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正月ならでは! 読者サービス満載「エスパー魔美」『ずっこけお正月』/お正月特集2022

2022年新年、明けましておめでとうございます。
本年も藤子Fノートをどうぞよろしくお願いいたします。

昨年のお正月は「ドラえもん」を中心に記事を書いたので、今年のお正月は「ドラえもん」以外の作品のお正月エピソードを数本の記事にしていきます。

「お正月特集2022」第二弾は、「エスパー魔美」唯一のお正月エピソード『ずっこけお正月』を紹介します。この作品はお正月が題材だったために、アニメ化されていない貴重な作品となっています。


「エスパー魔美」『ずっこけお正月』
「マンガくん」1978年1月号/大全集2巻

本作は「魔美」として珍しくストーリー性の薄い作品となっている。もちろん、だからと言って駄作というわけではなく、お正月から読者に元気を出してもらおうというサービス精神あふれる作品となっている。

どんなサービス精神なのかは、ストーリーを追う中で追々紹介してきたい。


冒頭、魔美は屋根の上で初日の出を拝んでいる。生まれて初めての初日の出で、「今年こそずっこけず、年頃の乙女に相応しい落ち着きを与えたまえ」と願う。

ところがこれは全部ユメ。。既に昼近くまで寝坊している魔美なのであった。いきなりずっこけお正月のスタートである。

家族三人でおせちとおとそを囲んで、新年を祝う。魔美は「パパの絵が正しく評価されますように」と口にする。そんな魔美はお正月らしく晴れ着姿。ママもパパも「晴れ着を着ると一応女の子らしくみえる」と言って少し嬉しそう。

ちなみに晴れ着の値段は、「目玉が飛び出す」レベルだという・・。

読者サービスその1 → 魔美の晴れ着姿

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晴れ着を着慣れていない魔美は、おせちを食べるのも一苦労。歩けば大股歩きとなり、ママに注意される。そして階段で2階に上がろうとすると、裾が絡まって転げ落ちてしまう。

よって、玄関口での記念撮影では怪我を負っている魔美なのである。

佐倉家の記念撮影の隣では、陰木家も玄関口で撮影を行っている。そこにはすっかり毒気の消えた陰木夫人と、最近まで寝込んでいたとは思えない程に元気な陰木主人、そして出所から帰宅したばかりの息子の姿がある。

ペットのメリーちゃんも一緒にいて、コンポコは柵を乗り越えて会いに行ってしまう。兼ねてから、コンポコを寄こさないように注意を受けていたので、魔美はコンポコを制止する。ところが陰木夫人は「まあまあよろしいじゃございませんか」と喜んで受け入れる。

陰木家との攻防は「エスパー魔美」序盤の見所の一つ。攻防の歴史が続いていたが、本作においてその最終的な結論(=ハッピーエンド)を垣間見ることができる。これまでのお話は以下で考察しているので、お暇であれば・・。

陰木家の様子を見て、魔美は「幸せな人を見るのって大好き」と踊りだし、着物の裾が絡んでまたも転んでしまう。そろそろ潮時ということで魔美は着物を脱がされてしまう。高畑くんに見せたかったのにと嘆く魔美なのであった。

読者サービスその2 → 陰木家のハッピーエンドを描く

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一度取り乱した魔美だったが、今年こそは女の子らしくおしとやかにという決意を思い出し、心沈めるためにサイダーを飲む。ところがそれは、おとそ用に冷やしてあった日本酒であった。

お酒を飲み慣れていない魔美は、一瞬でベロベロに酔っ払い、ここから大騒ぎのスタートとなる。

まずは年賀状を取ってきてと頼まれ、テレキネシスでポストからバラバラと年賀状を部屋の中へと投げ入れる。続けて、届いた年賀状のお年玉番号を見て、どれがハズレでどれが切手シートかがすぐにわかってしまう。みかんを一つ取ってもらうと、その勢いで無意識にテレポートしてしまう・・。

酔っ払うと、何かのタガが外れて超能力が冴えてしまう傾向があるようで、魔美が大人になってからの飲み会に不安を覚える一幕である。

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酔いはさらに回る。屋根の上にテレポートした魔美は、お年玉をたくさんくれるおじさんの姿を確かめると、即座に玄関へとテレポート。しかし無意識に「部分テレポート」となり、ワンピースを屋根の上に残して下着姿で出迎えてしまう。

