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パーマンは何度だって騙される/エイプリルフール2022

今年もやってきましたエイプリルフール、古くは四月バカと呼ばれていた日である。この日は嘘をついても許されるということだが、僕の回りで実際に嘘をついている人はそれほど見かけない・・。

よく企業とかが、嘘企画をやったりしているが、どこか内輪な印象が強く、盛り上がっている印象も特にない。

ところが、実際の世界はともかくとして、藤子マンガの世界ではエイプリルフールは年に一度のビックイベントと位置付けられている。

例えば「ドラえもん」では、毎年のようにのび太はあの手この手で騙されている。「帰ってきたドラえもん」のように、エイプリルフールを逆手に取った感動ストーリーもある。

そんなのび太とエイプリルフールのエピソードを集めた記事を、ちょうど一年前に書いているので、こちらもどうぞ読んでみて下さい。


さて、今年もエイプリルフールを題材とした記事を書いてみようということで、本稿では「パーマン」に登場する「エイプリルフール」ネタを二作続けて紹介したい。


『世の中うそだらけ』
「週刊少年サンデー」1967年15号/大全集1巻

タイトル通りに嘘ばかりが飛び交う非常に面白いお話。

冒頭では、みつ夫がママに対して嘘をつく。

ウソ①「今日のテストで僕は百点取りました!!」

これを聞いたママとガン子は目を見張り、ガン子などは「お兄さんが100取れるわけがない」と全く信じない。ところがママは、みつ夫が嘘をつくわけがないと与しない。そればかりか、

「もともと頭は悪くないんだから、勉強さえすれば」

と大喜び。

そんなママの姿にバツが悪くなったみつ夫は、「今日は4月1日だ」と暗にエイプリルフールであることを伝えようとするが、「もう四月ね、桜の満開が近いわね」とまるで察してくれない。

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さらに会社のパパにまで電話をかけて、みつ夫が100点取ったと伝える始末。

もう嘘だと言い出せなくなってしまったみつ夫は、4月1日から授業している学校なんかないと愚痴りながら、本当に100点取るために勉強を始めるのであった。


さて、みつ夫の家から少し離れた空き地。カバ夫とサブと三重晴がたむろしている。サブは望遠鏡でみつ夫の部屋を覗き、「ガリ勉やっている」と呟くが、嘘つけと、カバ夫も三重晴も信じない。

3人は面白い嘘がつきたいということで、パーマンを騙そうと盛り上がる。この時、カバ夫は「あいつ強すぎて癪にさわっていたところだ」と興奮しており、普段からパーマンに対して嫉妬心があるようだ。

三重晴も「騙せればスーッとする。あいつは強いけどオツムはダメだからな」と完全なる悪口を言って留飲を下げている。

ところが、3人の発言を聞いていた少しバカっぽい学ランを着た大男が、自分のことをバカにしたと勘違いして怒り出し、3人はぶん殴られてしまう。それほど必要なさそうなシーンだが、きちんとラストへの伏線となっている。


ここから3人は立て続けにパーマンを騙していく。まずはカバ夫が、

ウソ②「ガスタンクの横で怪獣ナンジャラモンが暴れている」

と電話をすると、みつ夫はまんまと真に受けて、パーマンになって飛んで行く。かなり幼稚な嘘なので、騙されるわけがないと思っていたサブと三重晴を喜ばせる。

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続けてサブの番である。サブは、パーマンの前に100万円の隠し場所の地図とヒラリとさせる。三重晴やカバ夫は「くだらん」と思っていたが、パーマンは「ひょっとしたらギャングが盗んだお金を隠した地図かも知れない」と言い出して、拾ってしまう。

ウソ③ 宝の地図

地図の指示に従って動き、風呂屋の煙突の上で待機することに。すると煙が出てきてパーマンを包み込み、真っ黒になってしまう。これで騙されていると分かりそうなものだが、「今度こそ本当よ」と書かれたもう一枚の宝の地図も信じてしまい、指示に従って小池さんの家の真下を掘ることに。

家を無理やりどかされた小池さんは、パーマンに対して、「家が建っているのにどうやって埋めたのか」と真っ当な指摘をして、「四月バカで担がれたんだよ」と諭すのであった

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最後は三重晴のウソ。彼はずる賢さも備わったタイプなので、嘘も一番巧み。

ウソ④ みっちゃんからの手紙。「今日が誕生日なので夕食に招待します」

この手紙を読んだパーマンは、1%も疑うことなく、飛び上がっての大喜び。マスクで隠れてしまうのに髪型を整えたり、コピーに夕ご飯も食べていいよと譲ったり、舞い上がった状態でみっちゃんの家へと飛んで行く。

これを見てしてやったりの三重晴たちは、さらに飛んでいるパーマンに声を掛けて、自分たちの代わりにみっちゃんにプレゼントして欲しいと言って、キレイにラッピングされた箱を渡す。

パーマンは「遠慮なく来たよ」とみっちゃんの家を訪ねる。「あらパーマン」と当然噛み合わない様子のみっちゃん。「誕生日おめでとう」と伝えてプレゼントを渡すと、誕生日は来月だという。

そこでおかしいと気がつくパーマン。しかし時既に遅しで、みっちゃんが箱を開けると、中から大量のカエルが飛び出してくる。

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パーマンは、ようやくここで自分が騙されてばかりであることを自覚する。そして、「誰だ出てこいっ。引きちぎってバラバラにしてやるぞ」と激怒。その様子を覗き見ていたカバ夫たちは震えあがる。

