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パーマンだって一人の夜は怖いのだ『心細~い夜』/心細い夜の話①

子供たちにとっての恐怖をテーマにすることがお得意のF先生。藤子Fノートでは、そんな子供目線に立って描かれた恐怖エピソードを、これまでもまとめて紹介してきた。

それは例えば「誘拐」であったり、「カツアゲ」であったり、「幽霊」であったりする。

本稿でご紹介したいエピソードは、子供たちの身近な恐怖である「夜」をテーマとしたお話。しかも「独りぼっち」というおまけつき。藤子世界の超人的な能力や道具を持つ者にとっても、「独りぼっちの夜」は恐怖の対象であるようだ。

そこで、「心細い夜の話」と題して、藤子ヒーローたちの恐怖の一晩について見ていきたい。まずは、我らがヒーロー、パーマンから・・・。


「パーマン」『心細~い夜』
「小学三年生」「小学四年生」1983年7月号/大全集8巻

「パーマン」では度々ユーレイ騒動が起こるのだが、その度にユーレイ嫌いなみつ夫は、オーバーに怖がっている。よって、当然のごとく、一人で家に留守番なんて状況になると、怖くて怖くて仕方が無くなってしまう。

そんなみつ夫が、その晩はパパとママとガン子が揃って田舎の親戚に出掛けてしまい、勉強が遅れるからという理由で連れて行って貰えず、一人留守番することになる。心細くて仕方がないが、その様子を見ているカバ夫とサブ。何やらいたずらを思いついたようだが・・・。


日も暮れていよいよ心細くなり、パーマン仲間を呼んで一泊していかないかと誘うのだが、「パーマンのくせにだらしない!」と叱られてしまう。仕方なく、あまり頼りにならないけど・・・とコピーロボットの鼻を押す。これで一応独りぼっちではなくなる。

みつ夫とコピー二人で晩ご飯を囲む。コピーは「二人でご飯なんて珍しいね」と喜ぶのだが、みつ夫は実は・・・と事情を切り出す。ユーレイ大嫌いなみつ夫のコピーなので、「二人きりで留守番」と聞いて、一気にテンションダウン。

「一人よりマシだろ」とフォローするみつ夫だが、コピーは猛烈に反論。

「それは違う!頼りないのが何人集まっても、頼りないことには変わりないよ、はっきり言って!」

確かにおっしゃる通り。ダメな人が何人いてもダメなものである。

そして、「僕は降りる」と言って、自ら鼻のボタンを押してロボットへと戻ってしまう。「ロボット三原則」提唱者のアイザック・アシモフも吃驚の身勝手なロボットの行動だが、それほどにコピーとしても夜は怖いのである。


パーマン仲間もコピーにも相手にされず、いよいよ独りぼっちの夜を迎えるみつ夫。外では強めのイヤな風が吹いてくる。そしてたまたま付けていたテレビのチャンネルでは、よりによってユーレイものの番組となる。

気を取り直して、ベッドで漫画を読もうとするのだが、たまたま手に取った本が「吸血ゆうれい」というタイトル。なぜ幽霊嫌いなのに、そんなマンガを蔵書にしているのだろうか?

もう寝るしかないと布団に潜り込むが、明るいうちにおしっこを済ませておかなかったばかりに、強烈な尿意に襲われる。みつ夫は怖がりのクセに、準備不足の感が否めない・・。


夜道をカバ夫とサブが歩いている。何かを手提げに入れていて、みつ夫を驚かそうと画策しているようである。

ビビっているみつ夫だが、そこへパーマンバッヂが大きな音を出す。一瞬焦るも、事件と聞くと、表情が変わるみつ夫。ヒーローの顔である。コピーを呼び出し、自分はパーマンセットを装着。すると、これまでとは打って変わって、勇気百倍のご様子。

対するコピーは、急に一人で留守番をさせられることになって、「こわいよォ」と泣き言を言う。

勢いよく夜空へと飛び出したパーマン。「バカに張り切っているわね」とパー子。そして現場へと向かう前に・・・パーマンは一人道端へと降りて、ドブで立ちションをする。軽犯罪法違反である。


一方で、「早く夜が明けないかなあ」とビビりまくっているコピーのみつ夫。すると、トントンと玄関の戸を叩く音が聞こえる。そして「こ~んば~んは~」と気持ち悪い声が聞こえてくるので、恐る恐る戸を開けると、そこには誰もいない。

恐怖MAXとなったコピーは、ワア~と家の中へと逃げ出すのだが、その勢いで柱に鼻をぶつけてしまい、ロボットの姿へと戻ってしまう。それにしても、コピーロボットの元に戻りやすい構造は何とかならないものだろうか。


玄関口に隠れていたのはカバ夫とサブ。二人で大き目の白い毛布を被って、家の中へと入っていく。ビビるみつ夫にさらなる追い打ちをかけようというのである。(そして不法住居侵入でもある)

ところが二階のみつ夫の部屋には誰もいない。人間が消えるわけがないと、家中を探し回るのだが、やはり見つからない。いない訳がないとカバ夫が廊下を走り回ると、転がっていたコピーの鼻を蹴飛ばしてしまう。

この時、カバ夫は毛布を被ったままで、コピーのボタンを押している点にご注目。これにより、コピーも毛布を被ったままの状態のカバ夫となる。そのままフラフラとカバ夫たちに元へと歩いて行く。


毛布男を見たカバ夫とサブは、「ははんみつ夫だな」と察知。こんなものを怖がらないと、毛布をまくるカバ夫。・・・するともう一人のカバ夫が姿を現す。

「ギャ~」と天地がひっくり返るほどに悲鳴を上げる二人。そのまま一目散に逃げ帰ってしまう。確かにドッペルゲンガーを見たら、誰でも驚愕するのは当然である。


一方のパーマンは、あっと言う間に事件を解決してしまったようで、パー子たちに「一晩中みんなでパトロールしないか」と誘うのだが、「バカ言わないで」と一蹴。

渋々帰ることになるパーマンだったが、いざ帰ってみると、コピーがカバ夫になっている。「ありがたい!」とパーマン。カバ夫がいると思えば、安心して眠ることができるというわけである。


普通に考えれば、最強のパーマンが一般人のカバ夫を頼るのも変な話なのだが、ユーレイ的な怖さは、ヒーローであっても関係ないのである。


さて、次回ではもう一人のヒーロー(ヒロイン)の怖~い夜を覗いてみたい。


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