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悪者パーマンはパー子のスカートを破る『パーマンが悪者になった!!』/魔土災炎博士の珍発明⑤

パーマンが世の中に登場したことで、生活が一変した人たちがいる。それは、窃盗・強盗・かっぱらいなどで生業を立てる、世の悪者たちである。

「パーマン」世界では、悪者たちは全悪連(全日本悪者連盟)という互助組織に所属しているのだが、職が奪われ仲間たちが次々と捕まっていく中で、パーマンを強烈に憎んでいるのである。

全悪連の理事長であるドン石川は、そうした組合員の気持ちを汲んで、何かとパーマン打倒の策を練るのだが、いつもうまくいかずに返り討ちにあってしまう(ほとんどが自滅だが)。

そこで困った理事長は、町場のマッドサイエンティスト魔土災炎博士の噂を聞きつけ、パーマンを撃退する秘密兵器の開発を依頼するのであった。


魔土災炎博士は、「パーマン」登場以前に「SF短編」で二回ほど姿を見せているキャラクターで、科学者として一級の才能を持つにもかかわらず、普段はうだつの上がらない暮らしをしている。

「ドラえもん」の道具に匹敵する発明品を作り上げるのだが、詰めが甘いのか、運が悪いのか、使い方が間違っているのか、パーマンを追い詰めることがあっても、結局最後は失敗に終わってしまう。

失敗が重なることで、全悪連と魔土博士の関係にはすき間風が吹いて、時に仲間割れを起こしたり、それぞれ独自に動いてかち合ってしまったりする。もう少しチームアップできれば、パーマンを倒すことも可能なんでは・・・と思ったりもする。


これまで藤子Fノートでは、魔土博士が登場するエピソードのほとんどを記事化させてきた。過去の記事は以下である。

発明品:魂が入れ替わってしまう薬

発明品:倍速時計

発明品:赤いものを追い続けるミサイル「ブル・ミサイル」

発明品:植物・動物を巨大化させる煙

発明品:巨大ロボットの下半身(+上半身との糊付け)

発明品:地面を数ミリ凹ませる薬(瞬間穴あけ液)

発明品:パーマンの形状を追い続ける「ブル・ミサイル」改良版

発明品:タイムベルト(もう二度と作れない)


以上がこれまでで記事にした8作品。本稿では9作目となる『パーマンが悪者になった!!』を取り上げる。

この他にも2作品に登場しているのだが、一本は「パー子」の切り口で今後紹介予定で、もう一本は魔土博士と全悪連の最後の登場回となるので、これも別の記事で改めて紹介する。


『パーマンが悪者になった!!』
「小学五・六年生」1985年5月号

魔土災炎の古ぼけた屋敷は、いつものように豪雨と雷鳴が轟いている。今回魔土博士が開発したのは、「性格逆転液」という薬。飲むと、良い者が悪人に、悪い者が善人となるのだという。

この薬を正義の味方であるパーマンに飲ませれば、途端に悪の味方へと転向する。この説明を聞いたドン石川は、さっそくパーマンを悪の道へ誘うべく、薬をパーマンに飲ませることにする。


作戦はシンプルで、「性格逆転液」をスタミナドリンク「ゲンキゲン」という新製品に仕立てて、パーマンの住処と認識されてしまっているみつ夫の家にお届けするというもの。

パーマンに必ず手渡せと指示された悪者は、宅配便に変装してパーマンに会いに行くが、あいにくパーマン(みつ夫)は不在で、コピーロボットがお留守番をしている。

仕方なく、「きっとパーマン本人に渡せ」とコピーロボットにプレゼントを託すのだが、しつこく「勝手に飲むな~」と念押ししたことで、コピーが反発してプレゼントの箱を空けてしまい、中のゲンキゲンを飲んでしまう。

ちなみにコピーがパーマンへの全悪連の贈り物を勝手に開けてしまうのは、これで二回目。一度目は『ゴキブリこわい』でのゴキブリ入りの箱であった。


ロボットにも関わらず薬が効いて悪者と化したコピーは、「悪いことしたくなったぞ」ということで、銀行強盗や飛行機の爆破などがしたくなるのだが、とりあえずは目の前にいるガン子の頭をコチンと殴る。

怒ったガン子にゲンキゲンの瓶を投げつけられて、これが鼻に当たってコピーはロボットに戻ってしまう。基本的に「性格逆転液」の効用はずっと続くはずなのだが、ロボットに戻って効用がリセットし、悪者コピーはあっと言う間に姿を消してしまう。


