いたずら好きのロボットと、少年と、不思議な道具「ろぼっとろぼちゃん」/ちょっぴりマイナーな幼児向けF作品⑫
「ちょっぴりマイナーな幼児向けF作品」と題しつつ、かなりマニアックな幼児向け作品を紹介していくこのコーナー。本稿では1961~62年に短期間連載された「ろぼっとろぼちゃん」をご紹介していきたい。
ただ、この頃(60年代)は、やたらに「ロボット」「ロケット」を題した作品が多く、さらに似たタイトルなのに、ジャンルは科学冒険物語と日常系SF(少し不思議)に分かれていたりと、かなりややこしいことになっている。
僕自身もタイトルを聞いてどんな話だったかパッと出てこないし、内容面でも混乱してしまう。
そこでまずは、簡単にこの時期の作品をジャンル別に並べてみよう。(ただし、ジャンル分類は、若干曖昧な部分も含まれる。その点は後ほど補足する)
タイトルを書き並べてみても、ジャンルの区別はかなり難しい。
登場人物たちは、いつもで特殊能力を持っていたり、不思議な道具を作ったりする。つまり、どんなジャンルであっても藤子先生の代名詞となるSF(すこし・不思議)要素が含まれているためだ。
そういうことで区別は曖昧ではあるのだが、本稿では、バトルがメインなのか、日常の事件がメインなのか、そうした内容面で今回のジャンル分けをしている点にご留意いただきたい。
ちなみに64年からは、藤子不二雄先生最初の大ヒット作「オバケのQ太郎」が始まり、やがてほぼ全仕事がオバQとなってしまう。2つのジャンルを描き分けている時代は、そこで終了となったのである。
さて、「ろぼっとろぼちゃん」の立ち位置を確認したところで、本作の内容について見ていこう。
本作は、珍しく主人公が二人体制の作品である。まずは人間の少年であるけんちゃん。あごひげの長いおじいちゃんと一緒に住んでいる。その他の家族は不明。
もう一人の主人公が、博士が作った子供型ロボットのろぼちゃん。手がバネ仕掛けで伸びたりと、体に各種ギミックを揃えている。ロボットながら、いたずらっ子で、博士の発明品を勝手に使っては、いつも騒ぎを起こしてしまう。
基本構造としては、博士の発明品を使っての騒動と、その顛末を描くギャグ篇。仲良くなったけんちゃんとろぼちゃんが、二人で一緒にいたずらしては、そのしっぺ返しを食ったりする。
色んな作品で書いているが、本作も「ドラえもん」や「キテレツ大百科」に連なる「道具」がメインのお話である。ただし、ロボット少年が不思議な道具を使って無茶するという点がユニークだ。
では簡単ながら、全8話の一言感想&考察を綴ってみよう。なお、8話の内3話は「たのしい一年生」の本誌ではなく別冊付録に収録された作品で、それらはページ数が多く、大仕掛けの作品であるのが特徴である。
道を歩くタコに墨を掛けられ、追いかけるけんちゃん。タコはラジコンのおもちゃで、ベレー帽を被った少年が操縦していた。少年は「おもちゃならもっとある」と言って、色々なラジコンを見せてくれる。全ておじいちゃんが作ってくれたのだという。
少し変わった少年であるが、飛行機が木の枝に引っ掛かると、なんと手をバネ仕掛けで伸ばして取ってしまう。これに驚くけんちゃん。そこへ博士がやってきて、実はこの帽子の少年は、博士が作ったロボットだと明かされる。
名前はろぼちゃん。こうしてけんちゃんは、風変わりな友だちを持つことになるのだった。
2話目にして、別冊付録収録の拡大版。ろぼちゃんがけんちゃんの家に遊びに行くところから始まる。すっかり二人は互いの家を行き来する友人になっているようだ。
けんちゃんとけんちゃんのおじいさんが朝顔に水をやっている。「大きな花を咲かせたい」という言葉を聞いたろぼちゃんは、「もっと水をやれいいんだ」と考える。そこで放水車のおもちゃを持ち込んで、大量の水を放出、それはおじんさんを直撃してしまう。