まずは勉強しなきゃということで家に帰るパーマン。残された3人だったが、そこでサブがふざけて、

ウソ⑤ 「パーマンが来た!!」

と脅かすと、ドッキーンとビビりまくるカバ夫と三重晴。

怒ってサブに向かって石を投げつけると、これがさっき登場したオツムの弱そうな学ラン男に当たってしまい、大激怒。バットを持って3人を追いかけてくる。

「助けてくれ」と3人はパーマンを呼びつつ逃げるが、これを聞いたみつ夫はどうせ嘘だと無視を決め込む。狼少年と化したカバ夫たちなのであった。


みつ夫は「100点の嘘を本当にしなくては」と、机に向かって猛勉強を続ける。この独り言を聞いたガン子は、100点は嘘だったとママにチクる。すると、「そうでしょ。四月一日だもの」とママは全てはお見通しのご様子。そして、

ウソ⑥ 「騙されてあげた方が張り切って勉強するでしょ」

と、敢えて騙されたフリをしているママなのであった。ママの嘘が一番凄いやとガン子。

結局ウソに気付かずに勉強を続けるみつ夫と、狼少年隊となってしまって、学ラン男にメタメタにされるカバ夫・サブ・三重晴なのであった。

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「エイプリルフール」を題材とした作品群の中でも、かなりのハイクオリティなお話である。それに加えて、自分たちの同年代のヒーローに対して良い感情を持っていないカバ夫たち、という部分が特徴的である。


さて、「パーマン」では、その翌年の4月にもエイプリルフールをテーマとした作品が描かれている。


『四月バカ』
「小学館コミックス」1968年4月号/大全集5巻

タイトルはズバリ「四月バカ」。「オバケのQ太郎」にも同名タイトルの作品があるので、これは来年の4月1日に記事化しようかな。

パーマンで二度目のエイプリルフールネタということもあるのか、本作はこれまで単行本に収録されてこなかった幻の作品の一つとなっている。僕も藤子・F・不二雄大全集を手に取るまでは知らなかったタイトルである。


本作もまた、世の中嘘だらけ状態で、騙されやすいみつ夫=パーマンは、嘘に翻弄されてしまう。

冒頭では、ガン子の「ママがおやつをあげるって」という他愛のない嘘に引っ掛かるみつ夫。ママからは「パパが映画に連れて行ってくれるって」と言われて喜び、パパに「ほんと?」と聞くと、「うそ」と返される。

騙され続けるみつ夫は怒るが、「四月一日は軽いウソならついてもいい」とパパに諭される。もう誰も信用しないと心に誓うみつ夫。


するとそこに、「パーマンに言づけして欲しい」という男が現れる。連載も進むと、一般的にもみつ夫の家にパーマンが出入りしていることは有名となってしまっている。

いかにも怪しげな男は、「これから小金山という家に強盗に行くので良かったら捕まえてくれ」、という伝言を残していく。疑心暗鬼で満たされてるみつ夫はこれをウソと判断する。

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ところが、これは強盗犯の策略で、パーマンにウソだと思わせておけば、安心して強盗ができるというプランであった。

そして、強盗に成功したらしく、パー子とブービーが、「小金山さんの屋敷にドロボウが入った」と言って飛び込んでくる。強盗は嘘だと信じ込んでいるみつ夫は、パー子たちに対して、逆に「その犯人はもう捕まえた」と嘘をついて、引き取らせるのであった。


家にいると嘘ばかりで落ち着かないということで、パーマンになって出掛けることに。コピーロボットにどこに行くのか聞かれたので、「となり町に怪獣が出たから退治しにいく」とウソをつく。『世の中うそだらけ』ではカバ夫がついた怪獣ウソだが、こんなウソでも信じてしまうコピー(=頭脳はみつ夫)。

飛んできたパーマンを見かけた強盗犯たち。慌てて身を隠そうとするが、逆にコソコソしている姿を見初められて、パーマンが降りてくる。そこで開き直った強盗犯は、「今強盗してきたので良かったら捕まえないか」と告げると、案の定また嘘だと思い込んで、飛び去っていく。

嘘には騙され、本当の事を嘘と思ってしまうみつ夫・・。

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パー子たちが「強盗はまだ捕まってない」と言って飛んでくる。ここでようやく、小金山家に強盗が入ったことを信じたパーマンは、さっき見かけた強盗コンビを探し出して、近づいていく。

拳銃で狙られるなどのすったもんだがありつつ、犯人たちを逮捕。警察に突き出すのだが、

「それ本物ですよ。嘘じゃないよ」

とすっかり四月バカに毒されたパーマンなのであった。

家に戻ると、コピーがずっと外出しっ放しでママがカンカン。コピーはみつ夫に騙されて隣町まで怪獣を見に行っていたのだという。

こっ酷く叱られ、四月バカの考案者を恨むみつ夫なのであった。

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藤子作品とは関係ないが、漫画の「サザエさん」を読んでいると、毎年4月1日はエイプリルフールをテーマとした作品が描かれている。一年中同じような話を描くマンガ家にとって、四月バカのような季節イベントは、絶好のネタであるようだ。

では来年は「オバQ」で会いましょう。。


「パーマン」考察、好調です。


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