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超貴重!1958-1960年短編5作一挙紹介/藤子F初期作品をぜーんぶ紹介㊲

月に1~2本のペースで書き続けてきた藤子F初期作品のレビュー記事も、こちらで37本目。

1954年・藤子F先生20歳から、1960年・26歳までの今読める藤子作品を全て紹介してきたが、いよいよ終わりが見えてきた。今の予定だと全45回で一区切りさせることになっており、年内の終了が見込まれる。

初期作品は藤子・F・不二雄大全集でしか読めない貴重かつマイナーな作品ばかりなので、WEB上にはほとんどレビューが上がっていない。自分で言うのもなんだが、かなり貴重な記事群なのである。

よって、ここまできたからには、何とか全て書き切りたいと思う。


本稿では貴重かつマイナーな初期F作品の中でも、ページ数が少ない超短編ということで、マイナー度に輪をかけた作品を一挙5作取り上げる。寄せ集めということで、作品の内容とかターゲットはバラバラという点は、どうぞお含みおきを。


『あきおくんとろぼっと』
「たのしい一年生」1958年1月号/初期少女・幼年作品

まずは講談社の小学校学年向け雑誌掲載作から。この当時は藤子先生が主に活躍されていた雑誌は講談社系ばかり。ページ数の多い中編や数回にわたる連載作品が多いのだが、本作はたった2ページの小品となっている。

当時の藤子先生は、マンガの他にも絵物語や、イラストページなども大量に執筆しており、本作もお正月号ならではのバラエティページに描かれたものを思われる。

あきお君が発明家のおじさんの家に遊びに行くと、おじさんそっくりのロボットに出迎えられる。僕のも作って欲しいとオーダーすると、あきおそっくりのロボットがさっそく完成。

まるで「パーマン」のコピーロボットのように、自分の身代わりに宿題をさせたり、庭掃除をやらせたりするのだが、しまいには勝手におやつを食べてしまったり、出歩いてイヌを怒らせたりしてしまう。

短いギャグマンガだが、藤子先生のエッセンスは十分に感じられる一本である。


『宝さがし武勇伝』
「漫画王」1958年9月号/「山びこ剣士」

掲載誌「漫画王」は1956年から59年にかけて数多くの作品を発表してきた重要な媒体である。大全集に未掲載の作品も多いので、是非とも追加収録&発売して欲しいものである・・・。

「漫画王」では別冊付録で32ページとか64ページといった大作を発表しているのだが、本作は5ページという控えめのボリューム。内容は、当時人気ジャンルだった時代ものである。

サブタイトルは「ゆかいなまんが」。5ページとは言え、アイディアは濃密。後に大量に描くことになる「宝探し」をテーマにしている点にもご注目。

空腹の老人におにぎりをあげると、実はその老人は神さまで、褒美に百万両を授けると言って消えてしまう。どんな形で百万両が貰えるのか楽しみに旅を続けていると、百万両の財宝を探している人物に遭遇する・・・。

隠し場所の書かれていない宝の地図だったり、実は強い主人公と悪党とのバトルだったり、全然融通の効かない神さまだったりと、アイディア百出の展開となっている。


『らいおんになったろば』
「たのしい一年生」1958年10月号/初期少女・幼年作品

初期の頃、藤子先生の得意ジャンルの一つが、人気海外小説(童話)の漫画化であった。本作はイソップ童話の「ライオンに化けたロバ」の漫画版となる。

原作を読んだ人は良くわかると思うが、あっと言う間に読み終えてしまう超短編なので、マンガもたった1ページ。ライオンの皮を被っていただけだとバレたロバは、人間たちにボッコボコにやられてしまうのだが、マンガではソフトランディングに落ち着かせている。


『はるおくんのしっぱい』
「たのしい二年生」1960年1月号/初期少女・幼年作品

本作もお正月号掲載の、他愛のないバラエティマンガとなっている。

妹なのか友だちなのか不明の女の子と雪だるまを作るはるお。目の部分にする「たどん」をはるおが取りに帰るのだが、その途中でお正月遊びの道草を食ってしまい、たどんを取って戻ってくる間に雪だるまは溶けてしまう。

たどん(炭団)とは、炭の粉末をつなぎで固めて団子状にした燃料のこと。確かに黒い目にはぴったりである。

それにしても、初期の藤子作品では、主人公の名前が「はるお」とか「あきお」ばかり。この当時から、あまり主人公の名前に頓着しない様子が伺える。


『春子の日記』
「なかよし」1960年8月号/初期少女・幼年作品

講談社の女の子向け月刊誌「なかよし」掲載作品。藤子先生が活躍を始めた頃は、まだ女性の漫画家の数が少なかったこともあり、藤子先生には数多くの少女漫画の依頼があったと言われている。

本作は今回取り上げる中で、12ページと最も分量が多く、さらに発表時期は最も遅い。本作が発表された1960年は藤子F先生の第一の転機の年で、「海の王子」~「てぶくろてっちゃん」「ろけっとけんちゃん」と、連載マンガでのヒット作を次々と生み出す年となった。

ただし連載が忙しくなれば、単発の読み切り作品を描く余裕は無くなっていく。そういうこともあって、本作を最後に単発の作品はほとんど描かなくなってしまうのであった。


いたずらっ子の完治の家に女中が住み込みでやってくる。名前を春子。これまで36人の女中を雇っているが、全員完治のイジメに音を上げてすぐに辞めてしまったのだという。

ところがこれまでの女中さんと春子は一味違う。柔道を習っており、腕っぷしで完治をねじ伏せる。完治は春子の力を当てにして、いつも自分をイジメてくるガキ大将ゴリラに喧嘩を吹っ掛けるが、春子は全く手伝おうとしない。

完治が春子の家事を邪魔するのだが、春子はここでも音を上げず、逆に完治が隠していた酷い点のテストの答案を見つけ出し、弱みを握ってしまう。

春子は、テストの答案をバラさない代わりに、完治に勉強を教えるようになる。さらには友人で勉強も良くできる木村君も引き込んで、完治を勉強漬けにする。


と、そんな折、木村君がゴリラたち4人に言いがかりをつけられて連れていかれてしまう。ついその場から逃げ出してしまい、落ち込む完治に春子はたとえ話を駆使して、正義心に火を点けさせると、完治は木村君の元へと走り出す。

完治の良いところを見出した春子は、後を追って、いじめっ子たちを柔道で撃退。さらには75点を取った完治に、預かっていた0点の答案を返すのであった。

なんとも気持ちの良い春子による、気持ちの良いお話である。




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