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小池さんの結婚『あこがれのラーメン』/藤子恋愛物語⑧

藤子Fキャラクターたちは、恋愛体質の持ち主ばかり。
恋をしては、フラれたり、成就したり、片思いのままだったりと、悲喜こもごもが繰り返されている。
そこで、恋するFキャラの恋模様を考察していく大型企画「藤子恋愛物語」シリーズを始動させた。
久々となる第8弾は、ラーメン大好き小池さんが、まさかの結婚を果たす貴重なエピソードを取り上げる!

藤子F先生、藤子A先生の作品をまたいで登場するレアなキャラクターと言えば、ご存じラーメン・スキ・スキ小池さんである。

藤子不二雄両先生(+スタジオ・ゼロ)によって執筆された「オバケのQ太郎」では、いつもラーメンを食べている重要な脇キャラとして登場した。モジャモジャヘアと、眼鏡、波打つような口元が外見の特徴となっている。

モデルはトキワ荘仲間でスタジオゼロの創設メンバーでもある、アニメーターの鈴木伸一。「伸一」という名前は正太のお兄さんに使われ、外見は小池さんになるという方である。

鈴木さんはマンガ通りにラーメン好きだったらしいが、「まんが道」などを読んでいると、トキワ荘メンバーはみんなラーメンが好物のように思える。藤子作品では、小池さんに限らずラーメン好きなキャラクターは数多く(黒べえ、チンプイ、のび太…)、実際には鈴木さん以上に藤子先生が大好物だったというのが定説となっている。


そんな愛すべき脇キャラの小池さんが、何と結婚に漕ぎつけるエピソードが「オバQ」にて突如登場する。出会いや馴れ初めには一切触れられず、いきなり新婚生活を送っているところから、お話がスタートする。

さて、どんな結婚生活となっているのだろうか。

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「オバケのQ太郎」『あこがれのラーメン』
(小池さんの『ラーメンがたべたいよ』)
「週刊少年サンデー」1965年14号/大全集2巻

結婚を経験されている方なら共感してもらえるだろうが、別人格の二人が一緒に暮らしていくにあたり、必ず考え方をすり合わせておくべきことが少なくとも3つあると考えている。

それが、①食生活 ②性生活 ③お金の使い方 である。

もちろん自然と一致していることがベストだが、全てそうであることはない。新しく夫婦となった者は、互いの不一致を認め合った上で、できる限り話し合いをして詰めておくべきである。この話し合いを省略してかけ離れたまま放置しておくと、共同生活は一気に破綻に追い込まれかねない


さて、小池さんと言えば、ラーメンばかりを食べている究極的な偏食家だが、新婚生活を送るにあたり、まずはその食生活を擦り合わせなくてはならないだろう。

しかし、小池さんはその肝を怠ってしまう!


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小池さんが魂が抜けたようにフラフラしている。Q太郎が声を掛けると、なんとお嫁さんが来たのだという。とても喜ばしいことだが、小池さんは憂鬱な顔をしている。Q太郎が理由を聞くと、小池さんは泣きながら「語るも涙の物語」を語り出す。

回想シーン。
お嫁さんが初めて小池さんの部屋に入ると、ラーメンの袋が落ちている。お嫁さんは、小池さんが一人暮らしでご飯が作れなかったのだと勘違いし、料理が得意な自分が、毎日心のこもったご馳走を作ると宣言する。

小池さんは隠してあったラーメンを作ろうとしてお嫁さんに見つかり、「こんなものよりもっと美味しいものを作ってあげます」と言われて出てきたのは、「スパゲッティミラネーズ」と「マカロニ・ナポリタン」。小池さんは「トホホ」と嘆きながらそれを食べることになる。

早い段階で小池さんがラーメンには目がないと告白しておけば良かったのだが、お嫁さんは一人暮らしの小池さんが仕方なくラーメンを食べていたのだ思い込んでしまう。この認識ギャップが、おかしな事態を引き起こしていく。

