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パーマン5人大敗北!?『パーマンをやっつけろ』/対決・全ギャド連③

パーマンの活躍によって肩身の狭くなった悪者たち。彼らが所属する全国組織「全日本ギャンド・ドロボー連盟」略して「全ギャド連」のメンバーたちは、パーマンを目の敵にして、幾度となく排除しようと作戦を立てる。

改めて「全ギャド連」の登場作品を見ていくと、最終的には失敗するのだが、意外にパーマンをあと一歩の所まで追い詰めていることがわかる。それまでの攻防は以下の記事を参照下さい。


本作は全ギャド連の苦心の策がヒットし、パーマン5人全員がマスクを剥がされそうになる大ピンチに追い込まれる。非常に興味深いお話なのだが、残念ながら単行本未収録作品となっていて、僕自身も大全集が出るまで読みたくても読めなかった。

しかもパー子の正体に関する大事なシーンもあるので、その点にも是非注目して読み進めたい一作だ。

『パーマンをやっつけろ』(単行本未収録)
「月刊別冊少年サンデー」1967年11月号/大全集2巻

ギャングを追っているパーマン4人。その途中で流星が落ちて、パーマン一号は皆から離れてその様子を見に行く。するときれいに光る野球ボール大の隕石が見つかるのだが、近づくと頭がフラフラして体中の力が抜けていく

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空も飛べなくなり、這うようにしてその場を離れると力が戻る。その様子を見ていたギャングの男。この隕石を使えばパーマンの力を弱めることができるかも、ということで、拾って全ギャド連の本部へと持ち込む。

理事長は最初疑いの目を向けるが、パーマンセットは宇宙から来たらしいのでその力を消す物体が宇宙から来ることもありうる、と納得する。


さて問題となるのは、この石をどのようにしてパーマンにくっつけるか、である。全ギャド連の技術開発部が考え出した方法は、隕石を5つに割って腕時計に隠し、これをパーマンたち5人に身に着けさせるという作戦だった。

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そして最後の難問はこの腕時計をどのようにして5人に渡して、身に着けてもらうかである。理事長から指名されたギャングの男と助手の二人は、あの手この手で時計をパーマンたちに渡そうと試みる。

この時計を巡る攻防は、パーマンたち5人の性格もくっきりと浮彫りにすることになる。簡単に経緯をまとめておこう。


パーマン1号
時計の大安売りをして100円で買わせようという作戦。ところが金欠病のパーマンはたった100円も出せない。それどころか所持金は5円のみ。買ってもらわなくては話にならないので、言い値で売ってしまう。

石を身に着けるとすぐに力がなくなるわけではない。パーマンは時計を着けたまま飛んで帰るが、徐々に体がだるくなっていく。部屋についてパーマンセットを脱ぐと、力が元に戻る。

ギャングたちはそろそろ力が弱まっているはずだとみつ夫の部屋に入り込むが、パーマンの姿はなく、時計はみつ夫が身に着けている。みつ夫では意味がないと時計を取り返すギャングたちなのであった。

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パーマン4号
ギャングたちは配達中のパーやんを呼んで5円の時計があると儲け話をするのだが、「安物買いの銭失い。5円でまともな時計が買えるわけがありまった?アホらし」と見向きもしない。

金銭感覚は抜群の4号は、甘い話にうかうか乗るような男ではないのである。

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パーマン3号
ファンだと言って呼び止め、時計をプレゼントすると申し出ると、「時計なら持っているもの・・ダイヤとルビーとサファイヤの飾り付きよ」とこれまた相手にしない。

子供のくせに高級品を持っている3号は何者なんだ、とギャングたちは驚く。旧パーマンの連載中は3号の正体は明かされないままだったが、このやりとりと、本作ラストに一瞬だけ見えるパー子の髪の毛から、正体は「あの子」で決定的となっている。

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パーマン2号
ただで時計を渡すと「ウキー、ヒーッホーッ」と喜ぶブービー。しかし時計には目もくれず、バナナと取り換えようと八百屋に向かう。花より団子のタイプなのだ。

