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休もうと思っても、休めないのがパーマン『箱毛山の山賊』/新パーマンの幕開け②

何度も書いていて恐縮だが、「パーマン」は1960年代に連載されたバージョンを「旧パーマン」と呼び、1980年代にリバイバルされたバージョンを「新パーマン」と呼ぶ。

その間ちょうど15年くらいの間が空いているが、全く音沙汰がなかったわけではなく、別作品に大人になったパー子やパーやんが登場するというファンにとっては最高のエピソードも存在する。

このあたりのパーマン史については、下記の記事に詳しいので是非ともご一読下さい。


藤子Fノートでは「旧パーマン」の考察をほぼ終えたという認識の下、今後は「新パーマン」についての作品解説をどんどんと行っていく予定である。その際、まず気にしておかなくてはならないのは、旧版から新版に移行するにあたり、いくつかの大きな設定変更がなされているということだ。

前回の記事でも書いているのでリンクを貼りつつ、変更点を再度抜き出してみる。

◆「旧パーマン」→「新パーマン」への設定変更
① スーパーマンの名前が「バードマン」に変更
② パーマンの最高飛行速度が91キロから119キロへ
③ コピーロボットの大きさが一回り小さく
④ ブービーの住まいが動物園から、家のペットに
⑤ パー子の正体が星野スミレだと明かされている
⑥ 全ギャド連が「全悪連」に名称変更
⑦ パーマン5号(パー坊)がいないことになっている


上記の変更点を頭に入れつつ、新パーマンの作品考察を行っていくわけだが、まず手始めとして、新パーマンの連載第一回目の作品を丁寧に見ていくことにしたい。

新パーマンは、「てれびくん」「コロコロコミック」「小学三年生」(「小学四年生」にも同時掲載)の3本が一気に始まったので、これを全3回の記事で紹介していく。


『箱毛山の山賊』「コロコロコミック」1983年4月号/大全集5巻

本稿では「コロコロコミック」の第一話目を見ていく。前回取り上げた「てれびくん」初回の『パーマンはいそがしい』は、比較的身の回りの出来事のお話だったが、本作はきちんとした(?)悪者が登場し、パーマンが対決することになる。


本作は「コロコロコミック」の巻頭カラーとして掲載された力作。冒頭から銀行強盗をあっさりとパーマン、ブービー、パー子でやっつけるところから始まる。まずはパーマンの活躍から始まるのが、本作のポイントである。

そして互いに労を労って帰宅するパーマンたち。みつ夫の口ぶりから、どうやら最近とても忙しいらしい。

そんなみつ夫が、家に帰ってベッドに寝転がると、妹のガン子が現れて、パパが春休みに一泊二日で箱毛山(箱根山ではない)にハイキングに行こうと言っているという話を伝えにくる。

みつ夫はハイキングの間はパーマン活動を休みにして、2号とパー子に留守を任せようと考える。いきなり初回からヒーローが休息したいと言い出すのは、ヒーローマンガとしては異色な立ち上がりである。


場所は変わって夜の箱毛山。一台の車が山道を走っている。目的地である「箱毛湯元」への看板を見つけて、道を折れるのだが、なぜか道が悪くなる一方。おかしいなと思っていると、木々が倒れて道が行き止まりになっている。

すると二人組のシルエットが車の前に現れる。猟銃を持っており、所持金を置いていかないと射殺すると脅してくる。どうやら山賊のお出ましのようである・・。


翌朝。ハイキング出発の日。朝一番で目を覚ましたみつ夫が朝刊を手に取ると、「箱毛山に山賊 二千万円を奪う」というニュースが載っている。手口は道しるべを移動させて脇道に誘い込んで襲うらしい。既に被害者は9人に及ぶと言う。

みつ夫はこれを見せたら旅行が中止になると思い、新聞を隠してしまう。

さらにTVのニュースでも同様の話が流れており、しばらく箱毛山には登らないようにという警察発表を読み上げている。みつ夫はコンセントを引っこ抜いて、テレビが故障したということにする。

みつ夫からすれば、せっかくのパーマン休暇を堪能したいのである。ただし、山賊を放っておくわけにもいかない。そこで、二号と三号に頼み込んで、陰からこっそり護衛して欲しいと申し出る。

山賊が出れば捕まえればいいと、ブービー・パー子はこれを快諾。持つべきものは友人なのだ。


念のためにコピーロボットを持ってハイキングへ出発。上空からブービーとパー子が見守っていてくれている。登山電車を乗り継いで山腹に着くと、箱毛山に人が少ないことを訝しがる家族たち。

天国原へ抜ける道しるべを見つけて、その方向へと歩き出す家族4人。なかなか険しい道で、ニュースを知らないパパは「山賊でも出そうだ」、などと言ってガン子を怖がらせる。

すると、遠くの山の中腹からみつ夫たちの様子を見て、「カモがかかったぞ」などと言っている二人の男のシルエットが見える。天国原への道標は、山賊たちによって曲げられていたようである。

ところが山賊たちは、上空を飛んでいるパー子たちの姿を見つける。これではうかつに手が出せないと言って悔しがる。


一方、山登りに嫌気が差してきたみつ夫は、コピーロボットにバトンタッチして、自分はゆっくりと休憩し、後でパーマンになって追いかけようと考える。

パパ、ママ、ガン子、コピーの4人で山頂を目指すが、道なき道に迷い込んでしまう。それを上空から見ていたパー子たちが、様子がおかしいと言うことで降りてくる。空から見ると、天国原の方角とはあべこべの道を進んでいるようだ

ということで、一本の木を切り倒し、家族を乗せて、パー子たちが天国原へと連れて行ってくれることに。そしてそのまま天国原でのお弁当にパー子とブービーも合流して、楽しいひと時を過ごす。


さて、すっかり寝過ごしてしまったみつ夫。慌ててパーマンなろうとすると、蛇に驚いてパーマンセットを草むらに放り投げてしまい、たまたま居合わせた猿の手に渡ってしまう。

同じ猿と言うことでブービーに取り返してもらおうにも、もう先へ行ってしまっている。パーマンセットもなく、道もわからない。ここで山賊と出くわしたら大変なことになる・・・。

みつ夫が腹ペコで座り込むと、どこからか食べ物のにおいがする。その先に向かうと、洞窟があり、中に入ると鍋で何かを煮ている様子。みつ夫はこれを勝ってに食べ始めると、二人の男が姿を現わす。男たちの手には猟銃。この洞窟は、山賊の隠れ家だったのだ。


みつ夫はたまらず逃げ出すのだが、背後から猟銃をぶっ放してくるので、たまらず草むらへと逃げ込む。そのまま何発も撃ってくるのだが、たまたまみつ夫の頭上の木の上にいたパーマンセットを持っていた猿を一発かすめる。

運良くパーマンセットが手元に落ちてきたみつ夫。さっそくパーマンセットを着用し、反撃開始。あっさりと山賊を縛り上げて、麓の警察へと届ける。お茶でも、などと労われるが、パーマンは早くみんなと合流したいので、それを無視。


家族とパー子たちはホテルの前に到着し、みな満足げ。結局、楽しいハイキングを堪能したのはパー子とブービーで、パーマンを休もうと考えていたみつ夫が山賊を退治したことになる。楽をしようとして、結局仕事をしてしまうという、なんとも皮肉なお話なのであった。



「パーマン」考察やっています。


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