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「僕たちばかりに働かせて!」パーマンとロボットの大攻防/ロボットの反乱③

藤子不二雄(足塚不二雄)の単行本デビュー作『UTOPIA 最後の世界大戦』から始まって、藤子先生はライフワークのようにロボットが登場するお話を描き続けた。

その最高峰は「大長編ドラえもん」の「のび太と鉄人兵団」だとは思うが、キャリアを見渡した時に、まるでその最高峰に向かっていくように、あらゆる作品であらゆるタイプのロボットを描いているように見える。

そうしたロボット登場作品の中で、最も印象深いテーマとしては、「ロボットが人間の言うことを聞かなくなる」話だろう。何かのきっかけで感情を芽生えさせたロボットが、人間に対して反乱を起こすというパターンである。


そこで、「ロボットの反乱」と題して、人間と敵対するロボットたちの物語を一挙紹介していく。こうした作品のトーンとしては、シリアス路線かコメディ路線に分かれる。

前者の代表が『UTOPIA 最後の世界大戦』や「のび太と鉄人兵団」で、後者が今回記事にした「ドラえもん」『ロボッターの反乱』や「ロケットけんちゃん」『お手伝いロボットの反乱』となるだろう。

これまでの記事は以下。

コメディ・ライト路線では、ロボット対人間のSF的・哲学的要素を排した(隠した)作りとなっている。両作ともロボットは人間に反抗するが、その理由が『ロボッターの反乱』では物を大事に扱わない、『お手伝いロボットの反乱』ではロボットに頼って怠けてしまったから、という子供向けの教訓めいた理由付けにしている。


本稿では、「パーマン」に登場する「ロボットの反乱」エピソードをいくつか紹介していく。内容としては、明らかにコメディ路線である。

『インスタントロボット』
「小学一年生」1968年2月号/大全集6巻

まず見ていきたいのが、『インスタントロボット』というお話なのだが、読んでもらえばすぐわかるように、「ドラえもん」『ロボッターの反乱』の元ネタとなっている作品である。

「小学一年生」掲載作品ということで、明るく楽しく「ロボットの反乱」を描いている。


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町の発明家と思しき男性から、物に貼ると何でも「インスタントロボット」になるという小型の装置を譲り受ける。発明家の言うには、勝手に動き出して困るので、捨てようと思っていたという。「ドラえもん」における「ロボッター」とほぼ同じような装置と考えてよいだろう。

さっそく持ち帰って鉛筆に取りつけると、一人で勝手に宿題を書き始めてくれる。掃除機に付けて自動的に掃除させたり(まるでルンバ)、ガン子の人形やパパの座る座布団やお茶セットなどもロボット化させていく。

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みつ夫の家族たちは気味悪がって逃げ出してしまうのだが、みつ夫は「これからは何もしなくて済む」と喜んで、部屋で寝転がってしまう。

すると、みつ夫の独り言を聞いていたインスタントロボットたちが、「あんなこと言ってる」と腹を立てる。そして口々にみつ夫への不満を漏らす。

「けしからん」
「僕たちばかりに働かせて」
「自分は昼寝してるなんて」
「やっつけちゃえ」

ということで、ロボットたちがみつ夫に反旗を翻す。ヤカンに水を掛けられ、バットで殴られ、包丁なんかも追ってくる。そして机がみつ夫の頭に体当たりしてきて、気絶させられてしまう。

そしてロープがみつ夫を縛りあげて、

「人間なんて弱いものさ」

と、勝利宣伝するのであった。

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その後パーティーを始めたインスタントロボットたちの隙を見て、みつ夫はパーマンに変身して、物に付けていた小型装置を全て外してしまう。あっさりと反撃が決まったのであった。

