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税金は まずは所得の 把握から『パーマンは重税を取る』/税金は嫌いだ!①

国の借金が増えている。返すアテがあるなら問題ないのだが、今後日本は急速に人口を減らしていくので、普通にしていては税収が上がっていく見込みはない。返済能力は乏しくなっていくと考えるのは普通だろう。

それでも毎年のように、国家予算が増えていき、その部分だけ見るとまるでもの凄く成長している国のように思えるけど、実体はまるで違う。もはや日本経済は停滞が当たり前の通常運転となってしまっている。

そんな国家の衰弱が見えているところに、防衛費を大幅にアップさせてその分を国民が負担するという話が持ち上がっている。

国民生活に大きな影響を与える新方針だが、まだ国会も1ミリも審議されていないわけで、それをさも既定路線のように流布されても困る。

年明けからの通常国会は目が離せない。


さて、「税金」と聞いて嬉しい気持ちになる人はいないだろう。自分が稼いだお金が天引きされ、よくわからない使い方をされているかと思うと、怒りすら湧いてくる。

藤子作品の中には、「税金」をテーマとした作品がいくつかある。そこで、「税金は嫌いだ!」と題して、2作品ほどご紹介していきたいと思う。子供社会に突然現れた税金の仕組み。それはどんなものだったのか。税の意義なども考えつつ、作品を見ていこうではないか。


「パーマン」『パーマンは重税を取る』
「週刊少年サンデー」1967年41号/大全集2巻

もともと税金は、富める者に少しずつ余剰分をはき出してもらい、それを蓄えて、生活困窮者に配るという、富の再分配が目的だった(はず)。集めることが目的ではなく、それをどう使うかをしっかり考えることが重要だ。

マンションの管理費なども税金みたいなものだが、これは住民が少しずつ拠出しておいたお金を、住民共通の利益になるような使い方をするのが目的である。

パーマン(みつ夫)たちの世界では、どうやら野球にお金が掛かっているようで、そのために税金システムが導入されることになった、というお話・・。


各人、お小遣いは限られているので、バットが折れたり、ボールを無くしたり、グローブが古くなったとしても、簡単に替えを用意できるわけではない。みんなで使う物でもあるので、みつ夫は共同の持ち物にすればいいのでは、とアイディアが浮かぶ。

みつ夫の考えはグッドアイディアだ、と言い出したのは社六君。かつてパーマンの正体はみつ夫ではないかと疑っていた探偵少年である。社六は、メンバー全員から税金を取って、バットやボールを買おうと言い出す。


ルールとしては、みんなが貰っているお小遣いの中から何割かを税金として徴収しようというもの。定額制ではないと聞いて、「ちょっと待った」と食って掛かるのは三重晴三。彼は金持ちの子供なので、たくさんのお小遣いを貰っているはずだ。

累進課税は、天の視点からすれば公平な考え方ではあるが、多く取られる立場からすればやるせない。多く稼ぐにはそれなりの努力があるはずで、努力すればするほど税金を多く持っていかれるのは、納得がいかないことだ。

ただその一方で、三重君のように生まれ育った環境が恵まれていたので、収入(=小遣い)が多いという人もいる。そういう天からの授かり物があるところからは、多く税金を取られても仕方がないような気もする。

ともかく、税金の設計は難しいものなのだ。


さてここで多数決が行われる。お小遣いで苦労しているメンバーが多いため、圧倒的な賛成多数で税金法が可決される。そして頭の弱い(失礼!)面々は、税金が溜まったら専用グラウンドを作るだの、プールや食堂や漫画図書館を作るだのと盛り上がる。

社六君が税務署長となり、さっそくみんなのお小遣いを申告させる。税金を取り立てる前には、所得の把握が欠かせないのだ。しかし、この所得の把握が難しい。所得の調査こそが、税務署の最も重要な仕事だということが、この後作中で明らかになっていく。


