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パーマンVS怪人千面相・3本勝負!/考察パーマン
ヒーローにはライバルが付きもの。
孫悟空にはベジータ。
バットマンにはジョーカー。
そして、パーマンには怪人千面相である。
そもそも怪人千面相は、江戸川乱歩が生み出した怪人二十面相のパロディであり、怪人二十面相は名探偵・明智小五郎や少年探偵団のライバルとして描かれた。
怪人二十面相は変装の名人であり、無闇な暴力を肯定しない紳士な怪盗である。パーマンの怪人千面相も、ほぼ同様のキャラクター設定が与えられている。
ちなみに江戸川乱歩の怪人二十面相も、さらに遡れば、トマス・W.ハンシューの「四十面相クリーク」をネタ元にしている。やはりいつの時代も変装の名人という設定は魅力的なのだろう。
さて、ご存じの通り「パーマン」は1960年代の「旧」シリーズと1980年代の「新」シリーズに分かれるが、怪人千面相は新旧の両シリーズで登場する時代を超えた人気キャラとなっている。
本稿では「パーマンVS怪人千面相・3本勝負」と題して、旧シリーズで登場する3話のエピソードを一気に紹介する。新シリーズの紹介は、また機会を改めて行いたい。
ところで、「千面相」の呼び名については「怪人千面相」と「怪盗千面相」の二種類存在する。ややこしいことに、初登場回となった『怪人千面相』では「怪盗千面相」と呼ばれている。怪盗と怪人、どちらも正しいという状況なのである。なお、一部の単行本においてはタイトルを『怪盗千面相』としているものもある。
手元の大全集だと、『ダイヤの呪い』の中では「怪人」で、『わがはいの脱獄』では「怪盗」表記で描かれている。見事に混在しているのだ。基本的にFノートでは、怪人二十面相のパロディであるという認識から、「怪人千面相」と表記していきたい。
『怪人千面相』(怪盗千面相)
「週刊少年サンデー」1967年21号/大全集1巻
それでは、怪人千面相の初登場となるエピソードから。
本作では変装の名人という設定を大いに生かしたお話となっている。対決するパーマンの方は、あるきっかけからパーマンに扮せずにみつ夫として千面相を捕まえようとする。
冒頭で、千面相がみつ夫のママに変装してパーマンへの挑戦状を叩きつけてくる。内容はこうだ。
・怪人千面相の狙いは、画家のツギタツギジ画伯の誘拐
・千面相は専ら美術品を狙うが、今後は一流の画家を集めることにした
・絵を一枚盗むより、画家をさらって何枚も描かせた方がいい
みつ夫はママがなぜこんなことを知っているのか不審に思うと、それはママに変装していた千面相であった。
みつ夫は千面相を追うが簡単に逃げられてしまう。その様子をカバ夫とサブに見られて「お前では無理だ」と馬鹿にされたので、みつ夫はパーマンではなく、須羽みつ夫として千面相を捕らえることを決意する。
なお、千面相が狙うツギタツギジ画伯は、戦後の日本画家の大家・藤田嗣治(つぐはる)から取られた名前だと思われる。
みつ夫はコピーと一緒にバスに乗ってツギタ画伯に会いに行き、コピーロボットのボタンを押させて、画伯のコピーを作る。みつ夫の作戦は、わざとコピーのツギタ画伯を千面相に誘拐させて、隠れ家を押さえようという計画である。
ところがコピーした途端、千面相に誘拐されてしまって、みつ夫は後を追うことができない。一方の千面相も誘拐したものの、コピーの鼻を押してしまいロボットへと戻ってしまう。
みつ夫はブービーのコピーを借りて再度ツギタ画伯のコピーを作る。ところが目を離したすきに、警官に変装していた千面相に誘拐されて見失ってしまう。そしてコピーは運ばれる車のトランクの中で鼻がぶつかり人形に戻ってしまう。
みつ夫は嫌がるパー子からコピーロボットを借りて画伯のコピーを作るが、今度はパーマンに変装した千面相に連れて行かれてしまう。みつ夫は追う所だけはパーマンになって、千面相の後を追う。コピーはまたしてもトランクの中でロボットに戻ってしまう。
このシークエンスは3回も同じことをやっている感じである。
パーマンは千面相の隠れ家の前で、みつ夫に戻って家の中へと侵入していく。しかし千面相に見つけられて隠し地下に落とされてしまう。大ピンチに陥るのだが、みつ夫は何とかそこを脱出。
置いてあったコピーロボット3体を全てみつ夫に変身させて、4人がかりで千面相を捕らえることに成功するのだった。
第1ラウンド:みつ夫たち4人の勝ち。
『ダイヤの呪い』
「小学五年生・六年生」1967年10月号/大全集4巻
本作では敵となる「タライ・マワシ」が、ずっと何者かわからぬまま進行し、最後に怪人千面相だと正体が明かされる展開となる。
今回の千面相の狙いは百カラットのダイヤ。前作(『怪人千面相』)では美術品しか狙わないと説明されていたが、早くも前言撤回となったようだ。
ダイヤの持ち主は宝山という大金持ち。ダイヤはかつて戦時中にインドで購入したものだが、本来の持ち主は自分であると、チビットの僧・タライ・マワシという人物が名乗りを上げた。これはもちろん、チベットのダライ・ラマのもじりである。
