が吹くとその青い壁は揺れ、隙間からは外が見えている。
工房の中は2本のでかい木が突き抜けており、その木を囲むように壁があった。つまり見上げれば、屋根にはその木より一回り大きい穴が開いている。
ここから雨が吹き込むことは容易に想像できる。
やっぱりとんでもないところに来てしまったのではないか…。
シショーは機械などの説明をしていたはずだが、私はこの環境への驚きと不安で全く耳に入らなかった。
私はここでやっていけるだろうか…。
奥に物置小屋の事務所がある。
ありとあらゆる物が雑多に置かれ、真ん中にデスクと冷蔵庫や電子レンジもあったが、
全てのものがボロボロに見えた。
本当にここで人が生活しているのか?
半分外のようなこの建物には沢山の虫がいる。
私は虫が大の苦手だった。
でもずっとそれを克服したいとも思っていた。
これは良い機会になるかもしれない…!!
なぜか私はポジティブを爆発させていた。
山の澄んだ空気も、広い青空も、木々の緑も、川のせせらぎも、都会に疲れた私には最高に心地よかった。
こんな自然を求めてた!
ただ電波が無くて、水道が無くて、トイレが無いだけ!
早く仕事を決めたいという焦りと、こんな変な場所面白すぎる!という謎のポジティブと、何よりなんかもうこのまま働く感じになって断れる雰囲気ではなかった。
じっくりゆっくり悩んでいたら、こんなところには来ていなかっただろう。
だって、電波も水もトイレも無いのだから。
虫がいっぱいの、雨吹き込み放題の、山の奥地など。
今思うとこれが会社のやり口だったのか。
なんとなく気がつくと取り込まれている。
当たり前のことなんだけど、何か決断をする時には自分も他人も疑って熟考しなければならない。若者は浅はかだ。大人になる過程で様々な経験をし、より良い判断ができるようになる。
今の私ならちょっと考えさせてくださいの一言くらい言えるだろうが、22歳、大人に囲まれてそんなに堂々とはできなかった。
そんなこんなで、とりあえずは試用期間で働くことに決まった。
3ヶ月程度で正社員になれると思ったが、試用期間は一年。
その間年金や保険を自分で払わなければならない。
「お互いにここでやっていけるか、一年くらいは様子を見ましょう。」
正直なところ本当に大丈夫か、不安は残った。けれど新しい門出に足踏みもしていられない。
私は前を向いて挑戦することにした。
もしも合わなかったら、また次を探そう。
そんなことを考えた初夏の日。
もう記憶も薄れつつある。
気がつけば二年が過ぎた。
全速力で駆け抜けた激動の二年間、まだまだ衝撃の始まりに過ぎない。
続き↓
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