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藤子F・SF短編の魅力を語る!【全作品リスト付】

ドラえもん公式サイト「ドラえもんチャンネル」にて、「みんなで選ぶ!藤子・F・不二雄SFの秋」という特集がされている。(11月11日現在)

この効果があったのかどうかわからないが、これまでnoteに書いてきた「SF短編」の記事が、猛烈にPV数を伸ばしている。


僕だけでなく、藤子・F・不二雄に傾倒しているFマニアの方々は、すべからくSF短編を読んで「ドラえもん」とのギャップに驚かされた経験を持つ。藤子先生は子供向けの作品を徹底的に追求した作家という印象が強いが、その裏の顔を見たことで衝撃を受けるのである。

そこで本稿では、改めて藤子先生が残したSF短編について、その魅力を語ってみたい。SF短編全作品リストを提示しつつ、過去記事を紹介しながら稿を進める。


まずは「SF短編全作品リスト」から。
僕の調べだと111タイトルあり、色が塗ってある作品が既に記事化した作品である(34タイトル)。

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最終目標としては全111作品の解説・考察を完成させることだが、まだ着手できていないタイトルが77本もある。

手元のメモでは、その中から今のところ21本の記事化を予定しているが、それを終えたとして55タイトルで、ちょうど半分。まだまだ藤子Fノート完成の道のりは先が見えない・・。


掲載誌は20誌で、小学館の「ビックコミック」系が最も多く、次いで朝日ソノラマの「マンガ少年」でも創刊号から全16作が掲載されている。

SF短編は、掲載誌やその中のテーマによって、「少年SF短編」と「異色SF短編」に大別される。前者が37作で後者が74作である。


リスト上ではSF短編の第一弾は『スーパーさん』(68)ということになっているが、これは「少女コミック」に掲載された12ページの他愛のないお話であった。


本格的な最初のSF短編と呼べるのが『ミノタウロスの皿』(69)であろう。大人になった21エモンと思しき主人公が、宇宙で遭難して辿りついた星。そこはウシが支配者で人間は家畜として飼育されていた。典型的な価値観逆転系の本格SFといった作品だった。

過去最高の長文で徹底解説しているので、是非ご一読してほしいが、この作品の評判と手応えを得て、F先生のSF魂がさく裂していく契機となった。


初期の頃では、モラルや正義感に欠けた闇落ちヒーローものが目につく。注目しておきたいのは、『かいけつ小池さん』(70)とその続編的位置付けの『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』(76)である。正義のヒーローが、いかに危うい形で成り立っていることがよくわかる作品である。


ちなみに僕自身が初めてSF短編を読んだのは、てんとう虫コミックスの「藤子不二雄少年SF短編集」第1巻だった。小学校3~4年生の頃である。

その冒頭作品『ひとりぼっちの宇宙戦争』(75)は、クローンの自分と一対一で決闘するというストーリーで、生死を賭けた戦いの「痛み」と、ガールフレンドを守るために火事場の馬鹿力を発揮するという展開が鳥肌ものであった。

今でも好きな一作をあげろと言われると、この作品の名前を出してしまう。


34本の記事のうち、ダントツで最も読まれている作品が『ノスタル爺』(74)である。横井庄一さんから着想を得た帰還兵の喪失と回復を描いた、まさしく異色な短編で、読めば読むほどに発見と驚きがある。ハッピーエンドともバッドエンドとも解釈できる作品で、独特の後味が多くのファンの心を引き付けるものと思う。


村上春樹の大長編『ねじまき鳥クロニクル』が、短編『ねじまき鳥と火曜日の女たち』から生まれたことは有名だが、藤子F作品にも、短編から連載や長編に発展していった作品がある。

その一つが『赤毛のアン子』(単行本タイトル:『アン子 大いに怒る』)(74)である。この作品は「エスパー魔美」のパイロット版となっており、36ページの中にその後の「魔美」で登場するモチーフが詰め込まれている。

ちなみに『なくな!ゆうれい』(75)という作品は「エスパー魔美」第一話の元ネタが含まれた作品となっている。是非「魔美」を堪能するためにも、この二作も読んでみて欲しい。

また、記事にはしていないが『ベソとこたつと宇宙船』(79)は、大長編ドラえもんの「のび太の宇宙開拓史」のパイロット版で、宇宙の設定などはほとんどこの作品から取られている。大長編ドラは、他にも『創世日記』(79)が、「のび太の創生日記」の元ネタの一つである。この2作はいずれ記事にする予定である。


SF短編は「ドラえもん」とのギャップが大きい作品ほど、読者に強烈なインパクトを残す。『気楽に殺ろうよ』(72)『定年退食』(73)『コロリころげた木の根っ子』(74)『間引き』(74)『カンビュセスの籤』(77)あたりは、ネット上でもたびたび話題となる、後味が悪すぎて癖になるタイプの作品である。


逆に辛い設定&展開ながら、読後は爽快感抜群の青春SFも数多く発表されている。個人的に好きなのは『おれ、夕子』(76)『みどりの守り神』(76)『ユメカゲロウ』(77)『未来ドロボウ』(77)『老年期の終り』(78)など。

これらは暇さえあれば再読して、涙を流している作品たちである。記事化できてないものも多いが、今後楽しみながら記事にしていきたいと考えている。特に『未来ドロボウ』は若い頃に絶対読まなくてはならない作品だ。


数あるSF短編の中には、連作シリーズも存在している。それがヨドバ氏のカメラシリーズ(81~83)である。全部で8作描かれている。カメラ好きだった藤子先生のアイディアが詰まった楽しい作品ばかりだが、不意に嫌な感じで終わる作品もあったりして、読むのに気が抜けない。

タイトルは『タイムカメラ』『ミニチュア製造カメラ』『値ぶみカメラ』『同録スチール』『夢カメラ』『コラージュ・カメラ』『懐古の客』『四海鏡』『丑の刻禍冥羅』で、いずれ特集記事を書く予定。


ここまでで触れていないが、機会があれば必ず読んで欲しい作品がある。それが「劇画オバQ」(73)である。ある種荒唐無稽な少年マンガを劇画タッチにして、大人になることの現実をまざまざと見せてくれる。このラストを読んで、藤子不二雄はおかしくなったのか、と思った人も多かったとか。それくらいぶっ飛んでいる作品なのである。


藤子先生のSF短編集は、色々なメディアで紹介される機会も多く、その気になれば紙・電子で割と簡単に読むことができる。ハッキリ言えば、読まずして死ぬのは本当に勿体ない

読む順番なども気にする必要はないので、是非、手に取って欲しい。そして、読んだ後はこちらの藤子Fノートでその余韻に浸ってもらえればと思います。


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