タライ・マワシはダイヤを所持する宝山に対して、ダイヤの呪いがかかると脅かし、その後に宝山の娘が行方不明となってしまう。
パーマンは頼まれもしないまま本件に首を突っ込むが、タライ・マワシの麻酔薬を仕込んだマントにやられて敵前で気を失ってしまう。そして目が覚めると、地球から10光年離れたオンボロメダ星雲の星に連れて行かれ、そこでは宝山の娘が恐竜に食べられそうになっている。
パーマンはタライ・マワシに飛び掛かるが、またしてもマントに包まれて気を失い、元の河原へと戻される。パーマンはすっかりタライ・マワシの魔術に対して怖れをなしてしまう。
翌日パー子に相談すると、オンボロメダ星雲と娘を襲う恐竜は、映画の撮影スタジオを使ったトリックであると見抜く。スタジオでは星野スミレ主演の「遊星王女」という映画が撮影中だったのである。
「映画のことなら詳しいのよ」
と、どや顔のパー子。
なお、「遊星王女」は1958年から59年にかけて放送された特撮ヒーロードラマ「遊星王子」のパロディである。
ブービーが撮影所のセットから宝山氏のダイヤを見つける。昨日揉み合った時にタライ・マワシが落としたものらしい。するとそこへ、タライ・マワシが現われて、正体は怪人千面相であることを明かす。
再び麻酔を仕込んだマントでパーマンたちに襲い掛かってくる。近寄れず苦労をしていると、ブービーが撮影で使う巨大な扇風機の風を千面相にあてて、マントを吹き飛ばす。ようやく千面相を捕まえることができたのだった。
第2ラウンド:パーマン・ブービー・パー子の勝ち。
『わがはいの脱獄』
「週刊少年サンデー」1967年42号/大全集2巻
怪人千面相は捕まっても簡単に刑務所から逃亡してしまう。そんな脱獄王・千面相との対決のお話。
本作は『ダイヤの呪い』で捕まった直後という時系列である。刑務所からパーマン宛に「刑務所で疲れが取れたので、今度の日曜日に脱獄したい」という挑戦的な文面の手紙がみつ夫の元に配達される。
手紙を届けた郵便配達人がみつ夫の部屋まで入ってくるので、パーマンは千面相の変装だと見破る。慌てて捕まえようとするパーマンだが、千面相は「脱獄まであと三日あるので、一度刑務所に戻りたい」とパーマンにオーダーする。
刑務所では、署長が千面相が脱獄などできるわけがないと自信満々の様子。しかし実際に目の前に千面相が抜け出している姿を見て仰天し、慌てて監房へと戻す。鍵のかけ忘れだろうと所長は言う。まだ千面相の恐ろしさを分かっていない様子。
この刑務所は大勢の看守が見張り、高い塀にも囲まれているので簡単には脱獄できないはずだと所長は力説する。パーマンはこれで大丈夫とは思えない。
パーマンは脱獄は日曜日なので、それまでは千面相は脱走しないだろうと高を括って屋根の上で昼寝をしていると、土曜日なのに、しかも変装もせずに千面相が姿を現す。
千面相は泣きながらパーマンに訴える。せっかく脱獄を予告しても、所長が警備を強化してくれず、自分の才能を侮辱していると。パーマンはそれは不用心だということで、再び千面相を連れて刑務所へと向かう。
脱獄は自由になるための手段だが、千面相にとっては脱獄自体が目的化してしまっているようである。
二度目の脱獄を成功させた千面相を見て、驚く所長。さらにこの後も千面相の脱獄術を次々と見せつけられて、千面相をより厳重な鉄扉の独房へと送り込む。簡単には脱獄できない環境にしたが、所長は心配でたまらない。
翌日曜日。脱獄の日であるが、パーマン仲間は誰も稼働できず、パーマンとコピーロボットの力だけで脱獄を防がなくてはならない。
はたして、千面相はあらゆるテクニックを駆使して脱獄を図ろうとする。以下にまとめてみる。
・催眠術が使えるので独房の窓を覗き込むのは危険だと認識させる
・二重カツラ・靴底の引き出し、入れ歯のカプセルと、体の至る所に脱獄道具を仕込んでいる
・独房の中で「縛られた所長」に変装し、救助されるようにして脱獄する
流れるような千面相の脱獄劇であった。
千面相が監獄を抜け出したところで、みつ夫のコピーロボットが待ち構えている。千面相はコピーの鼻を殴ってそのまま逃走するが、コピーロボットは千面相に変身してしまう。
コピーの千面相は本物とは似つかわしくなく、憶病でおっちょこちょいで、パーマンに簡単に捕まってしまう。その際、往生際悪くわめき立てるものだから、それを見ていた千面相が「みっともない」と言って姿を現す。
そこをパーマンが捕まえて、晴れてジ・エンドである。
千面相は刑務所に戻ると「また脱走してやるわい」と相変わらず挑発的で、所長を困らせる。そこでパーマンが思いついたアイディアは、開けっ放しの監房に入れて見張りを置かないようにするという逆張り作戦であった。
千面相の目的は自由になることではなく、単に困難な状況下で脱獄することである。「張り合いが無くて逃げられない」と困り果て、パーマンの作戦は成功したのだった。
第3ラウンド:千面相の不戦敗
以上、千面相との三番勝負はパーマンの三勝で決着したようである。戦いは「新」パーマンへと続く・・。
「パーマン」考察たくさんやっています。
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