人目につかない所で酔いを醒まそうと、高畑くんの家にテレポートで向かうが、お正月の空は羽根つきやら凧揚げやらで賑わっている。歩きで高畑家に向かうが、飛び回っていたのでさらに酔いが回っている。


高畑家に着くが、不在の様子。魔美は様子を見るためにフワリと浮かんで二階の窓から覗き込む。ところがその様子を下から男に見られていた。魔美はパンツを見られたということで「わー、エッチ!!」と騒ぎ立て、男は驚いて逃げて行ってしまう。

ここで珍しく作者の声(ナレーション)が入る。

「マミが追っ払ったこの男、実は高畑家に入ろうとした空き巣であった」

この先のお話では、魔美がドジを踏む ⇒ しかしそれは誰かの助けになっていたという構成が続いてい。

読者サービスその3 → 魔美のパンチラ

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仕方なく幸子の家に向かう魔美。幸子は魔美の友人でかつてエスパーであることを疑われたり、一緒に旅行に行ったりする仲である。

その途中、空き地で凧揚げをしている子供たちを見かける。みんなが勢いよく凧を揚げている中、うまく凧を操れない少年が目につく。そんな少年を「やあい下手くそ」と心無くバカにしているのは、ジャイアンとスネ夫。ドラえもんからのゲストキャラ登場である。

藤子Fワールドは同じ世界観を共有しており、他にも『うそ×うそ=?』でもドラえもん・のび太・しずちゃん・スネ夫が映るシーンがある。逆に魔美が「ドラえもん」に登場するお話もある(『なんでも空港』)。

魔美は下手くそな男の子の凧をテレキネシスで揚げてあげる。風もないのに揚がり続けているのを見て、ジャイアンたちも集まってくる。ところが酔っ払った魔美は、凧ではなくみんなの体を持ち上げてしまい、そこから逃げ出す。

と、ここで先ほど同様のモノローグ。

「マミは気づかなかったが、偶然にもこの時、木から落ちようとした子を助ける結果となったのだ」

人知れず、人助けをしていたようなのである。

読者サービスその4 → スネ夫・ジャイアンのゲスト出演

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幸子も親戚の家に出掛けて不在。今年はツいてないと思い始める魔美。酔いも醒めつつあるのだが、ここでクシャミが止まらなくなる。魔美の超能力にとってクシャミは気を付けなくてはならない存在で、思考を乱して念分裂エネルギーを発生させてしまう。(『友情はクシャミで消えた』)

このあと、3回に渡って道端でクシャミを繰り返し、その都度思ってもみない念分裂を引き起こす。しかし、それらは、なぜか人助けに貢献しているというオチが続く。

道路でクシャミをしてゴミ箱を散らかしてしまう。→ゴミに混ざっていたダイヤが発見される。
道路でクシャミをして窓ガラスを割ってしまう。→ガスが充満していた家の窓ガラスだった。
道路でクシャミをして走行中の車をパンクさせてしまう。→ガソリンスタンドに突っ込む寸前の酔っ払い運転だった。


そうして、まとめのようにナレーションが流れる。

「だが、マミはそのことを知らない」

魔美は落ち込みながら家へと戻る。おっちょこちょいで、元旦からズッコケてばかり・・。気持ちが暗く沈む魔美。何人もの人を助けてきたことを知らないので致し方ないところであるが・・。

ナレーションでも「かわいそうなマミ」と言われている。

ところが、部屋に戻るとおじさんが残してくれたお年玉袋を見つける。中を覗き、ニタ。どうやら満足する金額が入っていたようである。

そこへ高畑くんが年始の挨拶に現れる。喜んで出迎える魔美。そしてコンポコも連れて一緒にどこかへと出掛けていく。すっかりご機嫌な魔美なのである。

読者サービスその5 → ハッピーな気持ちとなるお正月!

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本作は他愛のないエピソードではあるが、全編に幸せオーラが漂うお気に入りの一本。是非魔美のように、ズッコケながらの活躍を自分にも期待して、本稿を終えたい。


「エスパー魔美」の考察多数です。


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