5000字超! 意外とパーマンを追い詰める悪者組織の全貌/対決・全ギャド連②
正義の味方パーマンは、活躍が世に認められ、徐々に知名度を上げていく。すると悪者にとって、パーマンは自分たちの活動(盗み・かっぱらい等)を邪魔する目の上のたんこぶとなってくる。
日本全国の悪者で組織された「全日本ギャング・ドロボー連盟」略して「全ギャド連」の加盟員たちは、どうにかしてパーマンを排除しようと作戦を練ることになる。
前回の記事では、初めて「全ギャド連」の組織名が登場した『ねらわれたパーマン』について考察した。この段階ではまだ組織の全貌は明らかにされなかった。
本稿では「全ギャド連」が登場する作品を次々と紹介していく。まずは前回の記事でも掲載した登場作品リストを記しておこう。
「全ギャド連」登場作品
『ねらわれたパーマン』「小学館コミックス」1967年5月号/大全集5巻
『〇ソ〇ロ・コンクール』「週刊少年サンデー」1967年30号/大全集2巻
『夜の魔王アカベロン』「小学四年生」1967年9月号/大全集4巻
『悪人名簿でギクリ』「週刊少年サンデー」1967年37号/大全集2巻
『コピーの秘密』「小学四年生」1967年10月号/大全集4巻
『パーマンをやっつけろ』「月刊別冊少年サンデー」1967年11月号/大全集2巻
『オカメ仮面』「小学五年生」1967年12月号/大全集4巻
『ギャド連花見』「小学五年生」1968年4月号/大全集4巻
『ギャド連大懸賞』「小学四年生」1968年6月号/大全集4巻
★本稿では太字作品7タイトルを紹介する
『〇ソ〇ロ・コンクール』
「週刊少年サンデー」1967年30号/大全集2巻
タイトルは「コソドロ」の伏字となっているが、これは全ギャド連を「全〇ド〇」と伏字にするきっかけとなっている。
突然コソドロ・コンクールの会場となってしまった須羽家。あっという間にテレビ・机・冷蔵庫・クツなど、家財道具一式が盗まれてしまう。みつ夫はパーマンとなって警備を開始する。
それを遠巻きに見ている土管の中の謎の目。それはコソドロコンクールを仕切っている人たちの集会であった。
「全日本ギャング・ドロボー連盟のコソドロ部門コンクール会場にパーマンの家を選んだ意味はそこにある。諸君は全国各地から選び抜かれた代表的コソドロ仲間のチャンピオンだ。今日こそ思い切り腕を振るって、この優勝カップを勝ち取りたまえ」
などといって、カギマークの指だけを見せて気勢を上げるコソドロたち。このセリフによって、①全ギャド連は全国的組織であること、②色々な部門のコンクールを実施していること、③須羽家を完全にパーマンの家だと認識していること、がわかる。
その後コピーロボットも盗まれ、家の中がすっかり空っぽになると、天井裏で泣いている泥棒をみつ夫が発見する。この泥棒は出遅れてしまい、取るものが無くなって泣いていたのだった。
そこでこの泥棒は、みつ夫を盗む(誘拐する)ことにする。
コンクール審査会場では、盗んだ品物の採点が行われていた。12番SS地方代表・手九瀬悪士:勉強机→15点、といった感じである。
そこへみつ夫を盗んできた泥棒が現れる。彼はXZ地方代表の白波五郎という名前であった。みつ夫を人質にしてパーマンからマスクとマントを取り上げることができるということで、100点満点で今年度のコンクール優勝者となる。
みつ夫は他の品物と一緒に倉庫に入れられるが、盗まれていたコピーロボットを見つけて、鼻を押し、縄を解かせてパーマンとなり、形勢逆転。コソドロたちをバッタバッタとやっつけるのだった。
『夜の魔王アカベロン』
「小学四年生」1967年9月号/大全集4巻(単行本未収録)
夜のパトロール中のパーマンに、しゃべるコウモリが近づいてくる。夜の魔王が呼んでいるのでついてこいと言って、パーマンを古いお化け屋敷のような建物の中に誘導する。
中に入ると、「夜の魔王アカベロン」という悪魔の顔をした男が座っている。鬼火を灯したり財宝を降らせたりと奇術を使い、パーマンを辞めるように脅迫する。パーマンが断ると巨大化し、室内を暗くして、ナイフや炎を吐く怪物を使ってパーマンに襲い掛かる。
