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残念ながら「エスパー魔美」はラブストーリーではない/考察エスパー魔美③

今回は、第3話『勉強もあるのだ』をテキストに魔美と高畑の関係に迫る!

前回までの「エスパー魔美」考察記事で、魔美の超能力が開花する一方、高畑くんは自分がエスパーだと勘違いしたまま、テレポーテーションの実験を二人で行ってきたところまでを見てきた。

「エスパー魔美」の第一話と第二話の考察はこちら。


「好きよ」と言い出せないうちに
あなたのロッカー
奪ったlove-letter
pinkの噂が 二人を近づけて
Ah Ah 私は敏感・情熱 また一人

・・・

突然だが、おじさんがトチ狂って恋のポエムを書いたのではない。「エスパー魔美」のTVアニメの最初の主題歌、『テレポーテーション~恋の未確認~』の冒頭の一節である。アニソン大好きの中川翔子さんもカバーしていたが、今でもスラスラ口ずさめる名曲なのだ。

この歌詞からは、あたかも「エスパー魔美」が学園ラブストーリーのような印象を受けるのだが、これは見事なまでのミスリードだ。

別の記事で「パーマン」はラブストーリーである、と論陣を張っているが、残念ながら本作はラブストーリーではない。。そのあたりも含めて第三話目の考察を行っていきたい。


『勉強もあるのだ』「マンガくん」1977年3号

第三話となる『勉強もあるのだ』は、超能力に夢中となってしまった魔美が勉強をおろそかにしてしまい、学校に父親が呼び出されることになる。この話と、魔美と高畑の超能力実験の話が並行して描かれる構成となっている。

本作は、テレポーテーション発動の条件がさらに詳しく明かされる。と同時に、そもそも高畑くんとはどういう人間なのか、さらに魔美との恋模様はどうなっているのかなども一気に語られる極めて重要な回となっている。

まず冒頭3ページは、前回と同様魔美の妄想による、エスパーおマミの超能力活劇のシーンとなっている。前回のチャイナ服に続いて今回はバニーのコスプレを披露し、精神雷<サイコサンダー>という大技まで繰り出すシーンが、パートカラーで描かれる。

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続けて、学校からの呼び出しの手紙をパパに渡し、「勉強ひとすじ」と部屋に心意気を書いた紙を貼り付けて勉強に取り掛かる。ところが、すぐに集中できなくなり、「こんな時高畑くんからの電話があったりすると決心が崩れる」、ということで、何故か魔美の方から高畑くんの所へ、自分を誘いに来ないようにと話に行くことになる。

これがいわゆる本末転倒。

魔美は高畑に「もうエスパーの話は止めて、当分勉学の道に励みましょう」と切り出すのだが、ここで、高畑の有名な天才エピソードが登場する。あまりにカッコいいので抜粋してみよう。

高畑「家で勉強なんてしたことないんだ」
魔美「あなたはいつもクラスで二、三番じゃない」
高畑「なりたくてなってんじゃないや! 授業中ぼんやり先生のおしゃべりを聞いていればわかっちゃうし、本も一度読めば大体覚えるし
魔美「勉強なんかしたことないですって!?キーッ」
高畑「僕だって悪いとは思ってるんだよ。テストのときなんかワザと解答を一つか二つ違えて出してるんだ。こんな頭に生まれついたのは僕の罪じゃないぞ。それなのに・・・」

こんな天才、身の回りにいます?? 

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この高畑の頭脳を使って、テレポーテーションの原理が次々と明らかになる。

・自分も他人もテレポートさせることが可能
・重力と関係なくテレポート可能
・特別な身振りや掛け声もいらない。軽く心で思うだけ
・生命のないものはテレポートできない
・洋服だけ残すなどの部分テレポートも可能

これでテレポートの設定はほぼコンプリート。後は飛べる距離がどのくらいか、という点が少し先で解明するくらいである。

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さて、学校に呼び出されたパパは、先生と面談をするのだが、その中で重要な情報が二点明らかにされる。

魔美のパパの祖父は画家で、明治42年に渡仏留学し、現地の女性と結婚して帰国。魔美は外人の血が入っており、見事な赤毛は隔世遺伝である。
最近高畑くんと親しくなっているが、魔美が恋に悩んでいるということはない。担任からすると、二人の間にはそういう気配は全く感じられない

ここで「エスパー魔美」にはラブの要素は全くなしという、F先生の明確なメッセージが発せられているのである。


さらにこの作品の中で、先ほどの隔世遺伝にも関わる重要なエピソードが登場する。魔美の先祖には、魔女がいたというものである。

パパと魔美の会話の中で示されるのだが、非常に大事なポイントとなるので少し長いが抜粋しておきたい。

魔美「もしもパパがエスパーだったらどんなことする?」
パパ「そうね、自分がエスパーだってことをひた隠しに隠すだろうね」
魔美「隠す?どうしてよ」
パパ「平和に暮らしたいからね。人間には先天的に自分とは毛色の違うものを嫌う性質がある。エスパーもけっして歓迎されないだろう。ホントのエスパーなんてものがこの世にいたとしたら…始めは物珍しさでチヤホヤされるだろうが、やがてその力への妬みとか怖れとかで、迫害が始まるよ

パパ「一つの例がヨーロッパの魔女狩りだ。怪しげな魔法を使ったという罪で、大勢の人が処刑された。うちのフランスのご先祖様には火あぶりになった人がいたそうだ
魔美「火あぶり!?」

魔美の赤毛と共に、魔女としてのルーツ、エスパーのルーツももここで暗示されている。

パパの話と、たこ揚げ少年を超能力で救うエピソードを受けて、自分には天から与えられた力を有効に使う義務があると思う魔美。

ただし、以下の条件を自らに言い聞かせる。これをエスパー三原則とでも呼んでおきたい。

①むやみに使わない
②悪用しない
③自分がエスパーだと誰にも悟られないようにする

第三話は、その構成を具(つぶさ)に見ていくと、このエスパー三原則を、ストーリーの中で、魔美が自ら導き出すことを狙って組み立てられていたことがわかる。

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それでは、今回の部分をまとめてみよう。

①高畑は超天才児である
②魔美のご先祖は魔女狩りに遭ったフランス人
③テレポートの発揮条件の確定
④魔美と高畑の間には「恋」の話は無し
⑤超能力を使うにあたってのエスパー三原則をルール化

これだけの情報量をテンポよく、あくまで自然にストーリーに組み込んでいるのであった。本作のような完成度で、月2本発表していたのだから恐れ入る。

次回の考察で、魔美と高畑の関係が進展します。

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