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パーやんの実家の秘仏とは?『怪人千面相と黄金像』/新パーマンVS怪人千面相①

「パーマン」では、準レギュラーとなるライバルが存在する。それが魔土災炎博士、全悪連(理事長)、そして怪人千面相である。

その中でも怪人千面相は、1960年代の旧パーマンから1980年代の新パーマンまで登場する人気キャラクターで、変装と脱獄の名人ということで、パーマン仲間は幾度も苦労させられてきた

「旧パーマン」における怪人千面相登場回については、既に記事化しているので、是非ともこちらをご覧下さいませ。。


本稿より数回に渡って、「新パーマン」における怪人千面相登場回を検討・考察していく。さらに、怪人千面相の関連作品なども、ご紹介する予定である。


『怪人千面相と黄金像』
「小学五年生・小学六年生」1983年9月号

本作は「新パーマン」における怪人千面相の初登場回となる。前回の登場が「旧パーマン」の『わがはいの脱獄』(67年)だったから、実に17年ぶりに顔を見せることになる。ただし、17年の間に別作品で似たようなキャラクターが登場しており、その作品も近日紹介の予定。


この稿を書くに当たり、改めて「旧パーマン」での怪人千面相の回を読み直したが、意外にもパーマン仲間の頭脳であるパーやんとの対決場面は描かれていなかった。

頭脳と変装の力でパーマンたちを苦しめる怪人千面相なので、パーやんが千面相の狙いを見破って撃破する、というような話が描かれていてもおかしくない。

そう思っていると、ちょうど本作がそのパータンの作品なのであった。千面相の意外なものまで化けることのできる変装テクニックと、パーやんの用意周到な頭脳がぶつかり合う。さながら「スパイ大作戦」のような攻防が描かれる。

二人の出し抜き合いも面白いところだが、本作ではパーやんのプライベートが詳しく明かされている点にも注目いただきたい。


さて、怪人千面相は、最後の登場回となった『わがはいの脱獄』のラストで脱獄を諦めてしまう。千面相が、挑発的に何度も脱獄を繰り返すので、思い切ってカギを開けたままにすることで、脱獄の意欲を無くさせるという作戦であった。

本作では、そんな千面相がまたもや脱獄したというニュースから始まる。みつ夫はその報道を見て、「また何か大仕事を企んでるな」と勘を働かせる。するとみつ夫の背後から、突然ママが現われ、千面相の狙いを語り出す。

「そう! また世間をアッと言わせる大計画に決まってるわ。千面相の狙いはね、今夜午前0時、大阪の金福寺から国宝級の仏像を盗み出すつもりなのよ」

何で、そんなことをママが知っているのか・・・。そう、怪人千面相がママに変装して、みつ夫からパーマンに犯行予告を伝えに来たのである。

ちなみにこのシーンでは、怪人千面相が男女関係なく誰にでも変装できることを示し、その後の伏線にもなっている。


ということで、パーマン、パー子、ブービーの三人は大阪へと飛ぶ。三人でパータッチしているので、新幹線より早く飛んでいる。本来大阪はパーやんの受け持ちということで、道頓堀に着いたパーマンは、パーやんをバッジで呼び出す。

すると「今は手が離せない」という答え。大事件より優先するべきことがあるとは思えないパーマンたちは、パーやんを当てにせず、自分たちだけで千面相を捕えようと考える。


まずは、犯行現場となる金福寺に向かう。国宝級の仏像があるとは思えない、質素なお寺である。すると、パーやんの中の人、大山法善が庭掃除をしている。手が離せないとは、掃除のことだったのだ。

パーマンは庭掃除くらいコピーにやらせればいいと指摘すると、これも修行の内だという。そこだけ聞くと立派なものだが、実際にはコピーロボットには、「パーやん運送」の配達の仕事をさせていたようである・・・。


パーやんの父親である僧侶に、国宝級の仏像があるか尋ねると、アホらしと一言。こんな貧乏寺にそんなものあるわけないという訳だ。

パーマンたちは千面相に騙されたのかと思いバカバカしくなるが、パーやんは「千面相が狙うというからには、何かあるハズ」と考える。金福寺は、今は貧乏寺でも、700年の歴史を持つ古寺なのだ。

