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ヒーローに必要なものは睡眠である!『パーマンは眠い』/Fキャラも不調になる③

春眠暁を覚えず。寒過ぎず、暑過ぎないこの季節は、朝はのんびりと布団にいつまでも包まっていたいもの。

けれど、平日は仕事をしなくてはならない。いつまでもこうして寝てはいられない。仕方がない、起きるか。いや、午前中は急ぎの案件はなかったな・・。ほんじゃ、もう30分寝ておくか・・・。

ま、春でなくても、いつもそんな感じです。


さて、天下のヒーロー・パーマンは、日頃悪者を追いかけているのだが、犯罪者は夜に活動しがちなので、どうしたってパーマンも夜中に活躍しなくてはならない。けれどヒーローも人の子、眠さには敵わない。睡眠不足では犯人を捕まえることなんてできないのである。

コピーロボットに日中の活動は代わってもらえるが、眠ることだけは自分が必ず実行しなくてはならない。パーマンにとって、うまく時間を見つけて眠ることが、もっとも大切な仕事なのである。


「Fキャラも不調になる」シリーズ第三弾は、睡眠が足りずにヒーロー活動に支障をきたす「パーマン」の物語を取り上げる。ただしパーマンはタダでは転ばない(眠らない)。寝ながら悪者と戦い、勝つ。そんなお話となっている。

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「パーマン」『パーマンは眠い』
「小学四年生」1968年4月号/大全集5巻

パーマンたちが夜中に追いかけているのは、ピストル強盗の二人組。散々追い回したが見失ってしまう。寝不足のパーマンは電柱に寄りかかって眠ってしまうほどだったので、パー子が少しだけ家で休むよう勧める。お言葉に甘えて家へと戻るパーマン。

家に着くと既に夜が白んでいる。パーマンは寝ぼけ眼で、コピーロボットがスヤスヤ寝ている布団の中へと・・。

翌朝、いつまでも起きてこないみつ夫を呼びに、ガン子が部屋へとはいってくる。すると、一つの布団で二人のみつ夫が並んで寝ている! 驚き慌てたガン子は、階段を駆け落ちながらママを呼ぶ。

「しまった!!」と目を覚ますみつ夫は、パーマンになって外へと飛び出す。昼寝をする場所を探さなくてはならない。

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土管が何本も置かれている空き地を見つけ、その内の一本に身を隠して眠ることに。いびき高らかに眠り始めるが、そのいびきで起こされてしまう、別の土管で眠る二人組の男。彼らこそ、パーマンたちが夜を通して追い回していたピストル強盗犯だったのである。彼らもまた、寝不足解消のために仮眠を取っていたのだ。

この空き地は子供たちの遊び場所になっていたようで、大勢の子供たちが現れて、騒がしく忍者ごっこを始める。「うるさい!!」と飛び起きたパーマンんと、強盗二人。そこで目が合って、交戦となる。

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強盗たちはうまく逃げだして、身を隠すためにどこかの家へと入り込むのだが、そこはラーメン大好き小池さんの部屋であった。

強盗たちを見失ったパーマンは、パー子たちを呼んで、近くにいるはずだと指示を出す。パーマンはまだ寝てないからと、春のポカポカ陽気の屋根の上で眠るのだが、風に流されて偶然小池さんの部屋の中へ・・。

すると、小池さんの布団で寝ていた強盗たちと再び鉢合わせ。慌てて逃げ出す強盗二人。パーマンは相手が強盗だからというより、眠りの邪魔をされることに腹を立てている

強盗側からしても、逃げて隠れてもパーマンが追ってくるので、安心して眠ることができない。もはやパーマン対強盗の争いは、睡眠時間確保の戦に変容しているようだ。

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パーマンは人気のないところを求めて空を飛ぶ。強盗たちは車でパーマンを追う。パーマンは半分眠った状態で飛ぶので右へ左へとフラフラ。強盗の車もパーマンに合わせて右往左往しているうちに居眠り運転になってしまう。とことん眠りとの戦いである。

強盗のフラフラした運転を見て、パーマンは酔っ払い運転かと思って、注意しに降りてくる。そして運転していたのが強盗たちと気づかずに、車のルーフに乗って眠ってしまう

強盗二人は、このまま人のいない場所へ連れて行って、パーマンをやっちまおうと考える。そして山奥まで運転して車を泊め、強盗たちはピストルでパーマンを狙う。

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するとタイミング良く目を覚ましたパーマン。しかしまだ寝惚けており、ここなら落ち着いて眠れると言って、フラフラと木の上へと飛んで行って、寝床を確保する。


強盗は、後を追って木に登り、再び拳銃でパーマンを狙う。

「さあゆっくり眠らせてやるぜ」

そして、今度もタイミング良くパーマンバッチが鳴り響き、パーマンは目を覚ます。パー子からで、強盗たちがどうしても見つからないので手伝ってという内容である。

ここまで、何度も寝ようとしては起こされているパーマンは、ついにガチ切れ。「こんなものがあるから悪いんだ」と、寝ていた木をへし折って、パーマンバッジをドカンドカンと激しく打ち付ける。するとこの木に登っていた強盗たちが振り落とされ、ノックダウン。


パー子とブービーが、「人ばかり探させて」とパーマンのいる場所へ飛んでくる。すると、グーグー眠るパーマンの脇で、二人の強盗たちも伸びている。

「さすがはパーマン!! ちゃーんと仕事はしてるのね」

と感心するパー子とブービーなのであった。

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パーマンが眠っている間に、偶然犯人を捕まえてしまうという本作のアイディアは、それほど目新しいものではない。何が素晴らしいかと言えば、そのアイディアを具現化するストーリーである。

パーマンは眠る場所を探したいだけ。強盗たちも眠りたいのに、パーマンが邪魔していくるので、隙をついてピストルで殺そうと考える。両者とも「眠りたい」が最大のモチベーションになっている点がユニークだ。

途中で小池さんを出したり、みつ夫が二人並んで寝たりと、シンプルなストーリーにアクセントも加えている。

藤子作品はアイディア倒れにならないストーリーテリングが最大の魅力だということが本作からわかるのである。

結論:ヒーローは寝ても寝なくても大活躍する!?


「パーマン」考察、溜まってきています。


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