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作戦1:Qちゃんが差し入れ

3日間もラーメンを食べてないということで、Qちゃんが小池さんの家に一袋差し入れると、ちょうど奥さんが不在だったので、喜んで作り出す。(といってもお湯を沸かせてかけるだけ)

ところが完成と同時に奥さんが帰ってくる。Qちゃんの服の中に隠して素知らぬ顔をするが、奥さんに「あらお客様?」と尋ねられると、

「いやなにラーメンがきて・・・いや違う、Qちゃんがきて、ラーメンがある・・・じゃない話があるというから・・・」

と、完全にシドロモドロなのである。

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作戦2:空き地で食べる

先ほどのラーメンはQちゃんの足に挟んでいたということで食べられず。続けて、小池さんは空き地でハイキングをすると言って、奥さんにお湯をポットに用意してもらって出掛けていく。ラーメンはQちゃんが持ってきて合流する。

ところが、小池さんが用意してもらったポットには、奥さんが気を利かせてコーヒーが入っており、不味いラーメンしか作れない。

すると「私もハイキングに来たわ」と奥さんが現れたので、どんぶりを小池さんの口の中に隠す。そしてハイキングは止めたということで、二人は家へと帰っていく。


作戦3:正ちゃんの家で食べる

Qちゃんから小池さんのラーメン事情を聞いた正太。「気の毒だねえ」ということで、大原家に来てもらって食べさせればいいと提案する。

小池さんは「うら~めんしい」とぶつくさ言っているが、透明のQちゃんにラーメンを食べに来ないかと誘われて大喜び。奥さんに大原家に行ってくると宣言して、出掛けていく。

ところが、小池さんの目の前にラーメンが出されたところで、奥さんが「夕食の時間よ」と言って現れる。「ご飯が済んだら食べに戻ってくる」と言って奥さんに連れられて帰宅する小池さん。

ところが、特別美味しくできたと、ご馳走が出されて、小池さんは満腹に。食後に戻ってくるが、食べることができず、「悔しい」とラーメンを頭から被る小池さん。確か別の作品では、ラーメンの汁で顔を洗うシーンもあったが、いずれにせよ汚い。

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作戦4:夜遅く、外で密かに作る(別名:R作戦)

決行は今夜8時。合言葉はラーとメン。こっそりと公園のようなところで落ち合い、合言葉を掛け合う3人。お嫁さんに見つからないように、念のため木の上で作って食べることにする。

ところが、突然出掛けて行った小池さんを探して奥さんが現れて、木の下の小池さんの靴に気付いて、「あなたっ」と声を出す。びっくりした小池さんは木の上から落下。奥さんに背負われて帰っていく。

結局、4つの作戦は全て奥さんによって阻止されたのであった。


帰宅後、横になった小池さんはうわ言を言う。

「ラーメン、ラーメン、パパと一緒に食べたいな」

奥さんはこれを聞いて「そんなに好きならそういえば良いのに」と思う。

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Qちゃん正ちゃんは、このままじゃ可哀そうなので、奥さんに直に交渉してラーメンを食べられるようにしてあげようと、小池さんの家へと向かう。

すると、小池さんは「君はラーメン作るのもうまいねえ」とラーメンを食べている。一杯のどんぶりから、二人でツルツルチューと、ラーメンを食べるシルエット。それはまるで、カップルが一つのクリームソーダを二人で飲んでいるように見える。

「世話をやくことなかった」

と去っていく、正ちゃんQちゃんなのであった。

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関係ないですが、我が家も夫婦揃ってのラーメン好き。これは自然にわかりましたが・・。

また、小池さんと言えば、小池さんを主人公にしたブラックなSF短編が二本ある。同じテーマで描かれており、微妙に設定は異なりますが、基本お話は繋がっています。小池さん二部作と言っていいでしょう。

ご興味あれば・・。


「オバQ」考察も溜まってきました。


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