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エリさま大好きマール星王子のプレゼント大作戦/藤子恋愛物語⑥

藤子Fキャラクターたちは、恋愛体質の持ち主ばかり。
恋をしては、フラれたり、成就したり、片思いのままだったりと、悲喜こもごもが繰り返されている。
そこで、恋するFキャラの恋模様を考察していく大型企画「藤子恋愛物語」シリーズを始動!
第六弾はラブストーリーの要素満載の「チンプイ」から、エリ大好きなマール星ルルロフ殿下のプレゼント大攻勢について見ていく。心揺らぐエリの気持ちもご紹介。

平凡な小学生の女の子春日エリ12歳は、ある日突然マール星レピトルボルグ王家第一王子ルルロフ殿下のお妃に選ばれる。どういう審査基準かわからないが、全宇宙選りすぐりの数万人の候補者から選出されたのである。

「チンプイ」はそんな風に突然始まって、全編に渡って殿下からの求婚が繰り返される物語だ。エリはまだ小学生だし、好きな男の子の内木くんもいる。なので、殿下からのアピールは迷惑でしかない。

けれどエリが反発すれど、めげずにルルロフ殿下の求愛攻勢は続く。そしてエリにも若干の心変わりが・・。

本稿では殿下のプレゼント作戦の全貌と、対するエリの心境についてダイジェストで紹介する。


『エリさま、おめでとう』(第1話)

全てが始まる記念すべき第一話。マール星王子のお妃候補に選ばれるエリは、突然見ず知らずの宇宙人からのアプローチに対して困惑する。王室付きのワンダユウは「お心準備ができるまで待つ」と言って、チンプイを残して帰国。チンプイはまだ子供の宇宙人だが、科法という能力が備わっており、エリとは利害関係を超えた友だち関係となる。

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『エリさま、花のように』(第3話)

ルルロフ殿下やマール星の国民の要望で、日常のエリの様子を撮影することになる。エリは「見たこともない遠い星の見たことのない殿下のお嫁なんて絶対にならない」と断言する。それはごもっともということで、「わが祖国マール星」というPRディスクが用意されるが、エリはちっとも興味を示さない。

ただ、エリが家事を手伝っている映像がマール星で流されると、殿下や全国民が感動して、一日も早くマール星に来て欲しいという要望が高まってしまう。


『ワンダユウの陰謀』(第7話)

なかなかエリからの婚約承諾を貰えないことに焦るワンダユウ。『科法使いエリさま』(第6話)にて、国王陛下や殿下が待ちかねていることを吐露しており、だいぶプレッシャーがある様子

そんなプレッシャーからか、『ワンダユウの陰謀』では内木君がエリの気持ちを邪魔していると判断したワンダユウが悪だくみをして、内木君とエリの関係を切らせようと奮闘する。

この中で殿下から初めてエリに対しての贈り物が届けられる。それがルルロフ自身でナレーションを吹き込んだマール星の名所案内のディスクであった。新婚旅行の候補などを語る内容でエリには全く響いていない。

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『妃殿下の編み物』(第14話)

ルルロフとしては愛のディスクに手応えを感じたのか、再びビデオレターが贈られてくる。これについても、エリには全く響かないのだが、せっかくなので全ナレーションを抜粋してみる。

「エリさんお変わりありませんか。マール星も冬を迎えました。寒い日が続いています。でも僕は日に一度は王宮のバルコニーに立ちます。大運河の落日を眺めるのが好きなのです。黄金色のバターのような巨大な太陽が光の雫を河面いっぱいにまき散らしながらゆるゆると・・・。その眺めの美しさ、厳かさ・・・。とても言葉では表現できません。僕は、光の雫の最後の一滴が消え、紫紺の空が星で満たされるまで立ちつくしています。そして思うのです。この夕日を早くエリさんと共に眺めたいと。その時には、肌を刺す寒風も暖かい南風に変わるのではないかしら」

・・さすがにこの内容では12歳女子の心は掴めないのではないだろうか?

ちなみにこの作品では、マフラーをエリから贈られたと思い込んだルルロフは立派なスタンド花で返礼している。いつもこういうので良いように思う。

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「どうにもこうにも・・・』(第17話)

愛のディスクがまたまたワンダユウ経由で届けられるが、最初はまるで無視するエリ。このディスクではルルロフのペットである人工植物のプチフローの紹介で、その中にクローン技術についての触れている部分があり、これによってエリは、本作内での事件解決に役立てる。

以降、殿下からのディスクは必ず見ることを受け入れるのであった。


『ライバルかんげいします』(第18話)

有力な妃殿下候補だったダルーサは、エリとルルロフの仲を壊すために地球に乗り込んでくる。エリは願ったり叶ったりということで、ダルーサにルルロフ殿下のプロポーズを断る旨の大演説を撮影してもらい、殿下に伝言してもらうことにする。

ところがこのスピーチは感動的に受け止められ、このような女性に好きになってもらたいと逆に熱を上げたご様子。お返しとして、大長編のラブレターを収録したディスクを贈ってくるのであった。

このルルロフ殿下のめげない姿勢は首尾一貫していて、『海中撮影したけれど』(第27話)でエリを取り合う形となっている内木君の存在を知るのだが、「良きライバルの存在は大いに励みになる、お互い正々堂々戦おう」と力強くライバル宣言をしている。


『願いごとかなえ券』(第10話)

