見出し画像

『2号の正体がばれた』ので、別の動物に変換!?/ブービーだって大変よ②

「旧パーマン」から約15年の時を経て復活した「新パーマン」。この間、時代も作者の考えも変化をしていることを踏まえて、いくつかの大きな設定変更が加えられた。

この話題については一度記事にしているので、気になる方はこちらのご一読をオススメします。


パーマン2号こと、ブービーに関しては、住んでいる場所が動物園から一般家庭になるという重要な変更が発生している。

変更理由は明らかではないが、年がら年中監視されているはずの動物園のサルがパーマンに変身するのは現実的ではなかったからではないかと想像している。

そしてもう一つ考えられるのが、ブービーにもプライベートな時間を作らせることで、これまで描けなかった動物の世界でのエピソードを語れるから、という理由である。

なぜそんなことを考えたかと言えば、次に紹介するエピソードは、まさしく一般家庭のペットになっているブービーだからこそ描けるお話だと思うからである。


『2号の正体がばれた』
「コロコロコミック」1983年6月号

本作は「新パーマン」スタートから3ヶ月目の作品で、初めて家庭のペットとなったパーマン2号の日常が描かれるお話となっている。

冒頭、パーマン1号が2号に対して、チンパンジーなんてやたらにいるもんじゃないのに、よく近所の人に身バレしないねと尋ねると、「キーキーキーキー」と答える。

完全なるサル語だが、1号は「十分気を付けてるって」と完全に内容を聞き取っている。2号は家に戻る際には、周囲をよ~く見まわしてから、素早く家に飛び込むことを心掛けているようである。


2号は屋根裏に通じる通気口から家に入り、部屋へと戻る。ブービーには個室が与えられていて、室内にはテレビやベッドが配置され、ミニ滑り台もある。大き目な動物たちのぬいぐるみボックスがあり、コピー人形はその中に放り込んでおく。

ご飯に呼ばれて食卓に向かうと、初老のご夫婦がいる。子供が元々居ないのか、既に独立してしまっているのかは不明である。そして、まるで本当の子供のように、ちゃぶ台でご飯を食べるブービー。どこかホッとする家庭の雰囲気である。

飼い主のパパはゴルフに出掛けてしまい、ブービーはのんびりと庭に吊るしたハンモックに寝転がる。ところがその瞬間、「ワンワン」と大きな犬の鳴き声がして、ブービーはひっくり返ってしまう。


ここで、藤子不二雄のイラスト入りの注釈が入る。曰く、「この場面、動物語を人間の言葉に吹き替えて話を進めます」。マンガではよくあるパターンだが、ここでは、動物たちは同じ言語を使っている世界観であることに注目しておきたい。

ブービーとブービーを吠え立てた隣の家の犬とで、口論が始まる。互いにサルのくせに生意気だ、イヌのくせに偉そうにと言い争う、典型的な犬猿の仲状態。

そこへブービーの飼い主のママが割って入り、お隣のジョンに構ってはいけないと注意する。ジョンはいつも繋がれっ放しでイライラしているのだと言う。普段散歩などをしてくれない家庭なのだろうか?


気を取り直してママとテレビを見ることに。するとニュースが流れて、昨晩のパーマンたちの活躍が報じられている。パーマン2号がマシンガンを持った男をやっつけたということで、ブービーはウヒウヒと喜ぶのだが、ママは全く違う反応。

「怖いねえ、どこのおサルさんかしら。ブービーちゃんはあんな危ないことしちゃいけませんよ」

と親心を示すのであった。ちなみにこうした我が子がヒーローになって欲しくないという反応は、みつ夫のママにもしばしば現れる。いつだって、親は子供が心配なのである。


さて、ブービーもみつ夫たちと一緒で、夜に悪者と戦っているので、昼間は眠くて仕方がない。大あくびをして自室に戻りベッドに入ると、今起きたばかりでまた寝ようとするブービーをママが心配して、お医者さんを呼んでくると言い出す。

ブービーはコピーロボットに医者の対応を変わってもらい、本人はパーマンに変身してどこか別の場所で昼寝をすることにする。この時、パーマンセットは小さくして耳の中に入れていることが判明。

さらに医者の相手をさせられるコピーのブービーと多少の言い合いになる。みつ夫と同じようにコピーにはいつも文句を言われているようである。


パーマン2号となり自宅の屋根の上で昼寝をする。ところが陽が高くギラギラと直射された結果、大汗をかいてしまい、たまらず起きだしてマスクを脱いで汗を拭う。

ところがその瞬間、ワンワンワンと吠え立てられる。それはお隣の犬ジョン。「見たぞ!パーマン2号の正体!!」と、してやったりの様子である。そして正体をばらすと言い出し、ブービーも「人間の言葉も喋れないくせに」と反論すると、うちには人間語が話せるオウムがいると脅してくる。


