相棒ものからヒーローものへ「ろぼっとたろう」→「すぴーどたろう」/ちょっぴりマイナーな幼児向けF作品⑮
さてさて本日も「ちょっぴりマイナーな幼児向けF作品」をご紹介。今回は、1963年に雑誌「よいこ」にて連載された作品を取り上げる。
本作がこれまでになくユニークな点としては、連載途中で物語骨子の方針転換があったこと。それによってタイトルも連載途中で変更となった。ただし主人公はたろうくんでずっと同じである。
まずはその辺を解説しておこう。
「よいこ」1963年4月号から「ろぼっとたろう」の表題で連載スタートした本作は、主人公の少年たろうと、万能ロボットばんぼの心温まる交流を描いたお話であった。
ところが連載6話目で、ロボットのばんぼは遠い国に行くことになり、不思議なひみつ道具を残して旅立ってしまう。タイトルも「すぴーどたろう」に代わり、6話目~9話目はたろうが不思議な道具を使ってヒーローのように活躍するお話となっている。(全9話で終了)
簡単に言えば「ドラえもん」から「パーマン」にお話がモデルチェンジを果たしたような構成となっているのである。
変更理由は定かではないが、人気が低迷したのでテコ入れが入り、それでも人気が浮上せずに連載が終わってしまった、というようなところなのかもしれない。
ただし、本作が面白くないかというとこれが全くそうではなく、非常に藤子F的なファンタジーに満ち溢れたお話となっている。考えようによっては、「ドラえもん」型と「パーマン」型を同じ主人公にさせるというある種の贅沢な作品と言えるかもしれない。
それでは一話ごとに作品内容を確認し、本作の魅力を深掘りしてみよう。
「ろぼっとたろう」は同年3月まで連載していた「スーパーじろう」の後継作品として登場。じろうからたろうへと主人公が変わるという、名前については少々安直な感も否めず。
「スーパーじろう」は典型的な「パーマン」型の構成で、宇宙人からスーパーパワーの発揮できる靴と手袋をももらって、世のため人のために活躍するお話であった。
「ろぼっとたろう」はそこからパターンを変えて、万能ロボットが主人公たろうを色々と助けてくれるような「ドラえもん」型の構成となっている。
記念すべき初回では、友だちを遊んでいる最中に腹痛で苦しんでいる派手な赤い服のおじいさんを助けたことで、お礼にと派手な帽子を貰う。帽子についている赤いボタンを押すと帽子の中からぴょーんと小さなロボットが飛び出し、すぐに大型化する。
大型と言っても大人の背丈くらいだろうか? そして第一話ではさっそく負ぶってもらい空を飛ぶシーンが描かれる。藤子ファンタジーと空中飛行は切っても切り離せないものなのだ。
友だちが動物園に連れて行ってもらうのを羨ましく思うたろう。母親は忙しいからまた今度と言われてクサクサしていると、ばんぼが連れて行ってくれるという。
しかしばんぼは動物園がどんな場所かわからない。・・・少しばかり世間知らずなロボットのようだ。
ライオンやゾウやサルのいるところだと説明すると、「わかった」と言ってたろうを背に乗せて飛び立つ。ところが、向かった先は海を越えて、何とアフリカ大陸へ。図らずも本場のサファリパークをたろうは堪能するのであった。
藤子作品ではお馴染み、「小さくなる」お話。ばんぼに小さくしてもらったたろうくん。飼い猫に乗って庭を走り回って喜んでいると、犬に追い立てられて猫はそのまま木の上へ。
たろうは木の枝に一人に残されてしまうのだが、おもちゃの飛行機が引っ掛かっていて、これに乗って無事部屋に戻ってくるという、ひと時の大冒険の物語でした。
浦島太郎を読んで竜宮城へ行きたくなるたろう。ばんぼにお願いすると竜宮は無理だけど、海の中に行きましょうということで、ドラム缶に窓を付けて海中散歩を手伝ってもらう。
サメに襲われるのだが、これをばんぼが捕まえて、ママへのお土産にするのであった。
ここまで、空を飛ぶ、アフリカに行き、小さくなる、海に潜る、と藤子Fワールド全開のエピソード固め打ちである。
