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「海の王子系」科学冒険マンガたち/講談社から小学館に移行するF

1950年代から60年代にかけて藤子F先生の作品系譜を眺めた時に、主戦場となる出版社が講談社から小学館へと少しずつ移行していく様が見て取れる。

藤子先生と講談社との歴史は深く、1955年頃から「ぼくら」「なかよし」「少女クラブ」「幼年クラブ」「漫画絵本」などで多数の読切・連載作品を掲載していた。

1956年9月より「たのしい一年生」が創刊され、すぐさま11月号に『ぽちのおつかい』が掲載され、以降講談社の学年別雑誌で多くの作品が連載された。絵物語や『名犬ラッシー』などの意欲的な作品も多かった。

やがて「たのしい一年生」1960年4月号より、ドラえもんの前身とされる「てぶくろてっちゃん」が始まり、人気も上々で「たのしい二年生」→「たのしい三年生」と学年が繰り上がって連載された。

しかし講談社の「たのしい~」シリーズは1963年3月でほぼ全て休刊してしまい、藤子先生の作品の掲載も当然終わってしまう。10年近い講談社との蜜月は終了となったが、「たのしい幼稚園」で「モジャ公」が連載されるなど関係が完全に途切れたわけではない。


藤子先生と小学館の出会いは、講談社からだいぶ遅れた1959年。鳴り物入りで創刊された「週刊少年サンデー」で連載された「海の王子」である。このあたりの経緯については、下の記事を参照してもらいたい。

「海の王子」は長期連載となって、藤子先生の株は上がり、小学館の学年別学習誌に「海の王子」の幼年版の依頼が出される。それを受けて、1960年4月「小学一年生」にて「ロケットけんちゃん」の連載が始まるのである。

奇しくも1960年の4月は、小学館「小学一年生」で「ロケットけんちゃん」、講談社「たのしい一年生」で「てぶくろてっちゃん」が同時に連載が始まっている。前者が冒険科学SF、後者が日常SFで、藤子F先生の両面の真骨頂が描かれている。

1961年4月からも「小学二年生」で「ロケットけんちゃん」、「たのしい二年生」で「てぶくろてっちゃん」が繰り上がって連載が継続されるなど、両社の比重はバランスが取れていた。

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しかし先述したように講談社の「たのしい~」が休刊となって、以降は小学館の学習誌が活動の中心となる。「ロケットけんちゃん」に類似する作品も多数発表される。後ほど若干の整理をするが、タイトルと内容が一致しずらい作品群となっている。

そして1964年正月より「週刊少年サンデー」にて「オバケのQ太郎」が連載スタート。翌1965年1月号から学年誌でも一斉に連載が開始される。これにより冒険科学SFの作品群が終了し、日常SFの決定版である「オバQ」が大ヒット街道をまい進していくのである。


さて次に、小学館で多数連載された作品を掲載誌ごとに整理してみる。流れとしては、1960年度から各誌で様々な連載がスタートし、64年度の途中から始まった「オバケのQ太郎」があっという間に全誌を席巻してしまう。

「小学一年生」
1960年度(4~3月)「ロケットけんちゃん」
1961年度(4~5月)「ピロンちゃん」/(6~3月)「すすめピロン」
1962年度(4~3月)「すすめロボケット」
1963年度(4~3月)「とびだせミクロ」
1964年度(4~3月)「すすめロボケット」/(1~3月)「オバケのQ太郎」
→「パーマン」→「ウメ星デンカ」→「ドラえもん」
「小学二年生」
1961年度(4~3月)「ロケットけんちゃん」
1962年度(4~3月)「ロケットGメン」
1963年度(4~3月)「すすめロボケット」
1964年度(4~3月)「とびだせミクロ」/(1~3月)「オバケのQ太郎」
→「パーマン」→「ウメ星デンカ」→「ドラえもん」
「小学三年生」
1961年度(4~12月)「星の子ガン」(安孫子先生と共作)
1962年度(4~3月)「ロケットけんちゃん」
1964年度(4~5月)「すすめロボケット」/(8~3月)「海の王子」/(1~3月)「オバケのQ太郎」
→「パーマン」→「ウメ星デンカ」→「ドラえもん」
「幼稚園」
1960年度(9~3月)「ピロンちゃん」
1961年度(4~5月)「ピロンちゃん」/(6~12月)「チイちゃん」/(1~3月)「すすめロボケット」
1962年度(4~12月)「すすめロボケット」/(1~3月)「とびだせミクロ」
1963年度(4~12月)「スーパーじろう」/(1~3月)「すすめロボケット」
1964年度(4~12、2~3月)「すすめロボケット」/1~3月)「オバケのQ太郎」
→「パーマン」→「ウメ星デンカ」→「ドラえもん」
「よいこ」
1962年度(1~3月)「スーパーじろう」
1963年度(4~12月)「ろぼっとたろう→すぴーどたろう」
→「オバケのQ太郎」→「パーマン」→「ウメ星デンカ」→「ドラえもん」

上記の中では、まず「ロケットけんちゃん」が人気となり、全37回・29話が掲載された。

「すすめロボケット」は2期・4年・4誌(+α)に渡って連載され、本作と「てぶくろてっちゃん」の二作によって初めて「小学館漫画賞」を受賞する。全75話。

「とびだせミクロ」も「幼稚園」から「小学三年生」まで繰り上がっていった人気作だ。全31回・29話。

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先述したように科学冒険SFのジャンルに偏っているので、タイトルと中身が一致しずらい傾向にある。僕自身、何度となく読んでいるのだが、中身のテーマも被ってくるので、混乱してくること請け合い

よってこのFノートでは、「海の王子」の系譜に連なる小学館の科学冒険作品を「海の王子系」作品と称して、今後作品ごとに詳細の検討していくことにしたい。

言ってみれば、記事を書きながら学んで記憶を定着させようというわけである。「初期作品をぜーんぶ紹介」シリーズがもう一息ついたら、こちらもシリーズとしていく予定である。

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藤子作品の分類・考察やっています。


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