こうなっては、ジョンを口止めしない限り、パーマン2号の正体がバレてしまう。最初は冷蔵庫から食料を調達して食べさせるが、口止め料にならんと言われる。

そしてジョンに、外の世界を一人きりで思いっきり駆け回ってみたいと言われ、仕方なく首輪から鎖を外してやるのだが、「これくらいでは黙っていると約束できない」と脅された挙句、ジョンは町へと走り出して行ってしまう。


もはや自分の力では何ともならないとブービーは観念し、1号と3号を呼び出して事情を説明する。パーマンたちは、まずいことになった、もしバードマンに知られたら・・・と恐れたところで、背後からバードマンが登場。「もう知ったぞ、許せぬ」とご立腹である。

パーマンたちは「うっかりなので許して欲しい」とお願いするが、「悪者たちがブービーの正体を知ってパーマンの力を手に入れたらどうするんだ」と、取り付く島もない。

そして「ただちにパーマンセットを取り上げてお前を動物に・・」と話したところで、バードマンは何かに気がつく。

「もともと動物か」


そういうわけで、意味があるのかわからないが、サルから別の動物に変えることにするとして、どんな動物になりたいかと希望を聞いてくる。そこで何やら他人事のパー子は「パンダなんかかわいいと思う」、1号は「イヌが親しみやすくていい」などとワイワイ始める。

イヌと聞いてブービーは激怒、そして「ヒー(=イヌになるなら死んだ方がましだ)」と泣くのであった。

そこでパー子が前向きな提案をする。「隣のイヌに絶対に秘密を守らせれば問題ないのでは」というのである。バードマンは「それができれば今度だけは見逃す」と承諾。ただし一時間以内という厳しい制限付きである。


さて、念願の単独散歩を満喫しているジョン。生まれて初めて自由に駆けまわっているとのことで、「まるでユメみたい」だと幸せそうである。ジョンはブービーを脅す乱暴者だが、ずっと鎖で繋がれているイヌの悲しみも感じられる複雑なキャラクターである。

ところが、ひと時の自由を我が世の春とはき違えてしまったジョンは、ここから調子に乗ってしまう。道行く人に無闇に吠え立てたり、猛獣気分で追い回す。さらに腹が減ったということで、人の家のゴミ箱を荒らして残飯を食い散らかす。

そんな自由奔放に行動する犬を許してくれる人間社会ではない。すぐさま保健所に通報され、ジョンは慌てて家に帰ろうと考えるのだが、一人の外出経験が無かったために、道に迷ってしまう。

そして保健所の職員に見つかり、捕らえられるという間一髪のところでパーマン2号が空中へと助け出す。そしてここで攻守逆転。ブービーは「絶対に秘密を洩らさないと約束するなら助ける、嫌だと言うならこのまま見捨てる」と交換条件を突きつける。

無事話がついて、バードマンは「これから気を付けるように」と、とにかく明るく去って行く。かくして、ブービーの正体は守られたのであった。


さて本作、ここでめでたしめでたしとはならない。この件があって、隣のジョンは鎖に繋がれて、がっくりと肩を落とす。その様子を隣の家から見ているブービー。

その晩、パーマン1号と3号は、今日の事件は2号にとってショックだっただろうから、慰めに行ってやろうということになる。するとブービー宅へ向かう途中、2号がジョンを連れて空を飛んでいる。

2号が向かった先は人気のない野原。ジョンは思う存分に走り回っている。罪を憎んで人を憎まず、いや、犬を憎まず。ブービーはジョンの気持ちを考えて、時々真夜中に散歩をさせてやることにしたのである。パー子は言う。

「ブービーちゃん、優しいのね」

こうして、犬猿の仲はすっかり良好になったのである。


本作は新設定におけるブービーの生活環境が初めて明かされるエピソードとなっている。まるで普通の子供のように老夫婦に育てられており、自室が与えられているなど、かなり贅沢な暮らしぶりである。

動物園に住んでいるという「旧パーマン」の設定は、親子関係が描かれるお話もあったりしてそれなりに好きなのだが、「新パーマン」の一人っ子ブービーも可愛いものである。


「パーマン」考察しております。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

マンガ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?