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パーマン5号
時計を渡されいじっていたかと思うと、ギャングの首にしめて飛んで行ってしまう。いたずら好きの赤ちゃんなのである。

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時計を渡す作戦が一向に進まないギャングたち。理事長が見ちゃおれんと怒り出し、「能無しは有害だ、消えてもらう」と脅しをかけてくる。「今夜ひとまとめにやります」と嘘をついてその場を逃れるギャングと助手。

次なる作戦は、世の中がニセモノのパーマンセットを着て歩くのがブームとなっていることに着目して、自分たちもパーマンマスクを被って、「パーマンに感謝する会」を立ち上げて、パーマンたちに腕時計をプレゼントしようという計画である。

申し出を受けたパーマン1号は、ほとんど疑うこともせず、「贈呈式を深夜12時に行う、全員で来ないと時計を上げない」という指定を受け入れてしまう。

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残りの4人のパーマンは時計を全く欲しがらないが、「せっかくくれると言っているので行かなくては失礼だ」とみつ夫。特に用事があるというパーやん含めて、無理やり全員を指定場所となった公園の見晴らし台に連れていく。

ここで五人が集合し、点呼する。「一、キー、三、四、バー」と声を出すパーマンたち。気がつく人にはすぐわかるが、パーやんの鼻の色が赤くなっており、コピーロボットであることがわかる。みつ夫がパーやんにお茶を出す間にみつ夫のコピーと入れ代わっていたらしい。


ギャングたちは時計を贈り、そのまま帰ろうとするパーマンたちを引き留め、その場で時計をするようお願いする。石を身に着けてから力がなくなるまでのタイムラグをしどろもどろの挨拶で埋めて、ようやく石の効力が現れる。

フラフラして力が抜けてくるパーマンたち。そこに公園の物陰に潜んでいた全ギャド連の理事長以下、悪者たちが姿を見せる。反撃しようにもすっかり力を失って倒れ込むパーマンたち。すったもんだがあったが、全ギャド連の苦労が実った瞬間であった。


度重なる恨みを晴らす時が来たということで、まずマスクをはいで顔を見ようと言い出す理事長。手始めにパーマン3号のマスクに手をかけて、嫌がるパー子を無視してスポとマスクを取ってしまう。カチューシャを着けた髪の毛だけが一瞬見える。パー子の正体がわかる人にはわかる大ヒントとなっている。

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と、その瞬間。街灯が割れてあたりは真っ暗になる。そこへパーマンが一人飛んでくる。あっという間にあらかたをボコボコにして、時計を外すカギを奪取する。シルエットで登場したそのパーマンは、パーマン4号であった。

皆を出し抜く名人の4号だが、今回は単純に用事があったので、パーマンのコピーロボットを借りて、おもちゃのマスクとマントを着けさせていたと説明している。

ただ、コピーのパーやんは空を飛んで公園までやってきたので、おもちゃのマントではない。この点について矛盾があるように見えるが、本物のパーやんが飛んできたとわかる描写はないので、ニセモノのマスクと本物のマントをコピーに身に着けさせていたというのが正解だろうか。


一件落着となったが、パーマンは「もうちょっと遅く街灯を消してくれたらパー子の顔が見られたのに」と、まるで他人事のような発言をして、他のパーマン仲間の大ブーイングを受けるのであった。

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さて、本作はパーマン5人が一気に大ピンチに陥るという展開と、旧パーマン最大の謎であったパー子の正体の核心に触れるかなり貴重な回である。

特にパー子については、子供なのに宝石を散りばめた時計を着けていて、相当なお金持ちであることが判明する。また、特徴的なカチューシャと髪型をしていることもわかる。

結局旧パーマンの連載中ではパー子の正体は明示されなかったのだが、本作においてほぼ答えを出していると言えよう。もっとも、公式に正体が明かされるのは連載が終わって、数年を待たなくてはならない。この辺りの話はまたいずれ。


「パーマン」考察はここから。パワッチ!


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