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Qちゃんは予定通りに行動する『スケジュールをおっかけろ』/スケジュールは大事①

毎週日曜日の夜。つまり今日。次の一週間のスケジュールをざっと確認する。夜が埋まっている日はいつか、朝早く動き出さなくてはならない日はいつか。ザザッとスケジュールを頭に入れる。

コロナ以降はリモートで済ませる会議も増えたし、わざわざ先方に出向かなくても事足りることが多くなった。かと思えば、リモートMTGが早朝だったり、遅い時間に組まれることもある。会議が何本も繋がってしまうこともあるし、外出先のどこかでリモートできる場所を確保しなくてはならないこともある。

深く考えずに、とりあえず会社に出勤すればそれで良かった時代は、スケジュールという観点からすれば、とても楽だったのかも知れない。


さて、藤子作品においても、スケジュールをテーマとした作品がいくつかあるので、こちらを紹介したい。

一本目の記事では「新オバケのQ太郎」から、Qちゃんが自分で決めたスケジュールをバカ正直に守ろうとするお話、次稿では「ドラえもん」から、スケジュールを管理してくれる機械のお話を取り上げる。

この2作は非常に近いタイミングで発表されており(新オバQ→ドラ)、僕には同じネタから同時に生み出された連星のように思える。テーマも同じであるし、共に非常にナンセンスなギャグ篇でもある。

スケジュールを決めて、その通りに実行していくことは非常に重要なことだと僕らは教えられたが、この二作を立て続けに読むと、実はスケジュールを守ることは重要ではないという事実が浮き彫りになるように思える。


「新オバケのQ太郎」『スケジュールをおっかけろ』
「小学五年生」1972年3月号/大全集3巻

「スケジュールに追われる」という言い回しがある。例えば、分刻みのスケジュールに振り回される人気タレント、塾とか習い事に複数通い詰める小学生、会議が詰め込まれてランチはいつもコンビニおにぎりのビジネスマン・・。

けれど、ふと思うことがある。キツキツのスケジュールをこなすことに、何か意味があるんだっけ? と。何か目的に向かって、スケジュールを切るわけだが、スケジュールをこなすことがいつしか目的になっているように思えるのである。

本作は、本来プロセスに過ぎないスケジュールが、目的と化してしまうお話で、見事にQちゃんがその本末転倒の罠にハマってしまう。笑って読み進めるうちに、ふと我に返る・・・そんな一本となっている。


冒頭、正ちゃんがママに対して、何やら演説をぶっている。
・スケジュールを作ったのでこれをきちんと守ろうと思う
・日本人は時間にルーズと言われるがそれじゃいけない
・予定は守るという生活態度を身につけたい

たいそう立派なお話だが、次のセリフでその真意が明らかとなる。

「・・というわけ。どうしても腕時計を買って欲しいのであります」

最初から正太の魂胆(腕時計狙い)を見破っていたママは、演説中に離脱。


代わりに話を聞いていたQ太郎が「同感だ」と感心しきり。そして自分も、時計のように無駄のない生活を送るべく、スケジュールを作ろうと考える。

Qちゃんは「かっこいい~」などと言いながら紙に予定を書いていくのだが、既にこの時点で、スケジュールを守ることが優先事項だと取り違えている。確かに予定を守ることは大事だけれど、それは時と場合に依ることもあるのだ。

Qちゃんはスケジュールを完成させ、目覚まし時計を片手にさっそく行動開始する。


14:00~14:30 テレビを見る

13:45からテレビの前で待機。2時ちょうどでスイッチを入れるが、お昼の2時からQちゃんが喜びそうなアニメなどはやっていない。そんな中、ママがお使いを頼みにくるが、その予定は午後9時から15分間予定しているので待ってほしいと答える。(それまで待てないとママは行ってしまう)

テレビの時間が終わり、「やっと終わった、退屈だった」と欠伸をするQちゃん。次なる予定は・・・。


14:30~15:05 ハカセを訪ねる

ハカセの家に向かおうとするとO次郎が「遊ぼう(バケラッタ)」と声をかける。Oちゃんと遊ぶのは3時15分からだと言って出掛けてしまう。五分遅れでハカセ宅に到着。勉強中だというのに、そういう予定だからと言って、部屋へと上がり込む。

さらに「おやつが出る」と勝手にスケジューリングされているらしく、スケジュールを守れとハカセにおやつを要求。さらには、トイレに行きたくなってソワソワ始めるのだが、トイレのスケジュールは3時5分からだと言って、我慢を続ける。


15:05~15:15 お手洗い

時間になって飛んで帰るQちゃん。正ちゃんとどっちが先に入るかで、ひと悶着。


15:15~15:45 O次郎と遊ぶ

ところがO次郎の姿がない。スケジュールが狂わされるQちゃんは、「だから日本のオバケは時間にルーズだと言われるんだ!」と激昂。するとママが「OちゃんならP子ちゃんのところへ遊びに行った」と教えてくれる。

P子の家(ユカリさんの家)では、Oちゃんと二人でオセロに興じている。この二人だけの取り合わせは、少し珍しいかもしれない。

そこへ、QちゃんからO次郎にカエレコールが掛かってくる。慌てて戻ってみると、この時間はOちゃんと遊ぶ時間なんだと、勝手に作ったスケジュールを押し付けてくる。

しかし気がつけば、予定終了の15:45になってしまっている・・・。


15:45~16:30 昼寝

O次郎を呼び戻したにも関わらず、次は昼寝の時間だと言って部屋へと戻っていくQちゃん。すぐにグワーと眠ってしまう。残されたO次郎は思わず「バカラッタ」と口にする。


16:30~17:30 U子さんと公園を散歩

ガールフレンドとのデートは、たっぷりと1時間を確保。しかし寝すぎたために、既に5時20分。もう10分しか残されていない。慌ててU子の下へと駆け込むが、「散歩なんかしたくないわ」とつれない答え。

気の乗らないU子を連れて公園へダッシュ。雨も降ってくるが、今のQちゃんはスケジュールを守ることが最優先である。5時30分までに公園を一周して戻らないとということで、びしょ濡れになりながら、全速力で公園を一回り。

本来ならU子との時間を楽しく過ごすことが目的となるはずなのに、スケジュールを守ることにQちゃんは固執してしまっているようだ。ずぶ濡れのU子がそれを雄弁に物語っている・・。


さて、ここまで順調に(?)スケジュールをこなして、Qちゃんは帰宅。ご飯の時間となったので、正ちゃんが呼びに行くと、Qちゃんは目覚まし時計の前で座り込んでいる。

何かスケジュールがあるんだろうということで、先にご飯を済ませて、テレビなどを見て、正ちゃんたちは就寝時間となる。ところが、その時間になっても、まだQちゃんは部屋で座り込んだまま・・。


深夜。シクシクという泣き声を聞いて、正ちゃん伸ちゃんが目を覚ます。誰だろうと声の先に行ってみると、Qちゃんが先ほどの部屋にまだ座っていて・・・

「6時30分からご飯の予定なのに・・・。いつまで経っても6時28分なんだよう!」

と号泣。

伸ちゃんが時計を手にしてひと言、「バカだな、時計が止まってるんだ」。コテンと倒れる空腹Qちゃんなのであった。


時間にルーズもダメだけど、スケジュール通りに動けはいいって訳でもない。ああ、生きるって難しいものですね・・。



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