そこへパーマンが帰って来る。その様子を見ていたドン石川や魔土博士は、「悪の味方が現れるぞ」と期待するのだが、いつまで経ってもパーマンが暴れ出す気配がない。「薬の効用は間違っていない、飲ませ方に問題があったのだ」と魔土博士は説明する。

そして、ここから三日三晩徹夜で研究を続けて、天才・魔土博士は、「性格逆転液」をソフトカプセル化させることに成功。この小型カプセルを、高性能空気銃を使って、パーマンが欠伸した口の中に撃ち込もうというのである。

ただし軽量化させたことで、薬の効き目は一時間だけとなる。魔土博士は「一時間もあればどんな大仕事でもするだろう」と目論む。ちなみにこの後の展開では、この一時間のタイムリミットという設定は、それほど本筋で生かされない。


おあつらえ向きにパーマンは徹夜で働いていたようで、大きな欠伸をしながら空を飛んでいる。ここでライフルを手にするのは、若い頃に「暗黒街の拳銃王」と呼ばれていたというドン石川理事長。カプセルを弾丸にして、パーマンの口の中に飛び込ませようというのである。

ところが何発もカプセルをパーマンに撃ち込むのだが、口の中はおろか、体にも全く当たらない。カプセルが残り一個となり、「うむ、わしも歳を取った」とがっくりする石川。

一方、眠くて仕方がないパーマンは、いつもの空き地の土管の上に寝転んで、眠ってしまう。チャンス到来とばかりに、魔土博士は最後のカプセルを寝ているパーマンの口の中に落とす。


すると目を開けたパーマンは悪者として覚醒する。「ガルル・・」と目つきが悪くなったのを確認して、魔土博士は「時限爆弾を東京タワーに仕掛けろ」と言って爆弾を渡す。

東京タワーを標的にできるのは、パーマンとギャオスだけ。パーマンは嬉々として爆弾を手にして、東京タワーへと飛んでいく。

魔土博士は、「ついに恐るべき悪魔が誕生した!」とご満悦。東京中がひっくり返るような大騒ぎとなり、パーマンは憎まれ恐れられて、嫌でも全悪連の仲間になるしかないと見立てるのであった。


はたしてパーマンは東京タワーを目がけて弾丸のように飛んでいくのだが、これを見たパー子とブービーは、様子がおかしいと察知する。一度落ち着かせようとパーマンを止めるのだが、悪者と化しているパーマンはあろうことかパー子のスカートをはぎ取ってしまう

ゲハハハと悪者の笑い声を上げながら、爆弾を東京タワーに設置、ウハハハとどこかへと飛んで行ってしまう。


時限爆弾の設定も一時間にしていたので、東京タワーの爆発まであと40分ほど残っている。しかし成功を確信した魔土博士たちは、屋敷に戻って酒で祝杯を上げることにする。

結果が出る前に安心してしまうタイプの悪者は、最後に逆転のしっぺ返しを食らいがちだが、果たして彼らもお約束の運命を辿ることに・・。

魔土博士の助手ロボットであるPマンに酒を用意させ、博士・理事長・副理事長の3人で乾杯するのだが、飲んでみると変な味がする。なんとPマン、酒が無かったので、代わりに「性格逆転液」を注いできたというのである。


悪者トリオの面々は、これですっかり良い人に。もうすぐ東京タワーが爆発するということで、自分たちのしたことを後悔し、爆弾を自分たちの手で取り除くことにする。

金庫からありったけの金を出してヘリコプターをチャーターし、東京タワーへと急ぐ悪者、いや善人たち。残り10分を切ったところで爆弾をタワーから外すことに成功。

「町中で爆発させるわけにはいかない」ということで、そのまま郊外まで爆弾を積んだままヘリを飛ばし続けて・・・、結局自分たちがドカンと爆発に巻き込まれてしまう。


ヘリから落下して丸焦げとなる3人。「変な薬を発明するからだ」「使い方が悪いのだ」といつもの責任の押し付け合いとなってしまう。

発明品が悪いのか、発明の使い方がまずかったのか・・・。このお馴染みの口論は、「包丁を発明したから殺人が起きるのだ」と同じような含蓄のあるやりとりではないかと思うのは僕だけだろうか。


一方、一時間の薬の効用が切れたパーマン。この間全く記憶が消えているようだが、スカートを剥がされたパー子に激怒されて、身に覚えのないことで追い回されてしまうのであった。

ちなみに、魔土博士の登場回では、魔土博士が発明品で自分を襲ってきていることをわからぬまま、みつ夫が酷い目に遭うことが多い。本作がその典型である。

その場合には、悪者側が勝手に自滅して、パーマンから何かアクションを起こす前に事件が解決してしまうのも定番パターンである。




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