見出し画像

謎の宝は近所を探せ!ウメ星デンカの『たからをほり出せ』/藤子Fの宝探し⑥

子供の頃、一度はやったことがある「宝探しゲーム」

それは、宝の隠し場所を紙に書いておいて、その場所を探すと次の探し場所のヒントが書いてあって、さらにその先に行くとまた別の指示が書かれている・・・と、そんな指示連結タイプの宝探しごっこの経験がある人も多いのではないだろうか。

似たパターンでは、宝探しではないが、映画「ダイハード3」で爆弾犯から次々とヒントを出されて、NY中の公衆電話を探していくシーンがとても印象深い。


「藤子Fの宝探し」と題して、藤子作品の中から「宝探し」ものを順次紹介しているが、本稿ではそんな「指示連結タイプ」の宝探しエピソードを取り上げてみたい。

作品は、「パーマン」と「ドラえもん」の間に連載された「ウメ星デンカ」から・・・。


「ウメ星デンカ」『たからをほり出せ』
「小学二年生」1969年9月号/大全集1巻

「ウメ星デンカ」は、「パーマン」「21エモン」と「ドラえもん」の間に連載されていた作品。故郷ウメ星が爆発してしまい、地球の中村家へ逃げてきたウメ星の国王一家が、国家再興を目指して奮闘するという物語。

主人公はウメ星の王子デンカと、中村家の一人っ子太郎である。科学技術の発達したウメ星のひみつ道具や超能力を使って、デンカが活躍していくのが、本作の見所となっている。

国王一家に使えるのは、侍従のベニショーガ。大らかな天然な性格の一家を、細かい性格のベニショーガが支える構図となっている。そして、ベニショーガが購入したお手伝いロボットのゴンスケが、何かとひと騒動を起こすことも多い。


本作では、ひょんなことから宝の地図を見つけたデンカと太郎が宝探しに出ると言うストーリー。宝探しと言っても、地図は家の近所のもの。そして太郎たちの宝探しのライバルとなるのが、「ウメ星デンカ」世界のジャイアンこと、フグ田と、スネ夫的なフグ田の子分のサンカクである。

なお、しずちゃんの役割となるみよちゃんというカワイイ女の子も登場するが、「ドラえもん」と違って、みよちゃんのことを好きになるのはロボットのゴンスケである。


さて、そんな前段を踏まえて、本作を簡単に追ってみよう。

冒頭ではゴンスケがふくろはりの内職をしているシーンから。この手の内職と言えば映画「パラサイト」のピザの箱を一家で組み立てていくシーンを思い出す。

ゴンスケは計算と、この手の丁寧仕事が得意で、さらに好きなものはお金。内職に精を出しているのも、お駄賃を貰ってお金を溜め込みたいからである。

そんなゴンスケが自分のお金でアイスクリームを買って舐めているのが羨ましくなり、二人は宝の地図を見つけて山ほどのアイスクリームを買おうと盛り上がる。

するとタイミング良く(良すぎ!)、「たからのちず」がフワリと飛んでくる。いきなりのチャンス到来に大喜びの二人だったが、ベニショーガに誰かのいたずらだと諭されて意気消沈。

しかし、偽物だろうと思いつつも万が一本物である可能性もあり、ダメ元で宝を掘ってみようと考える。


デンカと太郎が宝探しをしていると知った、ガキ大将のフグ田とその子分サンカクは、最初はバカにしていたのだが、「ひょっとしたら」と思い直して、二人の後を付けていくことにする。

本作では、宝の地図が本物か、ニセモノかで子供たちが何べんも逡巡するのだが、眉唾なお宝の存在であっても、気になるものなのだ。


太郎たちはフグ田たちが追ってくることを察知し、急きょみよちゃんの家に身を隠すのだが、ちょうどみよちゃんの家で池を掘っていて、シャベル片手の太郎たちを見て手伝ってくれるのかと勘違い。

流れで土木作業を手伝うことになるのだが、それを見たフグ田たちが、そこに宝が埋まっているのだと勘違いして、池掘りに参加してくる。太郎とデンカは、逆にその隙を突いてみよちゃん家を脱出する。


