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ご近所監視チームが迫る!『のぞかれた魔女』/狙われたエスパー魔美①

「エスパー魔美」では超能力を人に見せてはいけないというルールが敷かれている。このルールを徹底するために、魔美の遠い先祖が火あぶりにされた魔女だったことを示唆したり、『魔女・魔美?』などのエピソードで、エスパーであることが表面化することの危険さを描いてきた。

ところがそんな魔美を、エスパーではないかと疑う人間も複数登場している。彼・彼女は執拗に魔美を監視し、エスパーである証拠を掴もうとする。

本稿から3回に渡って、魔美が疑われ、覗かれるエピソードを紹介したい。魔美はいかにしてこのピンチをいかに脱したのか? 傑作揃いなので、是非注目してもらいたい3本である。


『のぞかれた魔女』「マンガくん」1977年22号/大全集2巻

本作で魔美を狙うのは隣人の陰木夫人。常日頃から佐倉家に対して敵対意識があって、『友情はクシャミで消えた』では飼っている犬メリーに近づいてくるコンポコに対して、寄こさないでくれとクレームを入れている。この時に言い方が凄いので抜粋しておくと・・。

「もしもうちのメリーちゃんに子犬が産まれるようなことになると…どんな奇怪な子が産まれるか、想像するだけで身の毛がよだつざんすよ」

と、完全に喧嘩を売っている。このお話の解説は下記にて。


本作でも庭から佐倉家を覗き見ている陰木さんの姿が描かれる。佐倉家では、パパが弟とお酒を飲んで盛り上がっていると、さっそくうるさいとクレームを付けてくる。

魔美によると、これまでもうちの木が葉を落としてきて困る、パパの歌は音痴で下品で耳障りだから止めろ、門の前でコンポコがウンチしたなど、難癖をつけてきているらしい。

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魔美は大嫌い、と声を荒らげるが、パパは

「いや…気の毒な面もあるんだ。家庭的に恵まれていない」

と意味ありげなことを言っている。このセリフの真意や、その解決については『電話魔はだれ?』という次の話で回収される。詳細は下記にで。


パパとおじさんは外で飲み直すことになり外出し、入れ替わるように高畑君がやってくる。本作の直前回『弾丸よりもはやく』にて、魔美のテレポートの必需品であるハートのブローチが壊れてしまったので、修理して持ってきてくれたのだ。

このお話は下記で確認下さい。


高畑は魔美の家に入ると、異臭に気づく。それは魔美のパパの要望でタクアンを煮ているのだという。

魔美は高畑からブローチを貰い、さっそくテストする。一度屋上に出てから、家の玄関へとテレポートする。すると、ちょうど陰木さんが入ってきたところと鉢合わせ。突然目の前に魔美が現われ、慄く陰木。

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「お待たせしちゃまずいので飛んできた」と誤魔化す魔美。すると陰木はタクワンの臭いに気づき倒れ込み、またもやすごい皮肉を言う。

「おたくは皆さん、お丈夫ね。この毒ガスの中で、よく生きていらっしゃるわ」

「すぐ鍋を下ろします」と魔美は答えるが、陰木は「臭いだけの問題じゃない。今日という今日は言いたいことをすっかり言わせてもらう」と、ただ事ではない様子。そして、ネチネチと魔美を「口撃」してくる。少し長いが、ほぼ全文を抜粋する。

「私どもがこちらへ引っ越してきた理由は、この辺りが上品な住宅地だと伺っていたから。小屋に毛の生えた程度だが喜んで家を建てた。ここに骨を埋めるつもり。ところが来てみたらどうでしょ。お上品な環境どころか、お下品な歌、お下品な臭い、落ち葉は散らかる、犬はフンをする。うちはお宅様の尻ぬぐいに越して来たんじゃございません


あまりのネチネチクドクドぶりに魔美は泣き出してしまう。そこへ、義憤に駆られた高畑が割って入る。奥さんの話も結構下品じゃないですか、と。

不意な反撃に「なんざます!?」と衝撃を受ける陰木。高畑はそこで先ほどの発言を引き合いに、下品な点を指摘する。

「尻拭い」→大小便などの排泄の後始末に尻を拭くこと
「小屋に毛の生えた」→この場合の毛は人間の成熟期の発毛を意味する

陰木は「何という侮辱!」と激怒し、「覚えてらっしゃいませ」と出て行ってしまう。

これですっかり留飲を下げる魔美だったが、高畑は心の中で「余計なことをしたかもしれない、ああいうタイプは恨みを買うと怖い」と振り返る。そして、この予感は、すぐに的中することになる・・。