地球人の女の子であるエリに何をプレゼントしたら良いか迷ったルルロフ殿下は、「願えごとかなえ券」を贈ってくる。

多様なニーズを満たすために、引き出物や香典返しなどで、選べるギフトをよく見かけるが、同じような考え方の贈答品であろう。

エリは婚約は断ったはずで受け取れないと最初は拒否するが、結局ママへの誕生日プレゼントに使ってしまう。

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『わたしを科法で病気にして!!』(第44話)

「願えごとかなえ券」と同じような考え方で贈られてくるのが、「おこのみトラベルクーポン」。このクーポンを使えば、いつでも誰とでもどこへでも無料で旅行できるという、万能旅券であった。エリはこの頃になると逡巡なく使ってしまう。


『パーピー・ハウス』(第21話)

ルルロフ殿下からすれば、エリと直接会うことも、顔を見せることもできないので、エリにアタックするには、ワンダユウの力を借りるかプレゼントを贈るしか手はない。

本作では、ルルロフ殿下はワンダユウに対して「エリの欲しがっている物は何でもプレゼントせよ」と申し伝えていることが判明する。

ワンダユウが言うには、殿下はプレゼントの一つや二つで婚約を迫るようなケチな方ではなく、単純にエリを喜ばせたいという好意に基づくものらしい。

本作ではワンダユウが着せ替え人形の男子が欲しいと聞きつけ、最高級等身大着せかえ人形を用意するが、あまりにリアルでエリに拒否される。その後も人形の家が欲しいというエリの呟きを聞き逃さず、最高級の人形の家をプレゼントすると言って、春日家を壊そうとしてしまう。

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『天才画家エリさま』(第16話)

王立美術館の名画を集めた画集がプレゼントされる。名画と言いつつ、子供が書いたような絵ばかりで、マール星では形を正確に描くより絵に表された心を重く見るのだという。

そういう芸術文化なので、エリの幼稚な絵はマール星の国展で特選に選ばれることになるのであった。


『ステキな星に新築計画!?』(第28話)

妃殿下ではないからと贈り物を拒み続けるエリ。今回はなんと星一個の権利書が贈られる。マール星の外側には小惑星帯があって、小さな星が何億兆個と集まっている。説明書によれば、贈られた星は「SS8の323番星」で、空気も水も付いている高級星だという。

自転周期が8時間、ワープで35分かかる。魅力的な案件ではあるが、エリのママはスーパーが近くない所には引っ越したくないといって、この星の話はなくなってしまう。

なお本作ではワンダユウに「妃殿下様」と呼ばれてエリは普通に「はい」と答えてしまう。徐々にその気になっているようだが・・。


『エリ&チンプイ・カンパニー』(第29話)

これまでに一番価値のあるプレゼントということで、星以上の値打ち品「純ルミア製ネックレス」が贈答される。ミルアとは地球のダイヤモンドに匹敵する高級貴金属ということだが、エリにはその価値が全く分からない。本当に高いの?と感想を言われて、ワンダユウは「張り合いのないお方だ!」と呆れてしまう。

しかしエリの反応も当然のことで、ミルアとは地球のアルミのことであった。物の値打ちは、需要と供給によって定められるということがわかるエピソードである。

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『見てしまった結婚式』(第32話)

続けて殿下から贈られてくるのは「占い水晶玉」。ワンダユウ曰く、黙って覗けばピタリと当たる人生の羅針盤という、未来予知の道具である。

この頃のエリはマール星からの攻勢に嫌気を差しており、殿下アレルギーとなっている。完全にワンダユウの行為は裏目に出ているようだ。

この水晶玉は、チンプイ曰く「一種のタイムマシン」で、占いというよりは未来の映像を見ることにできるタイムテレビである。そこで、エリは誰と結婚するのかはっきりさせたいと言って、チンプイの制止を聞かずに、未来の結婚式を覗いてみるのだが・・。


『あの子はだあれ?』(第35話)

またもワンダユウとエリの受け取れ、受け取れないの押し問答から始まる。中身は「学習チョコ」というお菓子。かなり美味しいらしく、一個食べると次々と無性に食べたくなる中毒性のあるチョコのようである。

「学習チョコ」の名前の通り、勉強をしないとチョコが食べられない仕掛けとなっていて、芸ができるごとに角砂糖を貰えるサーカスの熊をエリは思い出す。

一つ食べるごとにマール星に近くなる気がするとエリは言っているが、このような食欲に訴えかける作戦は有効なようで、『魅惑のマール料理』(第56話)でもマール星のシェフが作った料理に舌鼓を打ち、マール星に来れば毎日食べられると聞いて、「そうね考えておくわ」と心が動いてしまう。

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ルルロフ殿下から贈り物エピソードとしては、もう一本『殿下に負けないで』という重要な作品がある。これは内木くんも含めた三角関係が鮮やかに描かれているお話で、こちらについては稿を改めて紹介する


ここで、おまけとして、ルルロフ殿下のエリへの想いがわかるエピソードを取り上げておく。

『エリさま、花のように』(第3話)でエリの日常を映像に残してもらったルルロフ殿下は、続けて『立体映像の使い道』(第13話)では写真を欲しがる。(見事に入手する)

さらに『海中撮影したけれど』(第27話)ではエリの水着写真をご所望され、チンプイは「殿下も意外にミーハーだ」と愚痴をこぼす。

こうしたエリの画像や映像はルルロフの元にわたり、『パリのエリおばさま』(第24話)にて、ルルロフはいつもエリのディスクを眺めてはウットリしていると伝えられる。これにはさすがのエリもテレて顔を赤らめる。

ルルロフ殿下はすっかりエリに無我夢中なのである。

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藤子作品の考察をたくさんやっていますので、是非目次へ。


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