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「ゆるいつながり」で街のヒトが動く。100人カイギを回すしくみ。

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「地元でなにか始めてみたい」。
そんなとき、キーとなるのは仲間集め。ただ、意外と身の回りに住んでいる人を知らなかったり。特に都心部においては、その流れは顕著です。

関東圏で一人暮らしをする20~30代の男女を対象にしたアンケートによると、全体の6割以上が「近所付き合いはない」と回答。その一方で、「近所付き合いは必要だと思う」も全体の半数以上が回答。

近くに住む人との交流を望んでいるのに、なぜできないのか? 近所付き合いが行われない理由の第一位は「普段顔を合わせないから」、続けて「話すきっかけがないから」といいます。

家族や親友ほど親密ではないけど、知り合いという「弱いつながり」*1の抱く影響力は無視できません。これまで全国61地域で開催されてきた100人カイギ。創立者の高嶋 大介さんから、「街のヒトが動く」しくみを伺っていきます。

*1 ... 米スタンフォード大学のマーク・グラノヴェターが1973年に発表した論文における理論。労働者に「現在の職を得た経緯」を聞いて、身近な家族や親友よりも、軽い知り合いのほうが新情報をもたらし、より影響力を誇ったという結果から導かれた(= Strength of Weak Tiesの頭をとって、SWT理論とも)。

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高嶋 大介 (たかしま だいすけ) さん
自律的に働く人が増える社会をつくりたいと考え、一般社団法人INTO THE FABRICを創立する。「けもの道をつくりながら企業の可能性を探す」ことを得意とし、組織/戦略デザイン、コミュニティデザイン、イベント/マーケティングを行う。ゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ「100人カイギ」をはじめ、広義な人をつなぐ場をつくる活動を行う。サウナと散歩好き。

■100人カイギとは

social-media-3846597_1280のコピー

100人カイギとは、何でしょうか。

街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、 都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティです。ルールは簡単。
・毎回、身近で面白い活動をしている5名のゲストの話を聞く
・ゲストが100名に達したら解散する
(下記公式HPより直接引用)

2016年1月に東京都・港区で実験的に始まってから、6年間。これまで全国61地域・500回以上開催され、総参加者は20,000人を超えました(2021年4月末時点)。そのしくみは以前にもまとめており、ご参照ください。

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どんな経緯で始まり、広がったのでしょうか。

当初、「全国で広げよう」とはまったく思っていませんでした。いろんな人を紹介したい、という単純なスタートでして。参加される方も、地域で働いているけど知り合いがいないとか、住んでるところでもっとつながりがほしい、ということが多いですね。

最初の頃は、僕ともう一人でやっていました。けれど、その一人が仕事で忙しくなり。手間をかけずにどうやってイベントを回せるかと。一年半続ける中、ゲストさえ5人集って話ができれば満足度が高いことに気づき。ファシリテーターや場の回しなど、自分がいなくても(やることは司会くらい)盛り上がるため、より効率化させていこうと。運営をシンプルにしたことで、異なる地域でも運営できるようになっていきました。

他の地域へ広げる際に、何か工夫をされましたか。

新しい開催地域は2つまで、というルールにしました。運営のリソースの問題で、5地域とかだとサポートしきれないなと。毎月ちょっとずつ始まって、ちょっとずつ終わるのがいいんじゃないかと考えていました。

■コミュニティが「終わる」というルール

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「ちょっとずつ終わる」ということで。100人カイギの大きな特徴のひとつで、ゲストが100人集まったら会を解散します。港区100人カイギが終わり、新たに渋谷区100人カイギが始まる、というように。

目的は、新陳代謝です。
ずっと固定的だと、古くからいる人だけで固まり排他的になり、新しく入る方の居心地が悪くなってしまう。また、何度も同じ繰り返しの中でマンネリ化してしまうことを防ぐためにも、あえて終わりを設定することにしました。ずっと固定的だと、古くからいる人だけで偉くなってしまい、新しく入る方の居心地が悪くなってしまう。また、何度も同じ繰り返しの中でマンネリ化してしまうことを防ぐためにも、あえて終わりを設定することにしました。

