クリスマスプレゼントに最適『ぞうくんとりすちゃん』/ちょっぴりマイナーな幼児向けF作品③
「ぞうくんとりすちゃん」
「めばえ」1974年5月号~1975年3月号
たびたび書いているのだが、このFノートでは1974年を藤子F先生「奇跡の年」と(勝手に)呼んでいる。この年は、毎月約16本の連載を抱えながら、SF短編も数多く残すというとんでもない仕事量をこなした年である。さらに僕が生まれた年だという意味も込めて「奇跡の年」としていたりもする。
この頃は「ドラえもん」の連載を基本に、幼年向け作品を多作していた時期で、今回ご紹介する作品もそのうちの一本となる。
本作が特徴的なのは、セリフが一切書かれていない絵本形式だということだ。掲載誌の「めばえ」は、未就学児童や幼児を対象とした雑誌で、基本的に字が読めないことを想定している。本作はそうした需要に応えた作品なのである。
また、子供が眺めていても楽しめるが、基本的には親子で読んで欲しいという意図で描かれている。いわゆる読み聞かせ絵本の体裁である。
本作は、毎回、保護者向けに注釈が載せられていた。
「ぞうとりすにお子さまの好きな名前をつけて、じゅんばんに絵をみながら、おはなししてください」
絵だけで構成されているので、後は読み聞かせる大人が、子供たちと一緒に自由にキャラクターを作り上げてもいいようにしているのである。
連載は全部で11回。基本的に4コマの作品だが、一作だけ5コマのものがある。
主人公は男の子のぞうくんと、女の子のりすちゃんである。体が大きいぞうくんの方がお兄ちゃんだと思われる。基本的にこの二人が平和に遊ぶ風景が描かれるが、別の動物が出てくる回もある。
本稿では、全話のタイトルと簡単な内容についてメモ書き程度にご紹介しておきたい。
『ボールであそぼう』「めばえ」1974年5月号
記念すべき一話目。ぞうくんがりすちゃんにボール遊びを誘うが、体格差があってうまくいかない。そこでぞうくんは、鼻で風船を膨らませて遊ぶことにする。
ぞうくんは、長い鼻でボールを乗せたり、風船を膨らませたりと、器用な一面が見られる。
『ぼうしがポチャン』「めばえ」1974年6月号
ぞうくんの帽子が池にポチャン。鼻を伸ばしても届かないが、近くにいたカンガルーくんが長い尻尾を使って手伝ってくれて、りすちゃん含めた3人の連係プレーで帽子を取り戻す。
『くるくるかざぐるま』「めばえ」1974年7月号
ぞうくんの鼻息を使って風車を回す。ところが、葉っぱを鼻に吸い込んでしまって、大きなくしゃみをしてしまい、小柄なりすちゃんは飛ばされてしまう。
りすちゃんの大胆な飛ばされ方が、「ドラえもん」などで登場するオーバーな表現によく似ている。
『きりかぶなんだ?』「めばえ」1974年8月号
切り株を見てぞうくんは「椅子」だと思う。りすちゃんは「ベッド」だと考える。ところがそこは、ネズミくんにとっての家だったのである。
一コマ目から切り株には小さな入口のドアが付いていて、きちんと伏線を貼ってある点に注目したい。
『りすちゃんがとんだ!』「めばえ」1974年9月号
ぞうくんは、りすちゃんによく似た人形を手にはめてミニ劇を見せていると、突風に吹かれて人形が飛ばされてしまう。慌てて拾いにいくと、間違えて本物のりすちゃんを人形と勘違いして手にはめてしまう。
『なかよしぶらんこ』「めばえ」1974年10月号
ぞうくんの鼻にリスちゃん用の小さいブランコを取りつけて、ぞうくんもブランコに乗って漕ぐ。ブランコの動きが複雑そうで、是非映像で見てみたい。
『ゆらゆらパラシュート』「めばえ」1974年11月号
小さなパラシュートをぞうくんが飛ばしていると、高い柱の先に引っかかってしまう。りすちゃんはぞうくんの長い鼻をステップにジャンプしてパラシュートに飛びつき、そのままそれに乗って降りてくる。
りすちゃんのアスレチック的な動きが見ていて楽しい。
『でんしゃがとおるよ』「めばえ」1974年12月号
土管の置いてある広めの空き地で、地面に線路を描いていくぞうくんとりすちゃん。土管をくぐったり、橋を作ったりと楽しいコースが出来上がり、空き地でボール遊びしていたカンガルーくんとうさぎちゃんも集まってくる。
唯一の五コマ作品。
『いまなんじ?』「めばえ」1975年1月号
ぞうくんとりすちゃんは、1時に積木遊び、2時に車遊び、3時になって遊びが終わりかと思いきや、果物を持って再び部屋に戻ってくる。3時のオヤツなのである。
ちなみにぞうくんの果物はリンゴ2個、りすちゃんはさくらんぼ2個である。体格差を果物で表現している。
『ぞうくんおおきいね』「めばえ」1975年2月号
ぞうくんとりすちゃんでお互いに似顔絵を描く。画用紙にぞうくんが可愛いりすちゃんの絵を完成させる。するとりすちゃんは、画用紙4枚を使ってぞうくんの似顔絵を描きあげたのであった。
『おめんでびっくり』「めばえ」1975年3月号
りすちゃんがぞうくんのお面をつけて部屋に入ってきたので、ぞうくんはビックリ。そこでぞうくんはりすちゃんのお面を作って、二人して町中を走っていく。それを見ているカンガルーくんとうさぎちゃんであった。
本作は自分の息子に読み聞かせようと考えいたのだが、存在をずっと忘れているうちに、大きくなってしまった。もう一回小さくなってくれないだろうか。
こちら現在絵本として絶賛発売中で、幼年のお子さまが近くにおいでなら、こちらをクリスマスプレゼントとして送ってみてはいかがでしょうか。
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