みつ夫はひと月300円のお小遣いを貰っている。一割が税金となるので、毎月30円を引かれることになる。それは痛いということで、200円しかもらっていないと申告することにする。コピーは、そんなみつ夫に

「それじゃ、脱税じゃないか」

とツッコむ。貰っているお小遣いの金額は、自己申告以外、外部の人が知るのは困難なので、こういう脱法行為が成り立つのである。


そこへ税務署長(社六)がやってくる。なったばかりの税務署長を辞めようかと思うと言い出す。みんなから申告用紙を集めてきたのだが、どうもウソが多いと感じるらしい。内心、ギクッとなるみつ夫。

申告によれば、カバ夫はお小遣いを貰ったことがない、金持ちの三重君はひと月に50円、他の面々も100円前後だという。こういう状況を鑑み、もっと力があって公平な人物が税務署長になるべきだと社六は主張する。そしてその適任者は、パーマンだというのだ。


・・・そういうことで、パーマンが税務署長に任命される。社六も語っていたように、徴税する人物(組織)には、大きな権力が与えられていなければならない。そして公平な観点も必要だ。ただその面ではパーマンは適任だが、一つ欠けていることがある。それは調査能力である。


パーマンはさっそく町へと繰り出し、カバ夫やサブや三重晴のところへ行き、収入状況を確認するのだが、自己申告の壁に阻まれてしまう。8人回って65円しか集まらず、その内30円は自分である。

思うように税金を集められないパーマンに、社六が実務的なアドバイスを送る。まず三重晴の母親を見つけて、「月に50円しかお小遣いを払ってないのか」聞くと、さすがは見栄を気にする三重家のママは、毎月1万円を渡していると胸を張る。

この証言を元に、三重晴から税金を徴収することに成功。ただ実際の小遣いは2000円だった様子。その後も社六は、友だち同士で互いの金額を暴露させる方法で、実態を探り当て、それを元にパーマンが次々と追加徴収を行っていく。

社六の頭脳とパーマンの力の組み合わせは、税務署機能としては最高のタッグなのであった。ただ、その代償として、パーマンは町の子供たちから、そそくさと逃げ回られることになるのだが・・・。


さて、最後の残された脱税王は、小遣い0円だと言い張るカバ夫。パーマンはピッタリとカバ夫にマークをする。密着して調べた結果、カバ夫は積極的にママの手伝いをしているが、そのお駄賃という形でお金を溜め込んでいることがわかる。

月に400円を溜めているとのことで、パーマンは税金40円を寄こせと迫る。カバ夫は「これは働いて貯めたお金だ」と主張。それが受け入れられないとわかると、「な、な」と薄ら笑いを浮かべて10円をパーマンに差し出す。税務署への買収行為である。

それも叶わないとなると、今度は開き直って「俺の金を、なんでみんなのために払うんだよ」と強弁を始める。・・・そもそも今回の税金は野球チームのために使う目的があったのだが、ここへきて本来の意図を全く忘れているカバ夫であった。


パーマンは税務署の切り札である、差し押さえの権限を発動。カバ夫に札を貼るが、当然逃げ出す。パーマンが追っていくと、途中で先生とばったり出くわし、何をしているのか尋ねられる。

税金徴収をしていることを伝えると、そんな遊びは感心しないと苦言を呈される。パーマンも嫌気が差してきたところだったので、これにて税金ごっこはおしまいにしようと、社六に話す。


ということで、今度は集めた税金を皆に戻さなくてはらなない。しかし、パーマンを見ると金を取られると思っている面々は、パーマンに捕まらないように方々へと逃げ出していく。国税が嫌われるのも無理ない話だと思わせるオチであった。


税金を使う、もしくは使ってもらう立場は気分が良いものだが、税金を納める側になると途端に納得のいかない気持ちとなる。GOTOキャンペーンで得したと思う時は嬉しいが、実際には自分の給与から引かれた税金が元手だと考えると腹が立ってくる。

税の仕組み、使い方には、本当に気をつけてもらいたいと切に願う。


「パーマン」考察しております。


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