不死身ロボット、操縦不能!『唐倶利武者』/ロボットの反乱⑤
「ロボットの反乱」と題して、主に感情を持ってしまったロボットが、何かのきっかけで人間に反発心を抱いて、反乱を起こすというお話をいくつか見てきた。
感情の存在が、人間的な性格を生み出し、自分たちを粗野に扱う人間が許せなくなって反乱に至るというのが典型的なパターンである。(『ロボッターの反乱』)
ところが、藤子作品に登場する数多のロボットの中で、最も人間的な感情を持つと「キテレツ大百科」のコロ助は、人間(キテレツ)に対して忠誠的である。主従関係を重んじる武士の心を受け継いでいるからかもしれないが・・。
もっともそんなコロ助も、普段はキテレツの助手として発明の手伝いをしているが、時々はキテレツのやり方に反発を覚えたりもしている。けれどそれは、自分を蔑ろにされたからではなく、キテレツのことが心配だからに他ならない。優しいロボットなのだ。
さて、そんな「キテレツ大百科」においては、コロ助とはまた違ったロボットが発明されている。こちらは自らの意思で動き回れるコロ助と違って、操縦が必要なタイプである。したがって、感情も持たないロボットなのだが、果たしてどんな「反乱」を起こすのだろうか。
「キテレツ大百科」『唐倶利武者』
「こどもの光」1977年6月号
キテレツ世界のジャイアンことブタゴリラも、ジャイアン同様、力が全てだと思っている男である。そんなブタゴリラが剣道を習い始め、スジが良いと誉められたので、調子に乗ってキテレツたちを竹刀で殴ってくる。
力任せの横暴に対して、キテレツは「少し懲らしめよう」ということで、お侍型のロボット「唐倶利武者」を作ることにする。大百科第一巻32ページの発明である。
見た目は細身で小さいが、眼光が鋭く、脇に刀を差している。頑強で大砲でもビクともしない不死身の体を持つ。一輪車を足にして動き回る仕掛けで、遠くから電波を使った遠隔操縦が可能だ。刀は体に当たると痛いが怪我はしない。「オート・クイック・リアクション」機構によって、どんな剣豪にも負けない力を持つ。
すぐに「唐倶利武者」は完成し、試運転としてコロ助と剣の勝負をすることになるのだが、身軽でコロ助の剣はかすりもせず、逆に「自動戦闘機構」を作動させると、素早くコロ助に襲い掛かってくる。
「怖いナリ。助けてナリ」
と逃げ回るコロ助。。
さっそく、「唐倶利武者」をブタゴリラの元へと送り出す。ロボットの目から入った光線がコントローラーのモニターに映し出されることで、遠隔操作が可能なのだが、ラジコン以上に操縦が難しいという。ここでは、操縦が難しいという点は押さえておきたい。
探し物が得意なコロ助が、ブタゴリラを探しにいく。キャラ的には「パーマン」のブービーに近い役割である。
その間、キテレツが唐倶利武者を操縦していると、野良犬がロボットに襲い掛かってくる。狂犬病発症間違いなしの獰猛な犬だが、唐倶利武者は一瞬で切り倒してしまう。
唐倶利武者の強さが分かったところで、コロ助が空き地で刀を素振りしているブタゴリラを見つけて報告に来る。仕事が早い。
空き地では、ブタゴリラが刀を振り回しており、自分の顔を見てコソコソみんなが逃げ出すので、イライラしているようだ。
「少しは歯応えのある相手が現れないものかなあ」
そこへ、コロ助が現れる。コロ助は、「お待ちかねの強豪」だと言って唐倶利武者を見せつける。ブラゴリラは、すぐにキテレツが造ったと見抜き、ぶっ壊してやると、戦いを挑むことになる。
ブタゴリラとロボットの対決ということで、周辺から子供たちが集まってくる。コロ助は、「ブタゴリラのやられるところを見物するナリ」と呼びかける。
そして戦いが開始。飛びかかったブタゴリラだったが、さっと剣で頭を一撃殴られると、あまりの痛さに「キャア」と逃げて行ってしまう。簡単に勝負ありだ。
キテレツはこれで留飲を下げて、ロボットを停止させる。そしてみんなの喜びの声を聞くために空地へと向かう。
一方、逃げ去ったブタゴリもただでは転ばない。キテレツが家を出て行く様子を覗き見て、「キテレツに頼まれた」とキテレツのママに嘘をついて、部屋から唐倶利武者のコントローラーを奪っていく。。
空き地ではブタゴリラを倒したロボットを囲んで、子供たちでワイワイしている。さすがキテレツと賛辞を浴びる。すると、ロボットが突如起動。その場にいた子供たちに次々と襲い掛かってくる。操作をするのはもちろん、ブタゴリラである。
そして逃げるキテレツに目を付けて、ロボットが後ろから追ってくる。ところが、キテレツが急に方向転換すると、ロボットがその動きについて行けず、かべにぶつかってしまう。どうやら、ブタゴリラはコントロールに慣れていないようだ。
さらにキテレツがジグザグに逃げ回ると、いちいちカベに体をぶつけて一向に追いつけない。すると、走ってきた車に唐倶利武者が跳ねられてしまう。
不死身の躯体を持つロボットは、すぐに態勢を立て直すのだが、なぜか凄いスピードでどこかへと走り去っていく。ロボットの暴走である。
唐倶利武者が向かった先は、自分をコントロールをしていたブタゴリラ。そして、勢いよくボカボカボカとブタゴリラを滅多打ちにする。キテレツはそれを見て、
「ははあ、配線が狂って電波の送り主をやっつけるようになったんだ」
と分析する。
ロボットの反乱とまでは行かないが、配線が少し狂うだけで操縦している人間に襲い掛かるという恐ろしい事態ではある。
「解説はいいから早く故障を直してくれ」
と泣き叫ぶブタゴリラなのであった。このロボットに逆襲される感じは、ドラえもんの『家がロボットになった』でジャイアンを思い起こさせる。本作の6カ月後に描かれた作品である。
さて、「ロボットの反乱」とは少し言いすぎのお話でした。なお、「キテレツ大百科」には、植物を人間のように感情を持つように変異させた結果、言うことを聞かなくなるというお話が存在している。
『人間植物リリー』という作品で、人造人間と言える植物人間を作るので、広義の意味ではロボットものと言えなくもない。リリーは、本作と違って、最終的にはブタゴリラと仲良くなる。
良作なので、またどこかの機会でこちらも取り上げたい。
「キテレツ大百科」も絶賛、考察中です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?