なお、700年前というと鎌倉時代の建立となる。先ほどパーやんは庭掃除をしながら「ナムアムダブツ」と唱えていたので、おそらくは浄土宗の一派であろう。浄土宗の宗祖は「法然」なので、法善の名前はここから継承されているものと思われる。


パーマンは仏像を急いで探し出して、安全な所へ移動させようと提案するが、賢いパーやんは「今夜千面相が教えてくれるがな」と、探すのではなく待ちの姿勢を見せる。もちろん、そうなると、狙いの仏像のありかが分からないので、見張るのも一苦労となるが、果たして・・・。

夜。犯行予告時間0時が迫ってくる。本堂でパーマン4人集まり、相手の出方を伺うことに。千面相は変装の名人なので、まずはパーマンたちの誰かに変装して忍び込んでいる可能性が考えられる。

しかし、パーやんが「さすがに自分より小さい者には化けられんはず」と指摘する。このセリフ、後々考えると奥深いものがあるので、記憶に留めておきたい。


そしてついに午前0時。すると突然堂内に千面相の声が響く。

「ワハハハハハ、黄金の秘仏、確かに貰ったぞ!!」

声は土蔵の方が聞こえてくる。「しまった」とパーマン、パー子、パーやんが本堂を飛び出して行く。一人残るブービーが、「ニヤリ」と悪い顔をする。

なんと本堂の床をくり貫いて、上半身だけをブービーに変装させていた怪人千面相が姿を現したのである。そして、中央に鎮座する大きな仏像の台座部分、蓮の花びらを外すと、その中が空洞となっており、黄金の秘仏が入っている。

まんまと、千面相に出し抜かれたパーマンたち。これは、パーやんが「小さい者に化けられない」と断言してしまったので、ブービーが怪しいとは一切考えなかったことが原因。つまりは、パーやんの落ち度である。


一方、土蔵には誰もいない。すると奥の方で食べかけのバナナを片手にブービーがひっくり返っている。バナナに仕込んだ眠り薬で、眠らされていたのである。こっちが本物のブービーだとすると、本堂にいたのはニセモノ??

そして、千面相の声はカセットテープから流れてきたことがわかり、そこでようやく「騙された!!」と慌てるパーマン、パー子。しかし、パーやんは「慌てんかてよろしい」と一言。なんと、このパーやんはコピーロボットであった。


本物のパーやんは、本堂であっさりと怪人千面相を捕まえることに成功。いわば、コピーロボットをパーやん本人に変装させていたのだ。「小さい者に化けられない」というセリフは、千面相を油断させるためのものだったのだ。見事に出し抜かれた千面相は大いに悔しがる。

パーやんは時おり難事件を解決する際に、仲間のパーマンすら騙して(もしくは内緒で)、敵を倒すというやり方を取る。成功率は高いが、騙され役として利用される他のパーマンたちにとっては、かなり複雑な思いである。


さて、千面相が狙った純金の仏像は、800年前に作られたものとわかる。事件の報道と共に一躍有名となり、一目見ようと金福寺には連日大勢の人が集まってくる。みつ夫はニュースを見て、「パーやんも喜んでるだろうな」と想像する。

ところが当のパーやんは、再び収監された千面相のところへ赴き、ブービーに変装するために本堂の床に空けた穴の修理代を請求する。散々儲けているはずだが、これはこれ、それはそれ・・。

さすがに「そんなのいいじゃない」と愚痴る千面相なのであった。


さて、本作を読んで謎なのは、千面相がなぜ秘仏の存在を知っていたかということ。監獄内で情報を得たのか、もともと知っていたのかはっきりしない。ただ、僕としては、後者であると考える。

また次稿で紹介するが、千面相は美術品を愛する性格で、ある種純粋な気持ちを持っている。黄金の秘仏について、兼ねてから文献などで調査をしており、純粋に欲しくなってしまったのではないだろうか。

ただ、怪人千面相は、怪人20面相同様、盗む前に犯行予告を出すことにもこだわる男。その癖を無くせば、今回だって簡単に盗み出せただろうに・・。その主張の強さは、何とも愛せる人物なのである。


「パーマン」考察やっています。


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