たろうはお父さん、お母さんとハイキングへ。途中でロープウェイに乗って山を登っていくのだが、途中で故障してしまい、空の上で宙ぶらりんに。そこで不思議な帽子からばんぼを出して、ロープウェイを動かしてもらうのであった。
本作からタイトルが改称される。「ろぼっとたろう」の「ろぼっと」であるばんぼがどうしても遠い国へ行くことになり、たろうと別れることになったからである。
ばんぼは引き留めてくるたろうに、しばらく待っていて欲しい、ついては「いいものをあげよう」と言って、不思議なアイテムを与えてくれる。
くつとてぶくろは、同時期に「幼稚園」で連載中だった「スーパーじろう」の持ち物と被る。ねばねばピストルがユニークな道具で、この後のお話でも大活躍する。ぽぴーは何をするでもなく、たろうと一緒に冒険してくれる相棒となる。
ばんぼは道具一式を渡して、どこかへと飛んで行ってしまう。たろうが装備一式を着用すると、体が宙に浮かび上がる。ぽぴーも飛行能力があるようで、一緒に空を気持ちよく飛び回っていると、怪しい男が泥棒に入ろうとしているのを見つける。
たろうはすかさず飛んで行って、ねばねばピストルで泥棒を粘液で壁に貼り付けてしまう。
・・・こうして、いきなりヒーローマンガに大変身、タイトルは気付くと「すぴーどたろう」となっていたのであった。
藤子ワールドの秋の風物詩、台風。台風の中遊び回る、という展開も良くあるが、本作では大洪水を引き起こしてしまう怖い存在。
太郎は装備一式をパー着して、水害の街へと飛び出す。屋根の上に逃げ出している人々を救って、高いビルへと運ぶのだが、大勢が遭難しており、手が足りない。
そこで水に沈んでいたバスを見つけて、底の部分にドラム缶をねばねばピストルでくっつけて浮き輪代わりにする。そして水上バスに見立てて、次々と大勢の人たちを救助するたろうなのであった。
突然登場した新キャラさっちゃん。お兄さんが山登りに一人で出掛けてしまって拗ねているので、たろうが背負って空から山へと向かう。途中、もみじの紅葉を楽しみながら。
お兄さんと合流する二人。岩肌に洞穴を見つけて三人で探検に入るのだが、そこは何とクマの巣。クマに追われるお兄さんだったが、たろうがねばねばピストルを使って動けなくして、事無きを得るのであった。
突然の最終回。特に予告はないので、執筆段階では最終回のつもりでは無かったかもしれない。
本作は12月号の定番、クリスマスものだが、本作は一味違う展開で、僕はかなり大好きな一作である。
クリスマスイブの夜。電気機関車が欲しいたろうくん。サンタクロースはうちへきてくれるかしらと心配そう。そこで気になるたろうは、こちらか会いに行ってみようということで、装備一式着用して、サンタクロースのいる北の国を目指す。
するとそれっぽい氷の城が見えてきて、中に入るとサンタクロースがいる。たろうの名前を呼んでくるので驚くと、子供はみんな知っているのだと言う。
蒸気機関車を受け取り、巨大なおもちゃ工場を見学した後、サンタ型のロケットで送ってもらうことに。あっと言う間に町へと戻ってくるが、上空でロケットから滑り落ちてしまう。
落下するたろう。・・・すると布団の中で目を覚ます。どうやらユメを見ていたようである。
が、布団の横には電気機関車が置いてある。・・・そう、夢だけど夢じゃないのであった。
まるで「となりのトトロ」がパクったかのような、ファンタジックな終わり方。幸せ気分に包まれながら、たろうくんの物語はこれにて終結となる。
ドラえもん型からパーマン型にストーリーが変化するというユニークさがあるが、その分作品全体としての個性に乏しかった印象をうける「ろぼっとたろう」&「すぴーどたろう」。
けれど季節ごとに描かれるエピソードは、いかにも藤子Fワールド全開といったネタばかり。特に、「案外そうかも知れないよ」というトトロのラスト的なエンディングが非常に好きだし、世の中に広めたい魅力を持っていると思う。
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