■話す時間は10分。物足りないくらいのちょうど良さ

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キリのいい終わり」でいえば、ひとりのゲストさんが話す時間も10分に設定しています。合計5人なので、ちょうどいいくらいですね。長くなると、プレゼン慣れしていない方は喋れなくなってしまったり。また、相性が合う方も5人中5人いるとは限らないし、話がつまらなくなっても10分なら我慢できるだろうと...笑

あまり長くない時間の中でどんどん話してもらい。ゲストさんがどんな人か、興味をもってもらえることがまず一番で。物足りないくらいのちょうど良さがあれば、興味を抱いた参加者の方が、自主的に休憩時間で聞きにいくという行動変容も促せるだろうと見込んでいます。

■自分のことを語るのは、7割。

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10分間の設定に加えて。ゲストさんの話も、自分のこと(自己紹介)を語るのは7割、これまでやってきたこと(キャリアやプロジェクト)を3割程度で話をしてもらうようにしています。この比率を気にしないと、名前と自己紹介を1分くらいで終わらせて、残りは自身のキャリアややってきたプロジェクトをたくさん話しがちになってしまうことがあり。勉強会とか目的があればいいのですが、プロジェクトを10個くらい紹介してしまったり。100人会議の目的は事例ではなく、人を知る場。だからこそ、あなたは何をしているんですか、を話してもらえる場のほうがいいかなと。7割までという目安を作っておくことで、話す人に意識してもらえるようにしています。

■「良い自己紹介」と「悪い自己紹介」

多くの第三者同士が知り合う、そんな100人カイギの場で。数々の自己紹介を見てきたことから、そのメソッドを著書にしました。

100人カイギでの良い例としては、「共感」を引き起こせたか。その人の思いを知ることで、魅力につながるようなストーリー。共感する人が生まれることで、「こんなことをしているんだけど手伝いましょうか」「知り合いを紹介しましょうか」といった、次の機会を得ていくことにもつながっていきます。

逆に悪い例としては、肩書とか時系列だけを並べることですね。「私年間1,000本ワークショップしてますよ」とか。コミュ障としてはしんどくて、無理だと感じてしまいますね...笑

■登壇者が5人の利点

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自己紹介をし合う場を見ていると、登壇者が複数いることが良い具合に働いているなと感じます。ひとりだと行列ができてしまいますが、5人いるといい感じの人数に参加者も分散されて。場が暖まりやすくなったり、交流時間の制限もあまり困らないですね。登壇者の方にも、名刺交換は一対一ではなく、一対Nで行ってもらうようにお願いしています。なるべく皆で話す仕組みにして、場の雰囲気を作り上げています。

■Q&Aも、いらない。

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ゲストさんと参加者の方との交流でいうと。Q&Aコーナーもいらなくなってきました。意外と運営側が回すのが難しく。自由に誰かが手を挙げて話してくれてるけど、聞いている他の人にとっては無駄だったりすることも。正直、上がった質問がどうでもいいとか...笑 「本当にこの人と話したい」と強く興味を抱いた人だけが、ゲストさんとしっかり話せる仕組みにしようと。台本がなくても盛り上がるフォーマットにしたいと思い、難しくなる点は極力外していこうと実践しています。

■アイスブレイクの目的は、周りに知り合いをつくること。

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次に、参加者さん同士において。アイスブレイクを行うことで、最初の段階で強制的に知り合いを作っておくようにしています。「名前」と「期待していること」を交換し合ってください、というシンプルなものですが。最初にそれがないと、休憩時間にお互い話しかけるきっかけが掴みづらかったりして。スマホをいじって、話しかけるなオーラを発してきたりとか笑 会話ができそうな小さなグループを作っておく。「今から20分間休憩します」と投げかけた時、事前に場を暖めていることで、自然と話が生まれるようにしています。

■主催にあたって① / 運営者は、こちらから選ばない。

そんな「しくみ」で作られている100人カイギ。
次は、主催側のノウハウについてお伺いしていきます。

100人カイギを運営する人は、どう選ばれているのでしょうか。

まったく選んでいません! 基本、やりたい方がいたらやってもらう形です。100人を達成するためには、5人×20回を繰り返す必要があります。それを続けられる人たちでないと、途中で終わってしまう。こちらから「やってほしい」だと、高嶋さんから言われたから、となってしまいますからね。「主体性がある方たち」が大事にしているポイントです。初めから「20回」と伝えているので、やる側も覚悟していて。けっこうな長さだと感じられますが、逆に半分もすぎると「あと10回しかない」となり。そこまでいくと、「どういう終わり方にしましょう」と意識が突然変わってきますね。

20回の開催ともなると、途中で息切れする運営チームが出てこないでしょうか。何かしらの対策などは?