地図に書かれた場所である空き地の真ん中を掘ると空き缶が出てきて、中に紙が入っている。これが何と、宝の隠し場所の書かれた手紙であった。文言は以下。

赤い柱の横の白犬の下を探せ

何かの暗号のようである。


この手の連結型宝探しもワクワクするものだが、手っ取り早く宝をゲットしたい太郎たちには不評。「だったら始めからそこを教えればいいんだ」と愚痴る。まあそれを言ったらお終いなのだが。

第二の隠し場所を示した文章を真に受け、たまたま目の前を通りかかった白い犬の後を追うと、赤いポストに近づいていく。赤い柱とはポストのことだったのである。・・・ってそんな簡単な話ではない気がするが・・・。

そして犬はポストの横でおしっこをする。そこが宝の隠し場所だと思うデンカと太郎だが、犬がおしっこをした場所を掘ることに躊躇う。


一方、みよちゃんの家で宝探しと勘違いして池を掘る手伝いをしてしまったフグ田たち。ポストの前で諍いを起こしている太郎たちを見つけて、その場をどかせて自分たちが掘ると言い出す。

横取りされた形となった太郎たちだが、あんな地図はでたらめに決まっていると強がりを言って、撤退していく。

フグ田たちは、ポスト脇を延々と掘っていくのだが、いくら掘っても何も出てこない。そればかりか、近くの工事現場の監督に、掘る場所はそこじゃないとどやされ、工事現場の掘り起こし作業を手伝わされてしまう。先ほどの池作りに続き、無関係な土木作業をさせられる可哀そうな二人である。


ガッカリしたと言って、神社の境内で休息していた太郎とデンカ。すると太郎が、設置してある白い狛犬の石像を目にして、「白い犬」だと気がつく。そうなると、「赤い柱」は赤い鳥居のことだったのである。

喜び勇んで狛犬の横を掘り始める太郎たち。そんな二人を、工事現場から解放されたフグ田とサンカクが見つけて、神主のフリをして遠くから「勝手に境内を掘るのは誰だっ」と叱りつけて、太郎たちを逃亡させる。

太郎たちを引き継いで、フグ田たちが掘り進めるとまたまた空き缶が出てきて、中には紙が一枚入っている。ここでも、本当の宝の場所はヒントの先ということであるようだ。気になる文言は以下。

南へ500m進め。ヤツデの木の下に宝がある

今度は宝があると断言しているので、次こそ本当の宝が埋まっている可能性が高い。さっそくフグ田とサンカクは、南の方角を太陽で確認して、その場所へと走っていく。


宝探しを断念した太郎とデンカが家に戻る。すると、ゴンスケが部屋中をひっくり返して何かを探している。それは、ゴンスケの貯金を埋めた場所を書いて置いた地図を捜索していたのである。

「あれがないとどこへ埋めたか思い出せない」と言って号泣するゴンスケ。デンカたちが見つけた宝の地図は、どうやらゴンスケの貯金の隠し場所を示したものだったのである。

自分の貯金を埋めた場所のヒントを別の場所に埋めて、さらにその場所を示す文言をさらに別の場所に隠し、その場所の地図を「たからのちず」として書く。・・・ゴンスケは、どんだけ面倒くさい作業をしているのだろうか。


すると、中村家の庭を誰かが掘っている音が聞こえてくる。ヤツデの木の下を掘っているのは、フグ田とサンカク。二人は財布を掘り当てるのだが、これこそがゴンスケの貯金=宝である。

ゴンスケは二人を見て、「ドロボー」と大声を上げて、木のハンマーを抱えて追いかけていく。お金のことになると、喜怒哀楽が激しくなるゴンスケなのであった。


貯金大好きゴンスケが、自分の貯金を「たから」と称して、凝った地図や指示文を三カ所に埋めていくという、その無駄な手間ひまに驚く。しかも自分の地図を無くすと、埋めた場所が分からなくなってしまうという記憶力の無さに、二度驚く。

自作自演的な宝探しのお話なのでした。


藤子作品を多数語っています!


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?