パーマンはガラクタの箱の中に紛れて難を逃れる。すると怪物の中からコソドロたちが登場、「よくやった」と全ギャド連の理事長も姿を現す。おそらくこの回が理事長初登場のシーンだが、既にパーマンはどんな声かを知っていたようだ。
理事長は大奇術師ベラボー氏を褒めたたえる。箱の中で様子を伺っていたパーマンは、一連の奇術が手品だったことを知る。最初のコウモリもラジコンだった。
洞察力の優れた奇術師はパーマンが箱の中に隠れていることに気づき、紙でコソドロたちに指示を出して、箱めがけてナイフを四方八方から投げこむ。
ところがパーマンは箱の下の地面を掘って逃れており、そこから大逆襲を開始。あっという間に一網打尽にしてしまうのだった。
本作におけるベラボー氏は、「新パーマン」における魔土博士の先駆けであった。また、理事長が初登場する回だが、本作は単行本未収録作品となっている。
『悪人名簿でギクリ』
「週刊少年サンデー」1967年37号/大全集2巻
あろうことかみつ夫の家に全ギャド連の技術部のセールスマンが、新製品の売り込みにやってくる。当然みつ夫と話が噛み合わないが、そこでセールスマンは家を間違えたことに気づき、慌てて逃げ出していく。
この時セールスマンが取り出した名簿から、須羽家の住所が「満賀野町96番地」であることが判明する。
セールスマンは本来伺う予定の男・根住小蔵(ねずみこぞう・ネズミ顔)宅に入っていくが、そこでお得意様の名簿をみつ夫の部屋に置いてきたことに気付く。
根住はその住所はパーマンの家だと指摘し、何百人もの悪者の住所氏名が載っている名簿を取り返さないと大変なことになると大慌て。そこでこのセールスマンが売り歩いている新製品を駆使して、名簿を取り戻すことにする。
その後はみつ夫の部屋だけでなく、みつ夫が勉強しに行ったみっちゃんの家までも巻き込んでの大騒動に発展。一度は捕まってしまうが『〇ソ〇ロ・コンクール』の時と似たような展開で、コピーロボットに助けられて、パーマンはセールスマンと根住を捕まえるのだった。
ラストで悪人名簿が警察の手に渡ってしまうが、全ギャド連は大打撃だったと思われる。
また本作では縄で縛られた状態でコピーロボットの鼻を押すと、コピーもお縄状態でみつ夫になってしまう。『〇ソ〇ロ・コンクール』では同じ状況でコピーを作った場合に、縄で縛られていないみつ夫として現れた。
コピーの性能が少々あやふやなのである。
『コピーの秘密』
「小学四年生」1967年10月号/大全集4巻(単行本未収録)
パーマンセットを着たままコピーロボットを押すと、パーマンセットまでコピーされることが判明。ところが、コピーしたパーマンセットが存在していると、本当のパーマンセットを着ていても普通の人間より力が劣り、空も低空・低速でないと飛べなくなる。
パーマンが弱くなったと噂になり、それを聞きつけた全ギャド連の理事長たちは大喜び。さっそく弱くなったパーマンに大勢で襲い掛かり、ボコボコにしてマスクを奪い取ろうとする。
しかしパーマンセットのコピーを着ていたコピーロボットが元に戻ってしまい、パーマンの力が復活。大あばれして、理事長たちは逃げていく。
『パーマンをやっつけろ』(単行本未収録)
「月刊別冊少年サンデー」1967年11月号/大全集2巻
26ページの大作でありパーマン仲間全員集合の貴重な回である。本作については別の記事にて紹介する。
『オカメ仮面』(単行本未収録)
「小学五年生」1967年12月号/大全集4巻
本作も単行本未収録作品だが、全ギャド連の全貌が明らかとなるわりと重要な回である。
大枠のストーリーは、外国のギャングが幅を利かせて、国内の犯罪組織である全ギャド連は大弱り。そこでパーマンをうまく利用してギャング団を倒させようと考える、というもの。
敵はアル・カモネという親分率いるミカゴの組織の極東支部のギャング団。ギャング団の拠点がわからず、捕まえるのに手こずっているパーマンたち。
全〇ド〇連ビルに終結した全ギャド連幹部たちの会議室でも、外国人犯罪組織が自分たちの縄張りを荒らすのを何とか食いとめなくてはならないと、議題にしている。
全ギャド連の各部の被害報告は以下。
・スリ部:財布をスッた直後に、服ごとスラれてしまう
・オイハギ部:ナイフで金を出せと脅していると、拳銃で脅してきて横取りされてしまう