運営が機能しなくなったりもありますね。全部が全部うまくいくわけでもないため。ですが、基本的に運営は手を出さないようにしています。本当に困っていそうな雰囲気があれば、こちらから声をかけることもあったり、相談に来れば「こうすればいいのでは」とアドバイスをしたりもしますが。

開催も理想としては毎月ですが、隔月必ずやってほしいとは言わず。一ヶ月間空きますよ、というのも全然OKにはしています。

■主催にあたって② / コミュニティをはじめるには、3人必要。

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運営に必要な最小限の人数は、どのくらいでしょうか。

3人集めています。最小限の運営構成としては、その人数ですね。

最初から10人以上集めたケースもありますが、これはうまくいかず。「興味ありそうな人をとりあえず集めよう」がだめでした。場に人が多いと、うまくいかないケースが多いですね。

ひとりも大変ですね。負荷が大きくなり、集中してしまう。
二人はありと言えばありなのですが。過去の経験からいくと、うまくいかなかったこともあり。三人は、ちょうどよくうまくいく人数だなと見ています。

■主催にあたって③ / 登壇者は、自薦で選ばない。

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登壇者は、どうやって選んで探してるのでしょうか。

3人の運営の中には、地域のバックグラウンドがある人もいるので、そのツテを辿ったりしています。ただ、1回目とかはいいですが。毎回同じところから選ぶのはおもしろくないので、過去の登壇者に紹介してもらったり、別のコミュニティにリーチして呼ぶこともあります。「台東区100人カイギ」というタイトルの会議を見せて、まず見に来てもらうことを入り口にしています。

自薦で話したい人はゲストにしないようにしています。ダメとは言わないですが、あまりおすすめしていません。自分を売り込みたいあまり、宣伝ぽくなる可能性があり。例えば港区だと、激しい宣伝合戦になりそうですからね...笑

■主催にあたって④ / 「会える距離」を大事に。

主催する地域は、どのような区分で決めているのでしょうか。

「細分化ルール」を心がけています。都道府県くらいの大きさとまでなると、どこか微妙で。より小さく分けて「区」レベルを意識したり。というのは「会える距離」の範囲内であることで、ゲストさん・参加者さんの次のアクションが生まれやすくなるためですね。小さくすれば駅前とかもありで...笑 いくらでも作れてしまいますね。

■主催にあたって⑤ / 100人カイギに、目的は見えていなくていい。

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「次のアクション」ということで。100人カイギを行うことで、どのような結果(期待)を実現させていきたいと思っていますか。

例えばコラボの例でいうと、八百屋と飲食店が一緒に新商品を作ったりなど、参加者・登壇者にかかわらず繋がった方同士で、結構な頻度で起こっています。ただ、最初から100人カイギをやってどうなりたいか、は見えていなくていいと思っています。「人を知ること」「5人の方を紹介する場をつくること」ことが一番の目的であって、次に何が生まれていくかは、やっていくうちに見えていくことだと考えています。

私が今、100人カイギを行っているモチベーションとして。今は人のつながりをつくりたいけど、どうしていいかわからない人が多いと感じており。そういう人を応援するプラットフォームとしてできたらいいかな、と考えています。自分たちで回したいという人たちを応援することで、地域に影響をもたらせるのではないか、と思っています。

【コミュニティラボとは】

リアルとオンラインの仮想のまち「シェア街」における、コミュニティ研究の会。
Zoom上で毎週月曜日の21時-22時に開催中。コミュニティの主催者・マネージャーを招いて、実践で得たノウハウを学んでいます。参加者はQ&Aで自由に質問したり、自身の抱えるコミュニティづくりの悩みをぶつけてみることも。

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(上記写真は今回のイベントページです)

シェア街の住民さんは現在募集中なため、ご興味のある方はお待ちしています!
(そもそもシェア街とは何か?は以下のリンクからどうぞ!)





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