二人はろぼちゃんの家に行き、博士の研究室を見学させてもらう。かべかけテレビという、時代を先取りしたものから、しゃっくりを止める目的の突然大きな声が出る機械などが並べてある。博士の発明品の幅は相当広いようだ。
研究室で草木を大きくするクスリを見つけて、これを朝顔にかければいいと考える二人。けんちゃんの家に戻って、朝顔にかけると・・・グングンとツタが伸びていき、雲まで届いてしまう。それはまるで、ジャックの豆の木のようであった。
ものを写すのではなく、写真を入れてシャッターを切ると、本物が現れるというカメラのお話。博士が遊んではいけないと言って金庫にしまっておいたのに、いたずらっ子のろぼちゃんは、ネズミロボットの金庫をかじらせて、奪取。
けんちゃんと一緒にこのカメラで遊んでいくのだが、写真ならまだしも、マンガを写真代わりにカメラに入れて写し始めると、マンガのキャラクターが大騒ぎ。さらに海の写真を入れてしまい・・・。
藤子先生のひみつ道具の十八番は、何と言ってもカメラ。その意味で、基本中の基本とも言える作品である。
別冊付録の拡大版。タイトル通り、光を当てると何でも動き出すライトを使って、ろぼちゃん・けんちゃんで色々と試していく。例えばほうきにライトを当てれば、庭掃除をしてくれるし、会話もOK。つまり、このライトはロボットを作り出す道具なのである。
そしてロボットを作る話と聞いて、藤子ファンならすぐにピンとくるのが「ロボットの反乱」というテーマである。以前特集記事も書いたが、藤子世界ではロボットは、人間の思い通りに動いてはくれないのだ。
本作も、「もう働きなくない」とホウキやちりとりやバケツが反乱を起こし、ライトも奪われてしまう。そして、道具たちは「人間はぼくらの敵だ」と決起し、けんちゃんたちに襲い掛かる・・・!
12月号の定番はクリスマス。本作は発明家の博士がサンタクロースのロボットを作って、子供たちにプレゼントを配って回らせようとするお話。
スイッチがあべこべに入り、部屋中のものを袋に詰め込んだりするアイディアが抜群である。
博士が作った雪を降らせる機械を使おうとするろぼちゃん。ところがその機械で作った雪は「生きている」ので使うなと博士に止められる。
もちろん、言うことを聞かないいたずら坊主のろぼちゃんは、勝手に使って大雪を降らす。そしてこの雪で雪だるまや、ライオン・ゴリラ・ゾウなどの動物を作るのだが、これが深夜12時を回ると一斉に生命を持ち、動き出す。
知能を持った動物が人間に歯向かうお話も、藤子作品頻出のテーマであるが、本作もその系譜の作品と言えるだろう。
光を当てると考えていることがわかるライト。ろぼちゃんとけんちゃんは町へ繰り出し、色々な人(+動物)にライトを当てて、考えていることを見ていく。
やがて迷子の子供を見つけて、ライトに映し出された住まいを探してあげることに。
柱に瑕をつけて背比べをすると、けんちゃんは昨年より身長が伸びている。ところがロボットのろぼちゃんの背は、昨年から全く変わっていない。どうして伸びないのか博士に聞くと、ロボットだものという答え。ろぼちゃんは悲しくて泣いてしまう。
ロボットと人間の少年は、いつまでも仲良しの友だちではいられない・・・そんな切ないメッセージが見え隠れする。
ろぼちゃんを思い、博士が大きくなるガスを掛けて、ろぼちゃんの背をけんちゃんと同じにしてくれる。優しいろぼちゃんの「肉親」なのである。
ひみつ道具系のお話ということもあって、その後の藤子作品で良く見るパターンのお話も多い印象。逆を言えば、本作で使われたアイディアは、その後の藤子作品にどんどん使われていっているということになる。
そういう意味でも、やはり本作の検討・熟読は欠かせないのである。
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