・カッパライ部・アキス部・サギ部:同様の被害
理事長は泣き言を止めて対策を立てろと檄を飛ばす。それを受けた議論は以下。
・犯罪技術開発部長によれば、技術・装備の面で我が国は遥かに後進国
・国産愛用のPRをするべくテレビでCMソングを流す
・「ヤンキー・ゴー・ホーム」と書いたプラカードを持って国会を囲む
・ストライキ
ここまでの数ページの議論で、全ギャド連の組織が明らかとなる。各犯罪部門ごとに「部」が作られ、部長がいる。全員ほっかむりをしたメンバーたちは、基本的に頭は良くないようである。
結局、正義の味方「オカメ仮面」に扮して、パーマンを焚きつけてギャング団を倒させようと計画を立てる。
なかなか本腰とならないパーマンを説得したり、発奮させたり、ギャング団の根城を調べて教えたりと、協力し尽くして何とか打倒ギャング団を果たす。
ただ、パーマンは「次は国内の敵をやっつける」と決意し、全ギャド連を倒す協力をオカメ仮面に要請し、理事長は困り果てるのだった。
『ギャド連花見』
「小学五年生」1968年4月号/大全集4巻
花見をしようとパーマン仲間4人が集合。時を同じくして全ギャド連も理事長以下4人で花見に繰り出してくる。ここで彼らが着けているほっかむりはユニフォームだったことが明らかとなる。
悪者たちはご馳走の現地調達を試みるが、パーマンたちもウロウロしていることに気付き怖気づく。何とかニセの喧嘩騒ぎを起こして花見に来ていた警察のご馳走を盗むが、ウロついているパーマンたちに驚いて桜の木の中に逃げこんで、ご馳走は警官の元へ戻ってしまう。
しかし警官たちは他の事件が発生したらしく、そのご馳走はパーマンたちが引き受けることになる。桜の花の中でパーマンたちが花見を終えるのを待ち、本部へと引き返す悪者たち。するとカギを閉めずに外出していたために、空き巣に入られすっからかんとなっていたのだった。
『ギャド連大懸賞』
「小学四年生」1968年6月号/大全集4巻
本作では全ギャド連が発行している機関紙「ギャド連新聞」の存在が明らかとなる。その記事の中で「大懸賞!!」の告知が入っていて、パーマンを捕まえてくれば世界に二つとない宝物が貰えるという。
パーマン以外のパー子・パーやん・ブービーは宝物が気になって、わざとパーマンを捕えさせて、宝物を奪ってしまおうと考える。なかなか悪い計画だが、悪者相手だから良いだろう、という判断である。
ちなみにギャド連新聞の他の記事は以下。
・実用ドロボー教室、空き家を見つける法
・「私はこうして一億円だまし取った」
・連載マンガ「ドロちゃん」
・今週の標語「ハエやカやパーマンなくして住みよい社会」
人相の悪い男のコピーを作り、捕らわれたフリをするパーマン。懸賞の応募先である古くなって使っていない工場に向かう。ところがパーマンは自らが倒した鉄骨の下敷きになって失神。鋼鉄のワイヤーで縛られて、悪党どもに囲まれてボコボコにされる。
理事長が月賦で買ったという中古マシンガンで撃ち込まれるが、この弾丸がワイヤーを撃ち抜き、パーマンは縛りから解かれると、一気に逆襲して一網打尽にする。
帰って懸賞の商品が入った箱の中身を確かめることに。ドキドキして箱を開封すると出てきたのはほっかむり。同封された説明文によると・・
「我らの大先輩、ネズミ小僧様が使われた覆面である。君もこれを使えば名泥棒になれる」
と、由緒あるトホホな宝物なのであった。
ざっと7作品を見てきたが、『〇ソ〇ロ・コンクール』『夜の魔王アカベロン』『コピーの秘密』『ギャド連大懸賞』では、パーマンをあと一歩のところまで追いつめている。意外にギャド連は健闘しているというのが今回の記事化での印象である。
また、みつ夫の家をすっかりパーマンの家と認識しているので、パーマン側から見れば心休まらない。
2本の記事で全ギャド連の活躍(?)と組織内部を明らかにしてきたが、もう一本、単行本未収録の異色作『パーマンをやっつけろ』が残されている。
旧パーマンでは一、二を争うほどのパーマン大ピンチ作品で、かなり注目の一作である。これを次回の記事で詳しく解説する。
「パーマン」考察たっぷりやっています。
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