なお、オチとしては、鉛筆だけ装置を付けたままにした結果、勝手に部屋中に落書きを書いてしまってママに叱られるというもの。

『ロボッターの反乱』とまるで同じ進行のお話なのだが、ロボットたちが反乱を起こすきっかけは、『お手伝いロボットの反乱』に近い。すなわち、みつ夫が怠けたため、ロボットのプライドを傷つけたのである。



続けて「パーマン」におけるロボットものを紹介していく。

『ロボット・ゴリアテ』
「小学二年生」1967年5月号/大全集3巻

ギャング・猛獣・引ったくり犯と、あらゆる敵を圧倒するパーマンだが、ガン子が言うにはパーマンでも敵わないものがあるという。それが、ロボットのゴリアテである。

ゴリアテは呂保戸(ろぼと)博士が作った工事用の巨大ロボットで、どんなに固い岩山でも崩してしまう怪力を持つという。


TV番組でゴリアテのデモストレーションが行わるが、大暴れしすぎて呂保戸博士が巻き込まれ、気絶してしまう。そしてゴリアテはそのままセットを壊して、町へと飛び出していく・・。

ゴリアテを止めようとパーマンが立ち向かうが、怪力と頑強さで手が出ないまま、踏みつぶされてしまう。ゴリアテを止める術を唯一知る博士は、気絶したまま目を覚まさない。

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そこでパーマンは、眠る博士の手を借りてコピーロボットの鼻を押させると、目覚めた博士がコピーされる。そしてコピーの博士にゴリアテの弱点であるボタンを押させて、動きを止めることに成功する。

本作は、意志を持った「ロボットの反乱」というよりは、人為的なミスの結果、ロボットが大暴れするという話となるので、少しテーマから外れているかもしれない。

なお、ロボットの名前である「ゴリアテ」は、旧約聖書に登場するペリシテ人の巨人兵士から取られたものと考えられる。ちなみに「天空の城ラピュタ」に登場する「ゴリアテ」も、同根のネーミングだが、こちらはナチス政権下で作られた自走式の自爆型の爆薬運搬車両「ゴリアテ」なども参考にしている可能性がある。


『ロボット・ショー』
「小学一年生」1968年3月号/大全集6巻

この作品では「ヘラクレス」という名の巨大で頑強なロボットが、悪人の手に渡り、パーマンたちが対決するお話。

「ヘラクレス」はマイクを使って命じるとその通りに動いてくれる仕掛け。パーマンたちはマイクを悪人から奪い返せば勝てると考えるが、ブービーがマイクと間違えてしゃもじを取ってきてしまい、結局まともに戦う羽目に陥る・・。

この作品も、「ロボットの反乱」とは言い難いお話なので、参考程度に聞き流しておいて欲しい。

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『コピーロボットの反乱』
「週刊少年サンデー」1967年24号/大全集1巻

さて、「パーマン」におけるロボットと言えば、「コピーロボット」だろう。性格や記憶なども受け継ぐことができる優れものではあるが、感情もコピーされる人間的な側面も持っており、作中、かなりの頻度でみつ夫の言うことを聞かなくなる

本作では表立ってみつ夫にコピーロボットが反乱する。感情があるのに人間の身代わり道具として使われるロボットの、やるせない気持ちに同情を寄せてしまう一本となっている。

コピーロボットについては、過去にバッチリ考察記事を作っているので、こちらをご参照下さい。


さて、『インスタント・ロボット』を中心に、パーマンにおける「ロボットの反乱」作品を複数見てきた。「パーマン」ではコピーロボットという、非常に特徴的なロボットが登場することから、広義のロボットマンガだと考えて良いだろう。

コピーロボットは感情を持つ人造人間である。藤子先生としては、このキャラクターから派生する、「ロボットとは何か」というドラマ性を気に入っていたように思う。

その証拠に、コピーロボットが主人公となるお話が7~8本ほど存在し、しっかりとロボット側に感情移入させる作りとなっているのだ。


まだまだロボットの反乱は続きます。

また、他のパーマン考察などもどうぞよろしく。


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