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なお魔美は「成熟期の発毛」とは何かと高畑に聞いてくるのだが、高畑は恥ずかしがって答えられない。おどおどと、

「ほんと、ごくありふれた・・ある年齢になれば誰にだって・・君にもあるよ。・・多分」

と歯切れ悪く言葉を繋ぐのみ。

ところで、陰木が家に入ってきて出て行くまで、コンポコは終始吠えている。出て行くときにはベロベロバーをし、その後高畑に寄り添っている。コンポコはいつも、魔美の気持ちを代弁してくれる働きをしているのだ。


さて魔美は事件に呼ばれて、無事に解決し、部屋に戻ってくる。パッと現れる様子を隣の家からこっそりと覗いていた陰木は、「やはりざます!!」とエスパー・魔美の存在についに気づいてしまう。

すぐさま陰木は、佐倉家の反対側の隣家に向かう。そこは細矢という表札が掛かった家で、陰木を「まあ珍しい」と言って出迎える。陰木は魔美が超能力者であることをとうとうと語り出す。

「魔美はいつでも他所の家に自由に出入りできる。こんなことを放ってはおけない」と。すると細矢は「早い話、昔で言う魔女みたいなもの」と話を信じてしまう。そういうことで、この二人で魔美の正体を暴こうと一致するのである。

佐倉家の両側から魔美の行動を監視する。そして細矢の甥が、超常現象を研究しているので、来てもらおうということになる。これにて魔美の包囲網があっという間に出来上がってしまったのである。

ところで「細矢」さんは、放送屋→細矢というもじりのキャラクターである。初出は「オバケのQ太郎」で、噂話を近所に吹き込んでいく迷惑なおばちゃんであった。造形もほぼ一緒なので、おそらく親戚か、同一人物だと考えていいだろう。


翌日からさっそく見張りがスタートする。魔美はすぐに様子がおかしいことに気づき、高畑に相談する。高畑は心配した通りになったと感じ、魔美にはカーテンを閉めて、行動に気をつけるようアドバイスする。

しかし敵もさるもの、クリーニング屋を騙して佐倉家中のカーテンを引き取らせてしまう。そして細矢の甥も登場し、当分細矢宅に泊まって見張りをすることになる。

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魔美は新しい目(=細矢の甥)が現われ、一段監視のステージが上がったことを感じる。再び高畑に相談する魔美。そこで高畑は以下のような一計を案じる。

・思い切って普段通り振舞う。
・超能力は使わない。
・元気に伸び伸びと過ごす。
・疑われていることを気づいていないように振舞う。
・そして、チャンスを待つ。


細矢のおいは、二晩徹夜して魔美を監視続けてフラフラとなっているが、全く証拠が出てこない。陰木のことを疑い出す

そのタイミングで、陰木家の上で怪獣の着ぐるみが音楽に合わせて踊りだす。監視疲れでうつらうつらしていた陰木は、起きだして屋根を見て驚き、細矢家に向かう。

細矢を起こして「屋根の上にゴジラがダンスを!」と呼んでくるのだが、既に魔美の超能力で着ぐるみは回収してしまっている。もぬけの殻の屋根を見て、「どこに?」と呟く細矢と甥。

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この一件によって、陰木はちょっとおかしいと噂が広まり(細矢さんが放送したに違いない)、陰木夫人は家へと引き籠ってしまう。「気の毒なことをしたなあ」と高畑。

しかし引き籠った陰木は、次なる手段として佐倉家に嫌がらせ電話攻撃を始める。詳細については『電話魔は誰?』の記事にて。

なお、『電話魔は誰?』にて陰木家の家庭問題は解決し、次の登場(『ずっこけお正月』)からはいきなり幸せオーラ全開となっていく。これについては来年の正月タイミングで記事化の予定である。


「エスパー魔美」の考察やっています。


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