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学校は地下鉄(メトロ)に乗って『Qちゃん鉄道』/地下鉄作っちゃえ①

東京に出てきた時、張り巡られた地下鉄網の目の細かさにたじろいだ。けれど、地上二階に駅のある銀座線渋谷駅や、乗り換えといっても2~300mもホームが離れていることに驚いたりしているうちに、すぐに地下鉄の虜になった。

その後は、地下鉄路線図を暇さえあれば眺めていたし、「地下鉄の謎」みたいな都市伝説本を手に、実際に地下鉄を乗り継いだりした。そして田舎者にありがちだが、もともと東京都に住んでいる人以上に地下鉄のことに詳しくなったのだった。


富山出身の藤子先生が安孫子先生と共に上京したのが1954年。この年に戦後初めての路線となる丸の内線が敷設されている。その後、日比谷線やら東西線が敷かれていくのだが、そうした東京の地下鉄網の発達を横目にしていたのである。

藤子作品の中には、地下鉄をテーマとした作品がいくつか存在する。今回、オバQ、ドラえもんと二作を取り上げていくが、二作には共通項がある。それは、「自分たち専用の地下鉄を作っちゃえ」ということだ。

地下鉄は自由に地下を掘って路線を敷くので、目的地へ一直線にショートカットしているイメージがある。地上に電車を引くには、住居が邪魔でとても一筋縄にはいかないが、地下ならあっという間だ。(実際には違うのだが)

そんな便利な近道になる地下鉄のイメージを反映した作品ではないかと思う。


『Qちゃん鉄道』「週刊少年サンデー」1965年44号/大全集3巻

正ちゃんがパパに車を買わないかと言ってくる。自動車で通学したいというのである。自動車を使うメリットを色々と出すのだが、結局は金持ちの木佐君が、自動車で学校まで送ってもらっているのを羨ましく思ったからであった。

そんな正ちゃんの願いを叶えるために、Qちゃんがいつもの浅知恵を繰り出していく。本作の前半は、そんなドタバタがメインとなる。

プラン①:籠を用意
江戸時代のように籠を車代わりにして運んでくれるというもの。しかし、籠の担ぎ手は、Qちゃんの他には正ちゃんしかいない。よって、正太は空っぽの籠を抱えて学校に行くハメとなる・・。

プラン②:土管を発射台にして打ち上げる
ちょっとしか飛ばない

プラン③:ロープウェイ作戦
電線をロープとするロープウェイ。当然感電してしまう。

プラン④:庭から学校まで鉄道を敷く
『決戦オバQとりで』でお城を作った木箱を再利用して枕木にする。太い針金を張って、戸車のついた客車を走らせる。とても具体的なアイディアだが、問題は機関車をどうするかということである。Qちゃんは蒸気が必要だということでヤカンを乗せてみるが、当然走らない。


鉄道プランを実現させようということで、機関車をどうするかは正ちゃんが受け持ち、Qちゃんはレール敷を引き受けるという役割分担。

ところが、Qちゃんのレール敷設は他所の家に引こうとすると拒否られ、道路に引こうとするとお巡りさんに止められてしまう。正ちゃんも電気機関車を作るべくと扇風機を改造しようとするも、頓挫する。

やはり鉄道は無理か・・・。そんな風に思ったところで、Qちゃんが何やら閃いた様子。それは地下鉄作りである。地面の下を掘るなら誰にも文句を言われないというわけだ。

しかし、地下鉄工事は、掘削の技術や途方もないマンパワーも必要とされる。とても正ちゃんQちゃんでは太刀打ちできない。

やはり、地下鉄もダメか・・・。そんな時に、今度は正ちゃんが閃く。鉄道を株式会社にしようと言うのである。通常は株をお金で買ってもらうが、正ちゃん考案の株式会社では、株主になるためには地下の穴掘りを手伝わなくてはならない。金ではなく、労力を株主に求めるというアイディアなのだ。

ただ、正ちゃんが声を掛けられるのはゴジラやよっちゃんだけなので、彼らもすぐに音を上げてしまう。


正ちゃんは地下鉄作戦を諦め家へ戻る。あくまで初志貫徹のQちゃんは、諦めきれないでいると、モグラが穴を掘っているのを見かける。そうだっ!と喜ぶQちゃん。今度はどんなアイディアが降って湧いたのか・・?


Qちゃんが庭で何かを掘り起こしているが、それはなんとミミズ探し。地下鉄とどんな関係があるのかと思いきや、ミミズをご馳走するからと言ってモグラの大群に地下の掘削を頼んだのである。

丸々太ったミミズを取ったその晩のご飯はうどん・・・なんて逆を挟みながら、Qちゃんは徹夜で工事監督をすると大張り切り。ミミズをエサにモグラに穴を掘らせて、Qちゃんはレールを敷いていく。

これで地下鉄を敷くことは叶いそうだが、先ほど語られた問題点が解決できていない。電車の動力源をどうするのかという根本的な問題である。


翌朝。正ちゃんが目覚めると、なんと地下鉄工事は完成したとQちゃんが胸を張る。これで歩かずに学校に行けると小躍りした正ちゃんは、ゴジラやよっちゃんも受け入れて、いざ地下鉄で学校へ。

ただ、機関車はどうなったんだろうか? Qちゃんは「そこにぬかりはない」と自信があるようだ。その仕掛けとは、学校まで地下鉄は坂になっていて、ひとりでに客車が転がっていくというもの。

似たようなアイディアは他のオバQにもあったが、タイトルを失念。見つかり次第記載したい。


テープを切って開通式を行い、いざ出発。スピードも意外と速く、順調なスタートだったが、途中下水が天井から漏れていてずぶ濡れになったり、ごみの埋め立ての中を走るのでもの凄く臭かったりと、段々悪い面も見えてくる。

しばらくして、学校の真下へと到着。ただしブレーキが無いので、止まる方法は壁にぶつかるのみ。そして地上へと長い縄梯子が伸びている。ずっと掘り下げてきたので、なんとそこは地下約300mだという・・。

Qちゃんは空を飛べるので問題ないが、正ちゃんたちはバランスの悪い縄梯子を命がけで登る羽目に。学校の地下までは楽ちんだったかもしれないが、地上に上がるまでの労力が、全く割に合わないのである。


ちなみに、東京の地下鉄の最も深い地点は都営大江戸線の六本木駅で、深度42.3mもあるという(と言ってもQちゃん鉄道の7分の1くらいだが)。これは実に地下7階分とのこと。

後から掘られる地下鉄が、既存の地下鉄よりも深い地点を進むのは構造上どうしようもないところだろうが、それにしても六本木駅は深すぎる。

たしか、六本木付近の大江戸線の上には巨大な水道管だか、電気だかが通っているからと、前に読んだ本には書いてあったが、実際どうだろう? 地下謎本でも引っ張り出してきて、確認してみたいところではある。




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